兵庫県保険医協会

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資料解説 基準病床数改定で「病床不足」はなぜ?

2011.06.05

 兵庫県が発表した4月1日策定の兵庫県保健医療計画で、県下で病床数不足となる2次医療圏が続出した。「神戸」をはじめ8医療圏が不足地域で、過剰地域は「北播磨」「西播磨」のみ(表1)。なぜ、病床過剰地域から一転して病床不足地域となったのか。協会は県に情報公開請求を行い、算出根拠を確認した。「神戸」を例に、その内容を紹介する。

1、基準病床数とは
 基準病床数の算定は、2次医療圏別に5年ごとに算出するもので、医療法施行規則により算式が定められ、算定要素も決められている。算式に使用する数値は、厚労省告示により定められたもので、兵庫県における数値が使われる。
 基本の算定式は以下の通り。

基準病床数=療養病床算定数+一般病床算定数+流出超過加算数

 上記の式の中で「算定数」としているのは、それぞれ人口などに基づく必要数のこと。その算定式は、以下のように定められている。

【療養病床算定数】={Σ(年齢階級別人口(A1)×年齢階級別長期療養入院・入所需要率(B1))-介護施設入所者見込み数+流入患者数-流出患者数}÷病床利用率

 年齢階級別人口は男女別で5歳きざみの人口のこと。各年齢層に応じた「長期療養入院・入所需要率」が定められており、両者を積算し全人口分を総計したものが、基本的に必要な療養病床数というわけである。ここから介護施設分を引き、地域的な流出入を加算、最後に病床利用率で除算したものを、実際に地域に必要な療養病床数としているのである。

【一般病床算定数】={Σ(年齢階級別人口×年齢階級別一般病床退院率)×平均在院日数+流入患者数-流出患者数}÷病床利用率

 一般病床の式も考え方は療養病床と同じで、「長期療養入院・入所需要率」が「一般病床退院率」に置き換わったものである。

【流出超過加算数】={(県外流出患者数)-(県内流入患者数)}÷3

 流出超過加算は、県内外への流出、流入を調整するもので、基準病床数の算出に大きな影響を与えるものではない。

2、神戸市の事例
 神戸市を例に、上記の算出に使われたデータを検証した。その結果、年齢階級別の70歳以上が、この5年間で大きく増加しており、特に「80歳以上」が女性で4万6千人から6万人へと1.3倍に増えている(表2)。「需要率」(B1)は、今回も前回も同じ数字が使われており、基準病床数の増減には影響していない。
 前述の各式を神戸にあてはめたものが表3である。5歳きざみで出した性別必要療養病床数を、全年齢にわたって総計したものがΣ(A1×B1)となる。高齢化によって算定数が2865床の増加となっている。ここから「介護施設入所者見込み数」を差し引くのだが、同見込み数は前回7719床に対し、今回は8732床で、約1千床しか増えていない。つまり必要な療養病床が約2900床増えたが、そのうち介護施設への入所で解消できるのは約1千床しかないということだ。
 療養病床算定数が増えた原因の第1は、高齢人口の増加であり、一方、介護施設が増えてはいるものの必要数にみあう増とはなっていないことが第2の原因と言えよう。「流出入」は調整係数で大きな変化はない。「利用率」も前回と同じである。
 一方、既存の病床数はこの5年間にほとんど変化していない。こうして前回と今回で、それぞれ既存病床数との差を算出した結果、前回は約1800床の病床過剰だったが、今回518床の不足となったものである。
 人口の高齢化自体は、他の2次医療圏でも共通した傾向だが、「80歳以上」の人口が9万人を超え、次いで多い「阪神南」の5万3千人と比べても1.7倍など、この層の絶対数が多いのが「神戸」の特徴だ。
 一般病床の算定数も、「流出患者数」が225人減少したことで324床増加しているが、影響している度合いは少ない。基準病床数増大の主な原因は、療養病床算定数の増加が大きく影響している。

3、病床数不足の問題点
 病床不足圏となったことで、病床拡張が可能となるが、一般病床として整備するのか、療養病床として整備するのかは、基準病床数からはどちらでもよいことになっている。従って、医療機関がそれぞれの判断で病床数の拡張を申請できる。
 どちらで整備するにしても、地域医療のニーズとしては、療養病床が不足していることは明らかであり、地域医療がどのように応えていくのかが問われることになる。
 また、人口分布を見れば、5年後にはさらに高齢人口が増えると見られ、介護施設が大きく増加しない限り、今後も療養病床に対するニーズの増加が見込まれる。
 神戸市が、今回の病床数不足を、医療産業都市構想における病院増設の根拠とするつもりならば、地域医療を歪めるものとなりかねないであろう。

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