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安定型産業廃棄物処分場建設による環境汚染を懸念する

2012.04.25

姫路市 松浦 伸郎

 郵便受けのチラシをいつものように取って家に入り見て驚きました。自分の家のすぐそばに産廃施設ができると書いてあるのです。寝耳に水とはまさにこのことで、信じられず近所の方に聞きましたが、誰もご存じありませんでした。
 すでに地権者や地元の自治会長は産廃施設の建設に同意しているという噂が流れ、このような話が飛び交うことは施設建設が事実の可能性が高いと感じ、情報を集めました。
 姫路市夢前町前之庄字庄司谷・谷山・荒神山に、安定型産業廃棄物最終処分場の建設計画が進められています。埋立容積は約500万立方㍍、開発面積は約2万1千㌶と国内では最大級規模の最終処分場です。
 これだけ大規模な産廃処分場設置計画にもかかわらず、近隣、下流域に住む住民には全くこの計画が知らされていません。業者による住民説明会は限られた地域のみでしか行われておらず、その地域の方ですら多くが計画を知りません。計画を知った方からは、不安の声が上がっています。
 安定型処分場とは、廃プラスチック等5品目を化学変化が起こらない物質として、素埋めするものです。処分場で有害物質が発生した場合、その流出を防ぐことができません。したがって、流域の水や米作、野菜作りの安全性は10年後20年後には保障できないものになるでしょう。
 埋め立ては5品目に限るといっても、5品目以外の物質を完全に分別することは困難です。5品目以外に有害物質が混入し、雨水などに溶け出して地下水を汚染するかもしれません。
 1999年には、福岡県筑紫野市の安定型処分場で、安定5品目から発生するはずのない硫化水素による中毒が原因と疑われる作業員3人の死亡事故が起こっています。
 加えて、安定的とされる5品目自体が安定しているのかという問題もあります。プラスチック類やゴムくず、金属くずなどは酸性雨などにさらされることにより化学的変化を起こして有害物質を溶出させます。その他の化学変化も多種多様なことが予想され、未知の化学物質による複合汚染の問題など、今後の多大な影響を否定できません。
 日本弁護士連合会も、2007年に「このまま安定型処分場を放置するならば、不作為責任が生じかねない状況であり、もはや法令によって処分場の規制を行う権限を有する国が安定型処分場という類型をこのまま認めることは許されない状況に至っている」と、安定型産廃処分場が新規に許可されないよう求める意見書を提出しています。
 このような産廃処分場建設は、現在の美しい夢前町の土壌や地下水を汚染し、住民の健康に多大な悪影響を及ぼすのではないかと、私は強い懸念を持っています。今後、姫路市と業者へ、住民合意が得られるまで施設設置を許可しないことや日弁連の意見書の尊重などをお願いしていきたいと考えており、ぜひ協会にもお力添えをお願い申し上げます。


 この投稿に関して、夢前町では、産廃処分場建設に反対する人々が「夢前町の自然を愛する会」を結成し、反対運動を行っています。詳しくは下記ホームページへ。

夢前町の自然を愛する会 http://www.yumesizenai.com/

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