兵庫県保険医協会

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福島第一原子力発電所事故による放射線被害に対し、理事会声明を発表

2011.06.25

兵庫県保険医協会理事会は、6月25日下記声明を採択し、関係機関へ送付した。

2011年6月25日


福島第一原子力発電所事故による
放射線被害に対する声明
―被ばくによる健康被害を憂慮する―


兵庫県保険医協会理事会


 3月11日の東日本大震災から3カ月が過ぎたが、原子炉が制御不能となった福島第一原子力発電所は、冷却機能の回復に至らず、事故収束の見通しは立っていない。震災早期からメルトダウンの状況にあり、多くの放射性物質が大気や海洋に排出されたことが明らかになり、避難地域とされている30キロ圏内だけでなく、圏外にある飯舘村でも、政府の避難基準値である年間積算放射線量20ミリシーベルトを上回る汚染が確認された。福島から遠く離れた静岡県の本山茶から、6月9日には基準値を超える放射性物質が検出されるなど、汚染は広範囲に拡大しつつある。
正確な状況把握のため、どのような放射性物質がどこにどれだけ拡散しているかを調査し、公開することが求められるが、政府が設置した放射線測定のための固定放射線モニタリングポストは、福島県内に2カ所しかなく、測定されているのはγ線だけであり、内部被ばくで大きな影響を与えるα線・β線は測定されていない。また、事故直後、緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム(SPEEDI)による試算図の公開が制限されたように、政府の情報公開姿勢に疑念を持たざるを得ない。
このような中、政府は健康被害について、「直ちに影響はない」など、巧みな言葉遣いで自身の保身を図りながら問題がないとの見解を繰り返しているが、とめどなく発生する事故現場からの放射能漏れ、汚染冷却水、汚染された瓦礫。放射能漏れに歯止めはかかっておらず、放射線障害は被ばくから何十年も後に現れ、少量の被ばくでも、がんなどの発生率を高めるため、今後甚大な被害が予想される。
特に、成長期の子どもは、放射線の影響を受けやすいため、わずかでも被ばくを避けるべきである。それにも関わらず、文部科学省は、許容被ばく線量を何ら根拠を示さないまま、国際放射線防護委員会(ICRP)の最低基準であるこれまでの年間1ミリシーベルトから一気に最高基準である20ミリシーベルトへ引き上げ、子どもについてもこの基準を適用するとした。この基準は安全とは到底いいがたく、見直しが求められる。また、事故対応にあたっている労働者の被ばく線量限度も100ミリシーベルトから250ミリシーベルトへと大幅に引き上げられたが、これすら超えた労働者がすでに出ている深刻な状況がある。
われわれは、いのちと健康をまもる医療者として、放射線による長期的かつ広範囲な健康被害を憂慮し、政府に対し、下記事項を要望する。

一.福島第一原発事故の収束へ全力を傾注すること。
一.放射性物質の拡散について、綿密で継続的な調査を行い、その結果を公表すること。
一.被ばく線量の厳密な測定、管理・検診などを原発労働者、被災地域住民らに実施し、長期的・継続的な健康管理に責任を持ち、必要な対策を迅速に講じること。適切な補償・賠償を行うこと。
一、30Kmの避難区域外であっても放射能汚染が放射線管理区域に相当する放射能汚染地域の住民等については、疎開、医療の補償などを30Km圏内と同等に行うこと。
一.特に放射線感受性の高い子どもの被ばくを防止するため、被曝基準値や避難地域の見直し、運動場、公園などの子供の屋外生活域の汚染土壌の早期入れ替え、環境基準値の設定など必要な措置を早急に講じること。
一、農作物、魚介類など放射能汚染が懸念される食材について、充分な調査と情報公開を行うこと。
一.原発以外のエネルギーを拡充し、原発に頼らないエネルギー政策に転換すること。

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