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こども病院ポーアイ移転を国会で追及 山下芳生議員インタビュー 厚労省 「医療団体の了解なければ計画変更を」と回答

2012.10.05

 県立こども病院のポートアイランドへの移転問題について、8月20日に参議院の行政監視委員会で質問を行い、小宮山厚労相に「検討」を約束させた山下芳生参議院議員(9月5日付既報)。本問題を取り上げた背景やその後の国の動きについて、インタビューした。国会質問ダイジェストとあわせて掲載する。

 ――質問にあたっては、どのくらい調査されたのですか。
 県立こども病院の視察、医師会、保険医協会、障害者連絡協議会、心臓病の子どもを守る会を訪問してご意見を伺いました。
 ――調査の中で特に感じられたことは、どのようなことでしたか。
 こども病院には、近畿・全国から重い病気の子どもたちが集まっていました。循環器病棟では人工呼吸器をつけた小さな子どもがベッドに横たわり、ご両親が付き添う姿が何組もありました。ICUにいた子は、お母さんのお腹にいるときからこの病院にやってきて、数カ月の間に何度も手術をして幼い命をつないだ。子どもと家族にとってかけがえのない病院だと実感しました。
 同時に病院の老朽化と狭さは大変深刻です。早期建て替えは必要ですが、災害リスクの高いポートアイランドへの移転は避けるべきだと思います。
 後日、大震災のときポートアイランドがどうなったかを調査しました。当時、水道やアクセスが遮断され、中央市民病院の報告書でも「十分にその役割が果たせなかった」と報告されています。
 ――質問を行ってどのように感じましたか。
 辻厚労副大臣は、県当局と同じで正直ガッカリしました。小宮山厚労大臣は、私からの問題提起をしっかり受け止めてくれたと思います。「目配り」にとどまらず、計画の見直しも「検討する」と答弁しています。
 ――質問後、国はどのように対応をとっているのでしょうか。
 厚労省は、兵庫県に対して国会での質問と答弁を伝えました。県はまだ対応を検討中ですが、国としては、「医師会等の医療団体の了解が得られなければ計画の変更を考えるべき」との考え方を示しました。
 ――最後に、一言メッセージをお願いします。
 保険医協会はじめ医師団体、患者団体、住民の皆さんの声が、国にも伝わっていると感じます。このまま計画がゴリ押しされれば、地域医療の再生に逆行する事態になります。ともにがんばっていきましょう。

国会質問ダイジェスト


8月20日・参議院行政監視委員会での質疑より作成(文責・編集部)

「目配りでは足らない」「計画見直し検討すべき」


○山下芳生議員
 兵庫県立こども病院は、1970年、全国2番目にできた小児専門病院であり、重い病気を抱える子どもと家族にとってかけがえのない存在である。
 そのこども病院が老朽化、狭隘化に伴って建て替えが必要となり、兵庫県は病院を神戸市の人工島ポートアイランドに移転する計画を推進している。しかし、ポートアイランドへの移転には、兵庫県医師会をはじめ医療関係団体がこぞって反対している。厚生労働副大臣、医療関係団体がこぞって反対していることをご存じか。
○辻泰弘厚労副大臣
 小宮山大臣が決算委員会に出席のため私の方から答えさせていただく。
 今年3月に医療関係団体から兵庫県への反対の要望書が提出をされ、大規模災害発生時での津波や液状化など、意見をいただいていると聞いている。
○山下芳生議員
 県立病院の移転に県の医療関係団体がこぞって反対するなど、私は聞いたことがない。
 医師会などが反対する最大の理由は、災害など緊急時に最も機能を発揮しなければならない高度医療機関を災害に弱い人工島に移転することにある。
 17年前の阪神・淡路大震災でポートアイランドは、約50センチの地盤沈下と液状化現象による泥水の湧出が各所で起こり、道路は25カ所でクラックなどの損傷が生じた。神戸大橋は、内陸部の取り付け部分が損壊をし、緊急車両のみ通行可などの交通規制がかけられた。新交通システムポートライナーは不通となった。
 神戸市立中央市民病院がまとめた「大震災を体験した市民病院からの報告」では、人工島による特別の困難が報告されている。
 ライフラインが途絶し「特に一カ月余に及ぶ断水の影響は甚大であった」として、平常時1日700トンないし900トンの上水を使用しているが、水道局や自衛隊の給水車による供給は当初1日20トンで、絶対的に不足状態であったと述べている。断水は人工呼吸器や消毒装置の使用不能などをもたらした。
 さらに道路もポートライナーも寸断されて、当時の病院長は、ライフラインと交通、情報、通信の寸断の中で、役割を果たすことはできなかったと述べている。忸怩たる思いであったろうと拝察する。
 そういう場所にわざわざ県立こども病院を移転させることに医療関係団体がこぞって反対するのは、当然だと思わないか。
○辻泰弘厚労副大臣
 厚生労働省としては、病院機能に必要な敷地面積や病院までのアクセスなどの立地条件を総合的に勘案した上で立地場所を決定することが重要だと考えている。
 新病院の防災面については、津波高を現在の防災計画の2倍に想定した場合でも浸水することのない地盤高とする、病院の整備にあたっては最新の免震構造を採用するとともに自家発電設備や受水槽などを2階以上に設置する、ライフラインに甚大な被害が生じた場合に備え水や燃料などを最低3日分備蓄するなどの対策を講じると兵庫県から聞いている。最終的には県が関係者と調整の上、総合的に判断して決めていただくべきものと考えている。
○山下芳生議員
 県は対策をとると言っているが、医師会の先生方が言うのは、対策をとらなければ駄目なリスクの高い場所に何でわざわざ移転するのかという批判だ。
 兵庫県産科婦人科学会会長と兵庫県小児科医会会長が連名の反対声明では、県の小児、周産期救急医療の破綻を招くと指摘している。「常時四十ないし五十名の人工呼吸器装着患者を収容しており、大災害発生時にはライフラインの途絶は想定内とすべきだが、非常用ライフラインでもってこれらの重症患者に対して安心、安全な医療を長期安定的に施すことは極めて困難」だと。
 子どもたちの命を守る最前線で活動されている産科婦人科学会と小児科医会の会長の連名による指摘であり、非常に重い。両会長の指摘をどう受け止めるのか。
○小宮山洋子厚労大臣
 指摘は非常に重要だ。ポートアイランドへの移転を進める場合には、大規模地震発生後も医療機能を維持できるような建物の構造を採用すること、また、今後国が発表する予定の詳細な津波高とか浸水域などの被害の推定結果を基に、患者の命がしっかり守れるような対応を行う必要がある。
○山下芳生議員
 対応をしなければならないようなところに移転しなかったらいいじゃないかと、今あるところは高台なんだから。川島龍一兵庫県医師会会長から、子どもたちを最後のとりでに運べなくなると、私は直接聞いた。
 東日本大震災の教訓、津波被害の教訓もふまえる必要がある。中川防災担当大臣、中央防災会議の南海トラフ巨大地震対策で、医療機関の津波対策についてどのように述べているのか。
○中川正春防災担当大臣
 南海トラフ巨大地震対策については7月19日に報告が取りまとめられ、災害時要援護者にかかわる医療施設等は、...必要に応じて、これらの施設を浸水の危険性の低い場所に立地するような配置の見直しであるとか、あるいは近隣の高台等へ通じる避難路の整備など、各地域の実情等をふまえた津波対策を講じることが必要である。
○山下芳生議員
 東日本大震災では、実際に津波被害によって沿岸部の拠点病院が軒並み機能しなかった。その教訓をふまえて、浸水の危険性の低い場所に立地するような配置の見直しが提起されている。中央防災会議の中間報告の指摘をふまえる必要があるのではないか。
○小宮山洋子厚労大臣
 その通りだ。災害時に基幹的な役割を果たす病院が移転する場合は、中間報告の内容も考慮をして、地域の実情の中で検討していく必要がある。
○山下芳生議員
 兵庫県は、浸水する区域をシミュレーションした結果、人工島のポートアイランドは進入口などが浸かって道路が途絶し、孤立状態になる可能性があるとされている。これは中央防災会議の提起に逆行することになる。
 兵庫県立こども病院の移転建て替え計画には厚生労働省の地域医療再生基金交付金が利用される。しかし、医師会はじめ地元の医療関係団体がこぞって反対している計画を強行して、はたして地域医療再生に資するのか。計画の再検討が必要ではないか。
○小宮山洋子厚労大臣
 委員ご指摘のようなご懸念がないように、厚生労働省としても、基本的にはその地域の中で話し合うということだが、基金も使ったりとか、バックアップする立場であり、そうしたご懸念が生じないようには目配りをしていきたい。
○山下芳生議員
 私は、目配りでは足らないと思う。医師会はじめ地元の医療関係団体がこぞって反対している計画を強行したら、これは安心、安全な地域医療構築に新たな障害をつくることにもなりかねない。
 兵庫県地域医療再生計画が作られたのは昨年11月。その後に、先ほど中川大臣が紹介された中央防災会議の中間報告が決められた。事情が変わった。このまま移転計画を進めて取り返しのつかない事態を招いてはならない。厚生労働省として調査をして、計画の見直しもこれは主導的に検討すべきだ。
○小宮山洋子厚労大臣
 ご懸念がないように検討させていただきたい。

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