兵庫県保険医協会

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検証 神戸市政 大型開発より医療福祉を

2009.10.05

 協会政策部では目前に迫った神戸市長選挙( 10 月11日告示、25日投票)にあたって、神戸市政の検証を行った。矢田市政は、開発優先の施策を続ける一方で市民の医療、福祉を削りつづけており、協会の立場と相容れないことが明らかになった。協会は現在、特定の候補者を支持推薦するにはいたっていないが、すでに発表している基本方針と「開業保険医・歯科医師の要求(案)」を実現する立場から取り組むこととしている。

のしかかる空港の借金
 神戸市長選挙にあたり、矢田市政の2期8年を振り返る。
 まず、神戸空港に象徴される大型開発とその破綻が矢田市政の大きな特徴である。
 多くの市民の反対を押し切って2006年に開港した神戸空港は、当初年間319万人が利用すると見込まれていたが、実際には08年度で最低の257万人の利用にとどまっている。09年度は08年度をさらに下回るとみられ、3億円の赤字となることを神戸市も認めている。今後、赤字に対して神戸市が市税を投入することになれば、「市税を投入しない」とした矢田市長の公約に反する重大な問題となる。すでに、神戸市は「市税を投入しないとの約束は、建設工事に限ったもので、管理運営費に投入しないとは言っていない」と、開き直りともとれる発言をしている。
 空港島造成のための借金1982億円の返済はより重大な問題である。神戸市の計画では空港島の造成地を売って借金の返済に充てるとしていたが、実際に売却ができたのは予定面積の3.7%、44億円のみである。神戸市は新都市整備会計から借りて返済するとしているが、この会計の残高は1717億円しかなく、ポートアイランド2期工事の借金693億円の返済を考慮すれば、底をつくのは時間の問題である。さらに、この新都市整備会計はもともと、一般財源に振り替えられ、市民の福祉などにも利用されてきたが、神戸空港事業が開始されて以降、一般財源への振り替えはなくなった。空港事業が市民のくらしを圧迫しているのである。
 また、神戸空港と関西国際空港をつなぐ海上アクセスも、7.3億円の赤字を生んでいる。さらに、事業費7000億円ともいわれる神戸空港と関西国際空港をつなぐ海底トンネル建造も計画されている。

市民病院の新築・移転
 神戸空港関連事業で莫大な赤字を生み続けている神戸市だが、そうした状況にも関わらず、538億円(医療機器、備品、用地費含む)をかけて中央市民病院の新築移転を計画している。理由として市があげているのは「設備類の経年劣化による老朽化への対応が急務」「昨今の医療技術の進歩...に対応していくため」だが、現病院を一部増築、改修すれば166億円で済むとの試算もある。
 新病院では病床数が300床削減される計画で、救急の受け入れが難しくなることが予想される。個室率も現在の34 %から75%になり、多くの患者が差額ベッド代を支払うことになることも懸念される。さらに、移転先は現病院より市街地から1.3㎞遠くなり、この点でも救急救命率の低下が重大な問題となっている。
 また、新病院の運営形態には、高知や近江八幡で破綻が相次ぐPFI方式が導入されている。PFI方式とは公共施設の維持や管理、運営を企業が担い、自治体が事業費やサービス料を払う仕組みで、民間ノウハウの導入により、効率的な経営と質の高いサービスの提供が可能になるとのふれこみである。しかし、高知や近江八幡市では、コスト削減がうまくできず、経営が悪化し破綻している。しかも、さらに問題なのは、一度契約した委託料は変更が難しく、運営企業は経営努力をしなくても儲けが出る上、経営破綻すれば、自治体がかぶる仕組みとなっている。

医療産業都市構想
 こうした、さまざまな問題点が指摘されている中央市民病院の新築移転計画だが、神戸市が計画に固執するのには理由がある。それは、神戸市が推進する医療産業都市の中核施設である先端医療センターの付属病院として中央市民病院を利用するためである。医療産業都市構想とは、ポートアイランドに先端医療技術研究開発の拠点を整備し、医療関連産業の集積を図るというプロジェクトである。先端医療センターの井村裕夫理事長は「中央市民病院の患者などを対象に...最先端医療の応用研究を進めている。このためにも、また救急事態の対応に際しても、市民病院があると便利」とのべている。つまり、基礎研究成果の応用研究を市民病院の患者を対象に行うとともに、研究中に事故が起こった場合は市民病院で救急対応を行うためというのが、中央市民病院移転の本当の理由なのである。これは、先端医療センターを拠点にした研究プロジェクトが国の「先端医療開発特区( スーパー特区)」に指定されたことと併せて考えると非常に危険なことである。
 「先端医療開発特区」とはアメリカの年次改革要望書と経済財政諮問会議の提案を受けて設けられた制度で、政府が選定した先端医療研究に対し関連規制の緩和と資金援助を行う制度である。さらに、選定された研究プロジェクトには企業も参加しており、国の資金援助により開発した先端医療技術を、安全基準が緩和された承認審査により、いち早く企業にとって利益の上がる商品にするという制度である。こうした研究を推進する先端医療センターの「実験医療」に中央市民病院の患者が巻き込まれるというのは、非常に危険なことである。
 もちろん、医学の発展は人類の大きな望みである。しかし、それに企業にとって都合のよい商品化を前提とした手法を持ち込めば倫理や安全性がおきざりにされる恐れがある。また、自治体病院を先端医療技術開発に動員すれば、住民の命と健康を守ることを目的とする自治体病院本来の役割がないがしろにされてしまう恐れもある。新しい医療技術の研究は、国の責任で行うべきである。

削られる社会保障
 矢田市長は、一方で市民への医療、社会保障を削り続けている。
 神戸市国保には、24万世帯、40万人が加入しているが、このうち半数以上が年間所得100万円以下の低所得層である。そのため、高すぎる保険料が払えずに8割近い世帯が減免制度を利用しているが、それでも保険料が払えず4万2千世帯が滞納に陥っており、3814世帯が無保険となっている。こうした深刻な状況にもかかわらず、神戸市は保険料を上げ続けてきた。
 1980年代に5割あった国保財政の国庫負担率は現在3割にまで落ちている。さらに神戸市も、この3年間で一般会計からの国保会計への繰り入れを50億円も減らしている(図)。他の政令指定都市と比べると、市が任意で国保会計を支援する法定外繰り入れは15の政令指定都市のうち14位の低さである(06年)。人口が神戸市よりも少ない広島市では58億円を繰り入れているが、神戸市はわずか7億円である。この額は被保険者一人当たり1335円でしかなく、他市が軒並み1万円以上であるのと比べると神戸市の異常ぶりは明らかである(表)。
 また、介護保険制度も大きな問題を抱えている。介護保険料について、神戸市は独自の減免制度を設けてはいるが、06年から適用要件を厳しくしたため、05年の6113件から半減している。また、特別養護老人ホームの待機者が02 年の段階で4211人いたにもかかわらず、02年から08年の間に619人分しか新たに整備せず、待機者が5820人にも達している。
 国民からの強い批判を受けて新政権が廃止を決めている後期高齢者医療制度についても、神戸市は全く市民の立場に立っていない。兵庫県後期高齢者医療広域連合でさえ、県民の大きな批判を受け「今年は資格証明書を発行しない」こととしているが、神戸市は独断で市民に資格証明書の発行をちらつかせて、保険料を払えない高齢者を脅している。市民に送った文書は「後期高齢者医療保険料の支払いについて( 催告書)」とされており、「このままお支払いがない場合は、被保険者証の返還をお願いすることがあります」と書かれている。本来であれば、住民を守るために国に対して制度を撤回させる立場に立つべき自治体が先回りして悪法を推進するなどあってはならないことである。
 他にも、老人医療費助成制度の所得制限を厳しくしたり、乳幼児、高齢重度障害者、重度障害者、母子家庭などに対する医療費助成の外来一部負担金の値上げを行うなど、市民に対して容赦のない制度改悪を行っている。

市政転換を
 これまで見てきたように、神戸市は神戸空港に象徴される大型開発には莫大な市費を投入し、長期間にわたり赤字を計上し続けても事業を継続する一方で、市民のくらしに直結する医療、社会保障費については、ことごとく削減している。
 矢田市政の2期8年間は、自公政権のもとでアメリカから持ち込まれた新自由主義政策が、国民の生活を破壊した8年間でもあった。こうした中で、本来ならば地方自治体として国の悪政から市民を守る防波堤の役割を発揮しなければならないはずの神戸市は、その役割を果たさないどころか、国と同様の政策を市政に持ち込み、市民の生活をさらに苦しいものにしてきた。また、国と一緒になって、大企業奉仕の政策を推進してきた。
 国政では自公政権が国民の大きな批判を受け崩壊し、新たに民主党を中心とした政権ができた。市政でも大型開発優先、医療・福祉切り捨ての市政を大きく転換させる必要がある。市長選挙はその絶好の機会だ。

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