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主張 マイナンバーでのオンライン資格確認 疑わしい利便性立ち止まって考えよう

2021.02.25

 マイナンバーカードによるオンライン資格確認が3月より開始される。
 マイナンバー制度は民主党政権時に提案されたもので、発端は「給付付き税額控除制度」に関連したものであった。当初の案では、さまざまな条件で税金を控除する場合、国民の資産状況を把握し、住民税を免除されているような低所得者には、「給付」しようとするものであった。
 しかし最近の社会保障制度では、介護施設入所者への補足給付など、「資産」が負担の要件になってきているものがある。これによりマイナンバー制度の趣旨も変節し、個人資産を紐づけ、社会保障給付の削減を目的とした使用がねらわれている。
 一方でマイナンバーカードの普及率は、交付開始後5年が経過したが、いまだに24.6%にとどまっている。そのため、政府はあらゆる利便性を強調して、なりふり構わずその普及に躍起になっている。新型コロナワクチン接種時の活用もその一例である。
 そんな中、昨年6月、厚生労働省は全国の医療機関に「オンライン資格確認導入に向けたご案内」を送付した。広報ではマイナンバーカードを保険証として利用することで、(1)オンライン資格確認、(2)過去のデータに基づく診療・薬の処方、(3)特定健診や薬剤情報の一括管理、が可能になると利便性を強調している。これによって、今年3月より制度を使用せねばならないかのような雰囲気が醸成されているが、これはあくまで〝任意〟であることに注意が必要である。
 そもそもオンライン資格確認は、本当に便利だと言えるものだろうか? これまで保険証を見せるだけで済んだ資格確認は、(1)機械にカードを置く、(2)パネルで本人確認を選択、(3)顔の撮影または暗証番号を打ち込む、(4)特定健診・薬剤情報の閲覧の同意の可否を選択と、これだけの手続きが必要となる。若い人はともかく高齢者にとっては大変で、受付の混乱は必至であろう。個人情報の問題でも、医療人の守秘義務をどのように担保するかが大きな問題となる。
 しかもオンライン資格確認は、診療報酬のオンライン請求を行っていることが前提となる。もしそれを行っていない場合、回線の新規契約が必要となる。新規契約は国が補助するが、ランニングコストは医療機関の負担となる。顔認証付カードリーダーは〝無償〟とされているが、取得しても使用せずに返納する場合、導入にかかった費用は負担しなければならない。
 このように利便性に乏しいうえに、現場の混乱と個人情報の取り扱い問題等々、診療現場にとっては厄介者になりかねないこのシステム。もう少しじっくり様子を見た方が良いと考える。