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政策解説 みんなでストップ!患者負担増 (4)所得基準引き下げと資産の評価で負担増

2019.01.25

 政府が進める患者負担増計画の内容について、解説するシリーズ。第4回目は「高齢者の3割負担対象者の増加、資産の評価」について解説する。

所得基準の引き下げで3割負担の高齢者増やす

 現在、後期高齢者の窓口負担は原則1割、前期高齢者は原則2割だが、「現役並み所得」の世帯については3割負担となっている。この「現役並み所得」の基準を引き下げて3割の対象者を増やすこと、また、預貯金等の資産があれば窓口負担を増やすことが検討されている。
 「経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)2018」では、「年金受給者の就労が増加する中、医療・介護における『現役並み所得』の判断基準を現役との均衡の観点から見直しを検討する」と記述されている。
 また、「所得のみならず資産の保有状況を適切に評価しつつ、『能⼒』に応じた負担を求める」とされ、介護保険の補足給付ですでに導入されている預貯金等の資産を基準に自己負担を引き上げる仕組みをさらに広げ、高齢者医療でも導入しようとしている。具体的には、現役と比べて高齢者の貯蓄高が多いとして、「まずは…入院時生活療養費等の負担能力の判定に際しても、補足給付と同様の仕組みを適用すべき」と入院時の食費や生活費を自己負担させようとしている。

高齢者の「万一の備え」奪う負担増

 内閣府の調査によると、60歳を超えた高齢者が就業する理由は、「生活費を得るため」55・4%、「生活費の不足を補うため」32・6%(複数回答)である(内閣府「団塊の世代の意識に関する調査」、2012)。
 また、高齢者が貯蓄するのは、収入が減少する中の生活費や万一の備えのためである(内閣府「高齢者の経済・生活環境に関する調査」、2016)。
 国の貧困な社会保障制度のもとで、将来に不安を抱え、高齢でも就労し、働けなくなったときの蓄えを行っているというのが高齢者の現実であろう。そうした人たちに、就労による収入や蓄えを理由にさらに負担増を迫れば、将来の生活はさらに貧困となってしまう。
 加えて、高齢者になると医療の必要性が高くなり、通院や入院の回数も増え、負担割合が低くとも、窓口負担額は高くなる。このような高齢者の状況を無視して、「現役との均衡」を理由に、窓口負担を増やすことは許されない。

「高所得」高齢者 割合が減少

 財務省の資料では、「現役並み所得」の高所得者が減少していることが明らかになっている。
 財務省は、「現役並み所得者」の減少をもって、所得基準を引き下げ、3割負担の対象を増やす財務省の計画は高齢者の暮らしを無視したもので言語道断である。
 皆が安心して医療・介護が受けられるようにしてこそ、高齢者の老後の不安も解消され、消費も活性化し、日本経済の成長にもつながる。窓口負担増でなく、社会保障の充実こそが求められている。

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