兵庫県保険医協会

会員ページ 文字サイズ

専門部だより

環境・公害対策部だより

大飯原発の再稼働に反対する パブリックコメントの提出にご協力を

2017.03.13

環境・公害対策部長 森岡 芳雄

 原子力規制委員会は2月22日、関西電力大飯原発3・4号機の安全対策について、新規制基準を満たしているとする「審査書案」をまとめました。3月24日(金)までの意見募集を経て、再稼働が狙われています。
 どんなに低い確率でも事故を起こすと取り返しのつかない被害を及ぼし、使用済み核燃料などの処分方法も決まらない原発は稼働すべきではありません。
 協会は、いのちと健康を守る医師の団体として、玄海原発の安全性に懸念を示すパブリックコメント(下)を提出する予定です。
 協会会員の先生方のご意見をぜひパブリックコメントの形で投稿していただいて反映していただければと願っております。よろしくお願い申し上げます。
 提出先は、住所・氏名・連絡先を明記の上、FAX03―5114―2179 原子力規制庁安全規制管理官(PWR担当)宛てまで。原子力規制委員会のホームページ(http://www.nsr.go.jp)からも提出できます。3月24日まで。

「関西電力株式会社大飯原子力発電所3号炉及び4号炉の発電用原子炉設置変更許可申請書に関する審査書案に対する科学的・技術的意見の募集について」への提出文

団体名 兵庫県保険医協会            

意見提出者 環境・公害対策部長 森岡 芳雄

 われわれは、いのちと健康を守る医師の団体として、下記の点から、本審査書で認められた関西電力株式会社大飯原子力発電所3号及び4号炉の安全性に対し、科学的・技術的に懸念があり、再稼働に反対する。

1.そもそも原発稼働により産出される放射性廃棄物の処理方法が確立していない。

2.原発内に保存される使用済み核燃料の保管状態は福島第一原発事故以来、非常に危険性の高いものであることが判明しているが、何ら対策がなされていない。

3.原子力発電所の再稼動のためには、1原子炉あたり100万年に1回以下の、安全目標審査で承認される必要がある。しかしながら、安全目標審査は今まで行われていないことから大飯原子力発電所は極めて危険であり、規制基準審査のやり直しが必要である。

4.福島第一原発事故の事故原因は未だ究明されておらず、原発を再稼働させるのはそもそも危険である。

5.現在の原子力規制委員会には、地質学の専門家は居ても、地震学の専門家は選出されておらず、原子力発電所再稼働における安全性を審査するに充分な能力が備わっているとは言ない状況にある。また、2014年9月まで原子力規制委員会の委員長代理を務めていた島崎邦彦・東京大学名誉教授(地震学)は、関西電力が大飯原発の基準地震動を計算するうえで用いている活断層評価のモデル式(入倉・三宅式)に、過小評価を生み出す欠陥があると指摘している。新規制基準の根幹をなす基準地震動にも地震学の専門家から疑義が出ている。原子力規制委員会は不完全で危険性の残る新規制基準をもとにした審査はやめるべきだ。

6.本審査の基準となる新規制基準そのものが、欧州加圧水型原子炉の安全設備と比較して、(1)安全上重要な系統設備の多重性として、欧州では独立した4系統が求められているのに対して2系統しかない、(2)原子炉圧力容器外に流出した溶融炉心を格納容器内に貯留するコアキャッチャーの設置が求められていない、(3)大型商用航空機の衝突に耐え、設計圧力を高めた二重構造の格納容器の設置が必要とされていない、(4)サイバーテロへの防御の検討が不十分である、(5)原子力規制委員会による審査そのものが提出書類を中心とした審査であり、現物確認を行っておらず、他の原発では実際に不正が発覚しているなど、不十分である。審査に合格したからといって安全性が保障されたとはとうてい言いがたい。

7.審査書案では、プルサーマル運転の危険性について十分考慮されていない。大飯原発はMOX燃料の使用が検討されているが、ウラン燃料と異なった危険性があるにもかかわらず、重大事故対策でMOX燃料を用いた場合の解析がない。

8.P.11「Ⅲ―1 基準地震動」で、耐震設計の目安となる基準地震動を、最大856m/s(856ガル)としたが、大飯原発の基準地震動は、北海道留萌支庁地震に準拠しており、この地震は逆断層である。正確な基準地震動を策定するためには、正断層若しくは、横ずれ断層の地震(兵庫県南部地震~阪神大地震のMw6.9、及び福岡県西方沖地震のMw6.6等)のシミュレーションに基づく策定が必要であり、規制基準審査のやり直しが必要である。基準地震動シミュレーション(クロスチェック)の資料が、公開されておらず、策定経緯の透明性に問題がある。2007年の中越沖地震では1699ガル、昨年4月の熊本地震でも1580ガルを経験していることから、大飯原発の現基準地震動はかなり低いと考えられ、問題である。また、熊本地震では震度7の揺れが2回も起こり、震度4以上の余震は100回を超えている。現在の審査は1回の強い揺れに耐えられればよいというもので、このような複数回の揺れに対する耐震安全性の評価はなされていない。新たな審査基準を策定した上で審査をやり直すべきである。そして、鳥取地震の例などから震源を特定せず策定する地震動は、震源断層を予め特定しにくい地震、及び地表の証拠からは活動の痕跡を認めにくい地震、地表地震断層が不明瞭な地震、等とほぼ同等であることが、発電用軽水型原子炉施設の地震・津波に関わる新安全設計基準に関する検討チームの会議上で明らかにされており、近代地震観測がなされた1890年代以降、こうしたM6.8以上の地震は20回あり、これらすべてを考慮に入れて審査されるべきであるが、わずか二つの地震しか反映されておらず、基準地震動が低く策定されている可能性があり、審査のやり直しが必要である。

9.「Ⅲ-4.2 外部事象に対する設計方針」で、大飯原発では、巨大・太陽フレアからの強力な電子等に対する防御対策が策定されていない。

10.万が一大飯原発が重大事故を起こした場合には、周辺の高速増殖炉もんじゅ、原子力発電所等が高濃度の放射能で汚染され、立ち入りができなくなり、作業ができない恐れがある。その結果、周辺の原子力施設の運転・制御も困難となり、同時多発的に重大事故が発生し、連鎖する可能性もあり、住民が逃げ場を失うことも考えられる。事故の影響が美浜原発内だけにとどまり、周辺には影響を及ぼさないという絶対的な保障はない。集中立地のリスクを検討すべきである。原子力規制委員会の田中俊一委員長はかつて記者会見で、広域的な影響の前に事故は収束でき、集中立地のリスクを検討する必要はないと述べたが、各原発で対応、事故収束できる科学的根拠はない。

11.万が一事故が起きたときのため、具体的な避難計画の策定が安全性の確保のためには必須である。チェルノブイリ事故後、IAEAが定めた規制対策には「過酷事故時発生対応」として周辺地域に対する緊急避難などの対策が加えられたが、日本ではこれを地元自治体の責任として、原子力規制委員会の審査の対象外としており、問題である。原子力規制委員会の設立主旨は、原発推進側の論理に影響されることなく、第一に国民の安全を確保することにある。そして、原子力災害対策指針では住民の視点に立った防災計画を策定することと定められ、原子力事業者を指導する立場とされている。加えて、地方自治体の長に勧告・報告を求めることができる立場でもある。その原子力規制委員会が避難計画について指針だけ定めれば良いというのはあまりに無責任である。米国では避難計画がきちんと機能するかどうかも稼働の条件となっている。世界最高水準を標榜するのであれば、適合性審査において避難計画を検証の対象とすべきである。

12.福井県知事は「地元同意は福井県と大飯町」と述べ、これに関西電力も同調しているが、大飯原発で事故が起こった場合、影響を受けるのは福井県だけではなく、関西一円、岐阜県・愛知県など東海地方にも及ぶ。1400万人の水瓶である琵琶湖を汚染することから、滋賀県知事も再稼働を容認していない。また、避難計画作成を義務付けられている30キロ圏内にある周辺自治体のうち、京都府綾部市・宮津市・京丹後市がこれまで反対を表明している。生活や人格権を明らかに脅かすリスクが判明している以上、住民の健康と安全を第一に考えるのであれば30キロメートル圏内の自治体の同意は必須であり、この地域内の同意なしの再稼働は認められない。

13.福井地裁は2014年5月21日に、大飯原発3・4号機の運転差し止めを命じる判決を下している。本判決は、福島第一原発事故の教訓をふまえ、大飯原発について「安全技術及び設備は、確たる根拠のない楽観的な見通しのもとに初めて成り立ちうる脆弱なもの」と指摘している。原子力規制委員会はこの判決をふまえ、不十分な規制基準を見直すべきである。

勤務医部会だより 共済部だより 税経部だより 歯科部会だより 政策宣伝広報委員会だより 環境公害対策部だより 国際部だより 薬科部だより 保険請求Q&A 審査対策部だより 文化部だより 女性医師・歯科医師の会 融資制度のご案内 医療活動部だより