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新高齢者医療制度解説1 低い国庫負担率手つかずのまま

2010.09.05

 厚生労働省の「高齢者医療制度改革会議」は8月20日、後期高齢者医療制度に替わる新制度の「中間とりまとめ」を発表した。民主党は後期高齢者医療制度を廃止し老健法に戻すとしていた方針を転換し、昨年11月に同会議を設置していたが、中間とりまとめでは現行制度との違いが不明確な点が多い。高齢者の医療制度は一体どうなるのか、今回出された中間とりまとめの内容と問題点をシリーズで紹介する。

制度の財源明確にせず

「中間とりまとめ」(以下、中間報告)は新制度について「10のポイント」(表)などを表明し、被用者保険の本人・家族(約200万人)は被用者保険に戻すことを明らかにした。
 しかし具体的な内容はこの一点だけで、後は抽象的で不明な点が多い。特に、医療制度としての根幹である財源問題については、明確な方針を示していない。高齢者の保険料は「医療給付費の1割〝相当?」として、後期高齢者医療制度(以下、後期高齢)と同じ枠組みを残す方針だが、肝心の国庫負担割合をどうするのかについては明らかにされておらず、きわめて無責任な提案となっている。
 なぜ、財源を明示できないのか。「高齢者自身が痛みを感じてもらうため」として、後期高齢は、医療給付費のうちの1割を75歳以上のすべての高齢者からの保険料徴収で賄う仕組み。医療費が増えれば高齢者自身の保険料も増えるため、国民の大きな怒りを買った。
 批判を受けた当時の自公政権は、制度がスタートした直後から所得割率の半減や9割減免、8・5割減免措置の追加など、後期高齢の保険料負担を低くするための軽減措置を次々と実施せざるをえなくなった。
 国民の怒りの声と運動で実現したこれらの軽減措置によって、実際の保険料率は1割ではなく7%程度まで下がったと厚労省は算出している。
 中間報告が、高齢者の保険料を給付費の1割「相当」としているのは、こうした軽減措置の取り扱いを保留し、問題を先送りしているからである。軽減措置を恒久化するにはそのための財源を示さなければならないが、財務省は国庫負担を増やしたくない――。となれば、残る財源は協会けんぽなどからの「支援金」を増やす以外にないが、健保組合や地方自治体は負担増を拒否している。財政負担をめぐる思惑が一致しないため、政府としてまとまった財源論を示すことができないのだ。

必要なのは国庫負担の抜本増

 政府は旧老人保健法以来、高齢者医療費の財源のあり方について、国庫負担と各保険者の財政調整でまかなう方式をとってきた。「社会保障としての医療制度」としては、国家が最終責任を負うのが憲法25条の立場。その上で国庫負担だけでは財源に限界があるとして、国庫負担の代替措置として各保険者が財源を出し合う財政調整方式を併用してきた。
 しかし実態は、2010年度予算ベースで国庫負担額は3兆7千億円で、後期高齢者の医療費総額12兆8千億円に対して国庫負担率は29%にすぎない(図)。国は「給付費の半分を公費負担」していると説明するが、患者負担額を削除した「給付費」を分母に、自治体負担分を加えた「公費」を分子に計算したもので、国庫負担の実態を覆い隠している。
 新高齢者医療制度では、国庫負担と財政調整とのバランスがあらためて問い直されてしかるべきだが、厚労省は国庫負担率のあり方を変更する財源案を示そうとはしていない。低すぎる国庫負担率をそのままに新制度の設計を試みても、国民が求める高齢者医療制度は生まれようがない。
 高齢者の保険料1割、国庫・自治体負担をあわせた「公費」が5割、財政調整(支援金)4割という枠組みを残す限り、たとえ制度の枝葉部分の変更があるにしても、低すぎる国庫負担と、医療費に比例して高くなる保険料という後期高齢の本質を、そのまま新制度に残すものと言わざるをえない。必要なことは国庫負担を抜本的に増やすことである。

(つづく)

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