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県立こども病院 会員アンケート結果詳報 ポーアイ移転 小児科は6割が反対

2011.09.25

 県立こども病院のポートアイランド移転問題について、会員アンケート結果を前号の速報に続き詳報する。アンケート結果からは、こども病院と開業医との強いつながりが浮かび上がった。なかでも小児科は、診療情報のやりとりを94%が経験しており、「反対」「どちらかといえば反対」が6割を占めた。

■実施期間 8月8,9日~8月31日(ファックス送受信)
■対   象 協会正会員(医科・歯科開業医、病院)
■送 信 数 4,845件
■総回収件数 1,072件(回収率22.1%、有効件数1,037件)

診療情報やりとり「経験あり」6割
 こども病院となんらかの診療情報をやりとりした経験が、「よくある」「時々ある」「たまにある」の合計は、61%で、過半数が「経験あり」と回答している(図1)。経験のある方が回答したとも見られるが、千件を超す回答者で6割が「経験あり」としていることは、こども病院の果たしている役割が大きいためであろう。
 「経験あり」を科目別でみると、(1)小児科94%(2)産・婦人科90%(3)眼・耳鼻咽喉・皮膚・泌尿器科系83%、続いて外科系64%、内科系は50%だった(図2)
 さらに「経験あり」を「よくある」「時々ある」に絞ると、(1)産・婦人科59%(2)小児科57%(3)眼・耳鼻咽喉・皮膚・泌尿器科系42%となり、やはり小児科、産科・婦人科と、こども病院との関係が強いことがわかる(図3)。しかし、小児科、産科・婦人科に限定されているわけではなく、全科的に関係があり、最も低い歯科でも3割弱で「経験あり」としている。

移転計画「知らなかった」65%
 ポーアイへの移転計画を「知らなかった」は65%で、多くの開業医が知らされていない実態が明らかになった。「知っていた」場合でも、情報源は医師会が最多。県当局が、移転方針を内部情報にとどめ、県民に対して明確にしていないことがあらわれている。

移転に「反対」「どちらかといえば反対」小児科では6割
 移転計画の賛否については、前号既報のように「反対」が最も多く23%、次いで「どちらかといえば反対」が22%で、両者をあわせると45%。科目別にみると、小児科では「反対」33%、「どちらかといえば反対」28%で、両者をあわせると61%と高い(図4)

「賛成」理由、最多は「新中央市民の小児・産科との連携で機能強化」
 賛成理由は、多い順に(1)「新中央市民病院の小児科・産科との連携で機能が強化される」62%(2)「立地条件としてポーアイの方がふさわしい」51%(3)「移転により高度な医療提供が可能になる」51%。

「反対」理由、最多は「防災上問題」
 反対理由は多い順に、(1)「防災上の問題があるので避けるべき」68%(2)「全県的に対応する立地条件として現在地の方がふさわしい」52%(3)「新中央市民病院の小児科・産科と機能が重複するので必要ない」46%。
 防災問題が最多だが、神戸市立中央市民病院との一体化について、機能が重複するとの批判も少なくない。新中央市民病院との関係の評価が、賛否で完全に意見が分かれており、移転問題の焦点となっていることがうかがわれる。
 なお、小児科だけでみると、「反対」理由の最多は、「現在地で改築できる」で80%にも及ぶ(図5)。小児科では、地域医療連携している「経験あり」がきわめて高かったこととあわせてみると、現在地での連携を維持したいとの思いの強さをにじませるものとなっている。

医療産業都市に病院集中「反対」43%
 今回の移転方針のもとになっているのは、神戸市が医療産業都市に病院を集中させようとする構想。これには、メディカルツアーや移植医療問題などが絡んでいる。今回、この神戸市の方針について、「賛成」15%、「反対」43%であった(図6)。「わからない」23%、「どちらでもない」18%で、この賛否以外の回答が41%を占めているのも特徴。医療産業都市構想問題について、さらに情報を提供していくことが求められている。
 こども病院移転の賛否と、ポーアイへの病院集中への賛否は、関連する傾向がある(図7)。すなわち、「病院集中」賛成者がポーアイ移転でも賛成している割合は63%と高く、逆に「病院集中」反対者が、ポーアイ移転に反対している割合は、85%と多数を占めている。こども病院の移転の背景として、「病院集中」の是非も重要なポイントになっていることがわかる。

病院集中「賛成」理由 「研究施設と隣接」81%
 病院集中方針に対して、「賛成」の理由は、多い順で(1)「研究施設と隣接すれば病院機能が高まる」81%(2)「1カ所ですべての病気に対処できる」65%。「医療ツーリズムの受け入れに便利」「医療の国際的な競争に勝つために必要」「神戸経済の活性化に役立っている」は少数意見であった。

病院集中「反対」理由 「地域医療が損なわれる」83%
 「反対」の理由は、(1)「1カ所に集中すると地域医療が損なわれる」83%(2)「医療ツーリズムは受け入れるべきでない」43%(3)「医療の国際的な競争に勝つことは必要ない」21%。
 神戸市は、「メディカルクラスター」を国際競争で勝つために必要なものと位置づけているが、多くの会員が、このような一極集中型について、むしろ地域医療体制を損なうものと見ていることは重要である。

自由意見 245件
 自由意見は245件寄せられた。多くは、防災上の問題を指摘し、東日本大震災からの教訓を学んでいないと批判するもの。こども病院へのアクセスについては、最寄駅との間でシャトル便を運行すれば解決するとの提案や、豊岡市の会員からは、一極集中ではなく、むしろ県北部に県立こども病院の分院をつくってほしいとの要求なども寄せられた。
 少子高齢化が日本社会の大問題になっている中、こども病院のあり方をめぐり、より良い地域医療体制へ医療関係者が十分に意見を交流することが求められている。

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