兵庫県保険医協会

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環境・公害対策部だより

兵庫県学校施設におけるアスベストの実態についてのアンケート調査結果 学校のアスベスト調査・把握は不十分

2022.01.25

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結果報告会の模様がNHKで大きく報道された

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しんぶん赤旗(上)と神戸新聞(下)も紹介

 環境・公害対策部は、2020年10月から1年かけて、県内学校施設におけるアスベストの使用・対応状況を調査するために、県内の全教育委員会に対し、アンケートを実施。学校施設のアスベスト調査について、多くが調査時期や調査者が不明であったり、無資格者によるものであることが明らかになった。昨年12月2日には、マスコミに対しての結果報告会を開催し、NHKニュース「LiveLoveひょうご」や神戸新聞、しんぶん赤旗で報道された。

相次ぐ行政のずさんな対応
 アスベストは曝露から数十年を経て中皮腫や肺がんなどを引き起こす危険物質で、2006年に使用が全面禁止されている。しかし、耐火性や保温性に優れていることから、それまで多くの建物で使用され、除去されないまま残っていることが多い。
 この間、西宮市にある旧夙川短大の校舎解体におけるアスベスト飛散事件や神戸市の市営住宅でのアスベスト見落としのように、アスベストが残存する建物に対する行政のずさんな対応が相次いだ。環境・公害対策部は、アスベストが残存する建物の多い学校施設に対する行政の調査や管理の実態を把握することを目的に今回の調査を実施した。
吹付アスベスト調査者「無資格」5割
 アスベストは危険性が高い順にレベル1〜3に分類され、レベル1は吹付アスベスト、レベル2は保温材や耐火被覆材、断熱材、レベル3は石綿含有建材となっている。
 各施設におけるアスベスト調査の結果を聞いたところ、最も危険性が高いレベル1が存在すると回答したのは42施設、2.9%にとどまった(図1)。具体的な箇所としては、体育館関連施設、技術室や教室、廊下や階段の天井、機械室などと回答があった。
 一方で、レベル1「なし」とされている施設のアスベスト調査年を調べたところ、「2010年以前」が47.2%(629施設)、「不明」が29.1%(387施設)にのぼる(図2)。また、調査者についても「資格のない自治体職員や学校関係者」が47.2%(624施設)、不明が28.8%(381施設)(図3)、調査方法も「不明」が31.5%(416施設)を占めている(図4)。
 調査年も調査者もすべて把握していない教育委員会が存在するなど、教育委員会によりアスベストの管理や調査記録の保存に大きな差が見られた。また、記録があっても資格のない職員が目視や設計図書で確認するにとどまるケースも多く、教育委員会による調査の信頼性に疑問が残る結果となった。
 レベル2のアスベストは、14教育委員会、200施設において存在するとの回答だったが(図5)、全施設について「調査時期不明」で「なし」と回答している教育委員会がある一方で、専門家による調査を行い1施設あたり7〜8カ所「あり」と回答している教育委員会もあり、レベル2の建材の認識の程度に相違が認められた。実際は、回答数以上に存在している可能性が高いと考えられる。
住民や保護者への説明会「必ず開く」15%
 学校の改修や解体にあたって、事前に周辺住民や学校職員、保護者らに説明会を開いているか聞いた。
 44の教育委員会のうち、周辺住民に対しては「必ず開いている」が15.9%、「要望があれば開いている」が61.4%、「開いておらず今後も開くつもりはない」が18.2%、「その他・無回答」が4.5%となった。保護者・学校関係者に対しては「必ず開いている」が15.9%、「要望があれば開いている」が65.9%、「開いておらず今後も開くつもりはない」が11.4%、「その他・無回答」が6.8%となった。
 説明会を必ず開くと回答した教育委員会はごく一部にとどまっているが、リスクコミュニケーションの観点から説明会を開催し、情報の共有を図ることが重要である。
 学校施設がアスベスト曝露の原因箇所であることについて聞いたところ、「高い」と回答した教育委員会は9.1%、「低い」が29.5%、「わからない」は50.0%、「その他・無回答」が11.4%となった。
 独立行政法人環境再生保全機構の石綿健康被害救済制度によれば、2006年から18年までに中皮腫や肺ガンを発病した学校関係者は約300人で、そのうち教師が200人と、職業別では建設業、製造業に次いで多くなっている。
国の責任で専門家の再調査実施を
 本調査からは、教育委員会によって、学校施設におけるアスベストの実態把握の程度やリスク管理の認識に大きな差があること、アスベスト調査の信頼性に問題があることが明らかとなった。
 学校施設は、児童・生徒はもちろん、災害時には避難所にもなる重要な箇所である。環境・公害対策部は、(1)文科省が国費で専門家による正確なアスベスト調査を行うよう指示するとともに、アスベスト除去の工事期間や飛散防止策などの安全対策ガイドラインを示すこと、(2)教育委員会や自治体職員に向けアスベストの講習を行い、アスベスト使用箇所の安全管理や解体工事が安全に行える仕組みを構築すること、(3)総務省の「インフラ長寿命化計画」など、インフラの維持管理・更新等を推進する中長期計画において、アスベスト除去対策を盛り込むことを求めていく。
アンケートの概要
実施時期:2020年10月〜2021年9月
実施方法:県内44の全教育委員会へ書面を送付
対  象:県内の公立小学校、中学校、高校、幼稚園、特別支援学校等
回答のあった学校施設数:1431施設(高校146、中学校332、小学校717、幼稚園など190、その他〈特別支援学校等〉46)
※「幼稚園など」は無回答の自治体があった

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