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新後期高齢者医療制度政策解説3 老人保健法に戻して拡充を

2010.09.25

 協会・保団連は、後期高齢者医療制度を廃止し老人保健法に戻すことを求めている。しかし、単純に後期高齢制度以前に戻すだけでは、医療はよくならない。老人保健法の改善が必要である。

65歳以上に対象拡大を

 第1の問題は、対象者の拡大である。
 後期高齢制度は、75歳以上だけでなく、65歳以上を前期高齢者として財政調整する仕組みを設けている。老人保健法は75歳以上だけを対象にしており、65歳以上74歳以下は、対象になっていない。このまま老健法に戻せば、退職者医療制度問題があるにしても、前期高齢者にかかる医療費負担が国民健康保険にすべて負わされることになる。
 もともと老健法は、70歳以上でスタートしたが、財界の要請で75歳以上に引き上げられた経緯がある。これを65歳以上に拡大し、老齢年金支給の対象時期と重ねて一貫した社会保障制度とすることが合理的である。
 「中間とりまとめ」は、65歳以上については検討課題として、前期高齢者をどのように扱うか明らかにしていない。
 しかし、仮に65歳以上に拡大するとしても「中間とりまとめ」は、その財源として、公費負担のない財政調整だけの財源シミュレーションを示している(図)。つまり、前期高齢者を新制度の対象に加えても「国庫負担は出しませんよ、すべて保険者の財政調整でまかなってください」という意味である。
 結局のところ、この点でも「中間とりまとめ」は、後期高齢制度を継承しているにすぎない。

国庫負担改善で良い老健制度に

第2の問題は、財源問題である。新高齢者医療制度は国庫負担をどのように増やすかを焦点としなければならない。ところが「中間とりまとめ」は、後期高齢制度での実績を前提に、後期高齢を超える国庫負担をまったく想定していない。
 後期高齢制度医療費の2008年度医療費総額は11兆3800億円。このうち国庫負担は、わずか3兆2500億円で、負担率は3割を切る低水準である。国庫負担率をこのままにし
て、どのような新制度に移行しても、単に見かけを変えるにすぎない。
 老健法に戻すとともに、国家責任として国庫負担率の抜本的な改善を行わなければならない。そうすれば全国の自治体負担は大幅に軽減でき、また社会保険からの拠出金も一定程度に抑えることが可能になる。
 高齢者の保険料負担については、国保保険料が基本になるが、現行の保険料よりも低額にすべきである。そのためには、後期高齢制度で勝ち取った減額措置を国の責任で拡充することである。
 老人保健法は、後期高齢制度と違い、基本的に加入者を年齢で差別する構造ではないため、改善すれば良い制度になりうる。われわれが求めているのは、改悪された老人保健法ではなく、国庫負担増を伴う新しい、良い老人保健制度である。

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