兵庫県保険医協会

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環境・公害対策部だより

美浜原発3号機の再稼働許さない「パブリックコメントの提出を」

2016.08.26

環境・公害対策部長 森岡 芳雄
反核平和部長    近重 民雄

 原子力規制委員会は、8月3日には運転開始から40年となる関西電力美浜原子力発電所3号機の安全対策について、新規制基準を満たしているとする「審査書案」をまとめました。9月2日までの意見募集をへて、再稼働が狙われています。
 どんなに低い確率でも事故を起こすと取り返しのつかない被害を及ぼし、使用済み核燃料などの処分方法も決まらない原発は稼働すべきではありません。
 協会は、いのちと健康を守る医師の団体として、美浜原発の安全性に懸念を示すパブリックコメント(下)を提出しました。
 協会会員の先生方のご意見をぜひパブリックコメントの形で投稿していただいて反映していただければと願っております。よろしくお願い申し上げます。
 提出先は、住所・氏名・連絡先を明記の上、FAX03―5114―2179 原子力規制庁安全規制管理官(PWR担当)宛てまで。原子力規制委員会のホームページ(http://www.nsr.go.jp)からも提出できます。9月2日まで。

「関西電力株式会社美浜発電所3号炉の発電用原子炉設置変更許可申請書に関する審査書案に対する科学的・技術的意見の募集について」への提出文

団体名 兵庫県保険医協会            

意見提出者 環境・公害対策部長 森岡 芳雄

     反核平和部長     近重 民雄

 われわれは、いのちと健康を守る医師の団体として、下記の点から、本審査書で認められた関西電力株式会社美浜発電所3号炉の安全性に対し、科学的・技術的に懸念があり、再稼働に反対する。

1.そもそも原発稼働により産出される放射性廃棄物の処理方法が確立していない。

2.原発内に保存される使用済み核燃料の保管状態は福島第一原発事故以来、非常に危険性の高いものであることが判明している。今回、使用済み核燃料プールを耐震性の観点からフリースタンディングラック構造に改良するとしているが、使用済み核燃料がほぼ無防備でプールに浸かって

いるだけの構造については何ら対策がなされていない。

3.福島第一原発事故の事故原因は未だ究明されておらず、原発を再稼働させるのはそもそも危険である。

4.本審査の基準となる新規制基準そのものが、欧州加圧水型原子炉の安全設備と比較して、(1)安全上重要な系統設備の多重性として、独立した4系統が求められているのに対して2系統しかない、(2)原子炉圧力容器外に流出した溶融炉心を格納容器内に貯留するコアキャッチャーの設置が求められていない、(3)大型商用航空機の衝突に耐え、設計圧力を高めた二重構造の格納容器の設置が必要とされていない、(4)サイバーテロへの防御の検討が不十分である、(5)1基あたり数百キロメートル使用されているとする可燃ケーブルへの対策は難燃ケーブルへの交換ではなく可燃ケーブルに防火シートを巻くことで対応しており、対応が不十分である。また、原子力規制委員会による審査そのものが提出書類を中心とした審査であり、現物確認を行っておらず、他の原発では実際に不正が発覚しており、審査そのものが不十分であることを証明している。今回の審査においてもすべての審査において現認がおこなわれたかどうか、不鮮明であり、審査の妥当性が疑わしい。審査に合格したからといって安全性が保障されたとはとうてい言いがたい。

5.運転期間が40年を超えているが、運転期間延長の科学的根拠となるべき、鋼鉄の経年的な中性子照射による脆化に対する確たる知見は未だ存在していない。海外の複数の原発で30年超で応力腐食割れによる原子炉格納容器のひび割れが実際に見つかっている。原子炉等規制法の「原子力発電所は運転開始から原則40年で廃炉に」というルールは、そもそも福島第一原発事故を受け、民主・自民・公明の3党合意に基づいて、放射線により原子炉圧力容器が劣化し、危険だとの理由で定められたものだ。「1回だけ、最長20年」という運転延長規定は、電力不足などに備えるために設けられたもので、規制委員会も「極めて例外的」「(認可は)相当困難」と説明していた。原発事故回避、原発依存度低減という国民への約束をなかったことにすることは許されない。

美浜原発3号機は2004年8月、通常運転中に2次冷却系の復水系配管が突然破断、高温高圧の2次冷却水が大量に漏れ出し、付近にいた作業員のうち5人が死亡し、6人が重軽傷を負うという事故を起こしている。事故は配管の内面が腐食などによって減肉し、圧力に耐え切れず破断したことが原因とされ、また、定期点検、部品交換を行われていなかったことも判明している。老朽原発では至る所で同様の事故が起こりうることは明らかであり、定期点検を行っても細部まで老朽化の実態を把握することは困難である。美浜原発3号機の再稼働を断念し、今すぐ廃炉にするよう強く求める。

6.美浜原発は、1号機から3号機まで三菱グループが設計、施工を行っている。1号機では1973年3月に原因不明の核燃料棒の折損事故を起こしており、2号機では1991年2月9日に設計とは異なる施工が行われたことによる蒸気発生器の伝熱管の破断事故を起こしている。三菱グループが設計・施工に関与した原発では、想定される安全性は確保できていない可能性がある。

7.P12「Ⅲ―1 地震による損傷の防止」で、耐震設計の目安となる基準地震動を、最大700m/s2(700ガル)としたが、2007年の中越沖地震では1699ガル、今年4月熊本地震でも1580ガルを経験していることから、この基準地震動はかなり低いと考えられ、問題である。また熊本地震では震度7の揺れが2回も起こり、震度4以上の余震は100回を超えている。現在の審査は1回の強い揺れに耐えられればよいというもので、このような複数回の揺れに対する耐震安全性の評価はなされていない。また、地震の揺れの減衰定数を1%から3%へと引き上げているが、根拠がなく、美浜原発3号機での加振試験では充分な大振動データが得られておらず、美浜原発2号機を使った打撃試験は今回の審査以前には行われておらず、審査は1%で行うのが妥当である。配管等が劣化している老朽原発はより危険であり、動かすべきではない。

8.万が一美浜原発が重大事故を起こした場合には、周辺の高速増殖炉もんじゅ、敦賀原子力発電所等が高濃度の放射能で汚染され、立ち入りができなくなり、作業ができない恐れがある。その結果、周辺の原子力施設の運転・制御も困難となり、同時多発的に重大事故が発生し、連鎖する可能性もある。事故の影響が美浜原発内だけにとどまり、周辺には影響を及ぼさないという絶対的な保障はない。集中立地のリスクを検討すべきである。原子力規制委員会の田中俊一委員長はかつて記者会見で、広域的な影響の前に事故は収束でき、集中立地のリスクを検討する必要はないと述べたが、各原発で対応、事故収束できる科学的根拠はない。

9.万が一事故が起きたときのため、具体的な避難計画の策定が安全性の確保のためには必須である。チェルノブイリ事故後、IAEAが定めた規制対策には「過酷事故時発生対応」として周辺地域に対する緊急避難などの対策が加えられたが、日本ではこれを地元自治体の責任として、原子力規制委員会の審査の対象外としているが問題である。交通権学会の上岡直見会長は、30キロメートル圏内の全住民が避難する時間は自家用車が移動し大渋滞を引き起こすことが想定され、通常で10時間、土砂崩れなどで通行機能が10%低下すると、移動完了まで16時間40分もかかると試算している。放射性物質が拡散する中、住民が被爆せずに避難させる実効性のある安全な避難計画が立てられているとはとても言えない。

10.福井県知事は「地元同意は福井県と美浜町」と述べ、これに関西電力も同調しているが、美浜原発で事故が起こった場合、影響を受けるのは福井県だけではなく、京都府北部、関西一円にとどまらず岐阜県・愛知県など東海地方にも及ぶ。1400万人の水瓶である琵琶湖を汚染することから、滋賀県知事も再稼働を容認していない。生活や人格権を明らかに脅かすリスクが判明している以上、住民の健康と安全を第一に考えるのであれば30キロメートル以内の同意は必須であり、この地域内の同意なしの再稼働は認められない。

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