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政策解説 診療報酬改定幅をめぐる議論 国民要求としてプラス改定求めよう

2014.02.05

安倍政権は昨年12月20日、2014年度診療報酬改定幅を決定した。消費税増税分を1.36%補填したが、薬価を1.26%引き下げ、本体はわずか0.1%プラス、実質1.26%のマイナス改定である。この改定率をめぐって、マスコミや医療界では、さまざまな評価が行われている。地域医療を充実する立場からこの改定の問題点を見ていく。
 
国民医療の質と量を決定する診療報酬
 
 診療報酬改定に関して、マスコミは「増える国民負担」(朝日12/21)、「保険料や医療機関の窓口での支払いも増える」(読売 12/21)などと報道している。
 これは診療報酬引き上げが、企業や国民の保険料負担、患者窓口負担増を招くという前提に基づいている。
 しかし、この前提には問題がある。診療報酬は医師の給与や医薬品、医療材料の支払いだけでなく、建物、設備、医療機器の購入・管理・更新の費用、職員の給与の支払いなどにも充てられており、診療報酬引き下げは、国民が受ける医療の質や安全の低下につながりかねない。
 また、診療報酬には新しい医療技術や薬の普及を促すという役割がある。新たな医療技術や薬が保険収載されて妥当な点数がつき、採算がとれれば一気に普及する。保険収載により、誰でも高度な医療を日本全国どこでも、保険を使って受けることができる。しかし、新しい技術が保険収載されなければ、その医療を受けたければ全額自己負担せざるを得ない。
 また、診療報酬をマイナス改定にするために、これまで保険で受けられた医療が保険から外されれば、それも全額自己負担となってしまう。今回の診療報酬改定でもうがい薬のみの処方を保険から外すことが議論されている。
 結局、診療報酬を低く抑えれば窓口負担や保険料は低くなるが、一方で、必要な医療が必要な時に受けられなくなってしまう。
 
高すぎる窓口負担こそ問題
 
 そして何より、窓口負担が増えるという主張も、そもそも日本の「現役世代の3割負担」が高すぎるからである。
 ヨーロッパの先進国では患者負担は原則無料である。
 また、保険料が高くなるというのも、政府が医療財源に占める国費の負担を低く抑え続けてきたためである。この方針を撤回し医療費における国庫負担を抜本的に増やせば、国民の保険料を低く抑えることは十分に可能である。
 
国民経済のためプラス改定を
 
 診療報酬は医師だけでなく、すべての医療従事者の賃金に影響を与える。つまり、診療報酬実質マイナスは、消費税が増税される一方で、医療従事者は賃下げされるということである。
 アベノミクスの成否は、労働者の賃金水準の引き上げにかかっているといわれている。実際に、安倍首相や麻生財務大臣も日本経団連に賃上げを要請している。
 しかし、一方で政府は、診療報酬引き下げにより、200万人に達する医療従事者の人の賃金を自らの手で引き下げようとしているのである。
 日本経済を立て直すためには、労働者の賃金を引き上げて消費を活発にし、経済の好循環を作らなければならない。そのためにも、多くの人が従事する医療分野の賃金を規定する診療報酬を引き上げるべきである。
 
診療報酬改定に対する医療界の対応
 
 今次改定について、医療界がプラス改定をめざす意気込みは非常に高かったといわれている。
 日本医師会は2012年4月の会長選挙で、民主党に近いといわれていた原中勝征前会長でなく、政権交代を見越して自民党支持を打ち出した横倉義武会長を選出した。その後、日本医師連盟が5000万円を自民党に献金し、参議院選挙では羽生田俊副会長を自民党から擁立した。こうして、日医幹部から「診療報酬引き上げへの環境は準備万端」という声が聞こえるほど、プラス改定を念頭に自民党支持を強めてきたが、ふたを開けてみると、実質マイナス改定となった。
 自民党幹部からは「安倍政権が成長戦略を描けず困っている時に、日医幹部は自分たちの利益ばかりを叫び、TPPでも規制改革でも、とにかく頭ごなしに反対する。これで診療報酬だけ『よろしくお願いします』と頼み込むのはあまりに図々しい」との声が上がった。TPPや混合診療全面解禁反対という日本医師会をはじめとする多くの医療関係者や国民が望む医療像と自民党の政策は相いれないものになっているのである。
 現在の安倍自公政権は消費税増税や社会保障「改革」で国民に痛みを押しつける一方で、復興特別法人税の廃止や大型公共事業の推進など大企業いいなりの政治を進めている。また、TPPや普天間基地の辺野古移設、集団的自衛権行使の容認に見られるように国民の意思を無視してアメリカの要求に応えることにも余念がない。
 このような、与党・自民党に対し、献金を行い、選挙協力をするという「すり寄り」をいくら強めたところで、診療報酬のプラス改定をはじめ、国民医療の充実は望むべくもない。
 医療分野において財界は保険料負担や税負担を減らそうと、国民負担増や給付削減を政府に求めている。それだけでなく医療分野で、混合診療の全面解禁など医療の営利産業化による市場開放と利益拡大を求めている。
 アメリカも、政府に大きな影響力を持つ保険会社の要望を受け、日本に対して医療分野での規制緩和を求めている。
 安倍自民党政権は、これら財界やアメリカの意向に沿った政治を進めながら、そうした政治から業界や国民を守ろうとする業界・職能団体からの支援を得るというねじれた構造の上に成り立っているのである。
 にも関わらず、日医は、診療報酬の実質マイナス改定について「診療報酬が十分ではなかったから、『(自民党や政府は)けしからん』というわけにはいかない」などと政府、自民党を擁護している。
 また、歯科でも、日本歯科医師会の大久保満男会長が「自民党歯科議連などによく動いていただいた」とコメントしている。
 
診療報酬引き上げを国民とともに
 
 今回の改定で、マスコミは前述のように、国民に誤った情報しか提供しなかった。背景には「診療報酬 メンツ争いの先を見よ」(12/22朝日新聞社説)「政府・与党内のドタバタ劇は2年に1度の年末の恒例行事だ」、(12/22日経新聞社説)との意見に代表されるように、診療報酬改定は、医師や歯科医師が既得権益を守るために自民党議員を使って政府に圧力をかけるものという根強い見方がある。
 本来、診療報酬は「国民が受ける医療の質と量を規定する」ものであり、今次改定の課題は医療崩壊に歯止めをかけることにあったはずである。この点を広く国民と共有し、診療報酬プラス改定を国民要求として掲げなければならない。
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