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県知事選挙特集 井戸県政12年の検証(下) 大震災の教訓生かさず こども病院をポーアイへ移転

2013.07.15

 協会は、知事選候補者に「10のアンケート」を実施したが、残念ながら現職の井戸敏三氏からは「回答いたしかねます」として、見解を得られなかった(前号既報)。井戸氏が公表している「私の政策」(以下「政策」)をもとに、医療に関わる政策を分析する。
 「政策」では、「南海トラフ巨大地震などの大規模地震に備える」としている。誰が聞いても当たり前だが、それではなぜ県立こども病院をポートアイランドに移転するのか。
 協会はこども病院にアクセスできなくなるなどの可能性を指摘してきたが、県は「ポートアイランドは安全」というばかり。国は大災害からの教訓として、公的施設を沿岸部から移すようにと補助金までつけているが、井戸氏の姿勢は、政府方針にも逆行するものである。
 災害に対する井戸氏の姿勢で特徴的なことは、何よりも被災者に対する思いやりに欠けることである。08年には「関東大震災が起こればチャンスだ」との暴言を述べ、今春の淡路島地震でも、県立淡路医療センターについて「性能検査をしてくれた」と発言し、災害を検査に例える無神経ぶりを示した。
 災害ばかりではない。診療報酬に対して井戸氏は、事業税を課税にすべきだと主張してきた。診療報酬が非営利を前提にしていることを理解できない氏の本性を浮かび上がらせるものだ。

公立病院統廃合を推進


 県立塚口病院は、県立尼崎病院と統廃合し、14年度末に県立尼崎総合医療センターとして整備される予定である。
 当初は塚口病院の廃止を打ち出したものの、地元住民をはじめ保険医協会尼崎支部、市医師会などの反対により、尼崎病院との統廃合という形になったものだが、ベッド数は尼崎500床、塚口400床の計900床から730床へと170床が減らされる。そのため塚口病院跡地に医療機関の設置が望まれているが、県は消極的で「政策」では一切触れられていない。
 但馬では公立病院の再編が進み、八鹿、香住、浜坂、村岡の各病院の医師数は激減し、梁瀬、和田山、出石、日高各病院は「医療センター」化して、入院機能が大幅に縮小された。豊岡病院に中小病院の医師が集約される一方、各病院は医師数の減少で救急告示病院の返上を余儀なくされた。
 救急患者は、豊岡病院に設置された但馬救命救急センターに集中し、その結果、医師の疲弊が進み、患者は診療が制限されるという新たな矛盾を生み出している。井戸氏は、ドクターヘリの対応を自慢しているようだが、公立病院のあり方が歪められていることの方がはるかに問題である。
 北播磨地域は、6市の市民病院を一カ所に集約しようとの計画だったが、合意に至らず、結局、三木・小野2市の市民病院を統合。北播磨総合医療センターとして13年度に新設されるが、ベッド数は三木323床、小野220床の計543床から450床へと減らされる。
 県立柏原病院も柏原赤十字病院との統合を進めるとしている。
 総合周産期母子医療センターは、県立尼崎総合医療センターで新設されるほか、神戸市立中央市民病院も承認され、名目的には県立こども病院とあわせて県下で3カ所になる。しかし神戸市立中央市民病院は、こども病院と隣接するため事実上は1カ所に集約されるに等しく、実体は2カ所にすぎない。
 これら統廃合の背景には、公立病院の統廃合を推進している国の「公立病院改革ガイドライン」がある。これは、公立病院の赤字を問題にし、少数の病院に集約化してベッド数と人件費を削減することで解決しようとするもの。しかし、低診療報酬のもとで救急医療など政策医療を担う公立病院が赤字に陥るのはある意味、必然的結果であり、本来は診療報酬の改善や一般会計からの投入など、国と自治体の公的責任で解決すべきものである。
 公立病院を統合再編する「ガイドライン」のやり方では、結局は地域住民の医療ニーズに応えられず、ますます医療崩壊を促進するだけである。
 地域医療再生のためには、地域ごとに公立病院を確立し、支えることが求められている。これは東日本大震災において、公立病院が減らされていたことが復興に大きな影響を与えていることからも立証されている。国の言いなりに再編統合を進めるのではなく、国の医療政策の転換を求めることが必要だ。
 しかし、井戸氏は国の方針に忠実に従って、県下の公立病院統廃合を進めている。井戸氏が熱心なのはドクターヘリで、13年度に播磨地域などに導入し、県内全域をカバーする体制を完成させるとしている。しかし、ドクターヘリが必要なのは、公立病院を減らし地域医療を広域化しているからにほかならない。
 住民の身近なところで公立病院を整備し、地域の医療連携を確立していくことが求められている。

社会保障の削減を応援


 井戸氏は、社会保障政策についても国の方針を支援している。
 年金制度については、「支給年齢や掛け金負担年齢の引き上げ、支給水準の適正化」に取り組むとしている。「安定した年金制度とするため」だというが、厚生年金の積立金は120兆円を抱えている。ヨーロッパの先進国などでは、そもそも年金制度は賦課方式として積立金を保有しておらず、日本よりも高い水準の年金を維持している。「安定した年金制度のため」と言いながら、その根拠は実は極めて疑わしい。この構図は、医療保険の財源難を理由に診療報酬引き下げを求める財界と、まったく同じ立場といえよう。
 「政策」は、介護保険についても「保険給付の重点化を図り、適正な保険料負担のもと、介護保険制度の安定性確保をめざす」としている。翻訳すれば、介護保険サービスを削り、加入者の保険料の範囲で運営しようということである。介護保険料が高額な原因は、国が財政の20~25%しか負担していないためである。この点でも、井戸氏の姿勢は国の方針を追認するだけである。

原発容認し太陽光補助打切り


 「3・11」以後、原発は使用済み核燃料を処理できず、またその技術が確立していないため、いったん事故が起これば、収束不能の事態になることが誰の目にも明白になった。原発ゼロは、世論調査でもいまや国民多数の世論である。
 ところが井戸氏は、「原発への依存度の低減を図り、エネルギー源の適正な組み合わせをめざします」「直ちに廃止するのではなく、行き過ぎた原発への依存度を下げていくことを基本とすべき」とし、大飯原発の再稼働を容認した。
 一方、太陽光発電への県費補助金は、11年度は1kWあたり2万円だったものを、12年度は同1万円に半減し、13年度では廃止してしまった。原発・エネルギー問題では、建前と本音の使い分けがはっきりしているのが特徴だ。

全国10位の財政力


 福祉医療の拡充をとの要求に対して県が必ず持ち出すのが「財政難」である。
 しかし、兵庫県の財政力指数は全国10位と、財政力では上位県である(表)。
 前号で紹介した群馬県は、福祉医療として中学3年生まで無料を実現しているが、財政力指数は14位で兵庫県より低い。鳥取県は財政力指数45位という中で「中学3年生まで1日1200円」にしてがんばっている。やればできる、と言わざるを得ないであろう。だが、知事にその気がなければいくら財政力があっても意味はない。
 その気のある知事を選ぶことが、県民医療を守るポイントだ。

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