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政策研究会 講演録「特定秘密保護法」 羽柴 修 弁護士 海外で戦争できる国に道開く

2014.04.25

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昨年12月14日、「兵庫県弁護士9条の会」事務局長の羽柴修弁護士を講師に開催した理事会特別討論・政策研究会「安倍政権の壊憲路線と特定秘密保護法−秘密保護法の廃止に向けて−」の詳録を掲載する。

【はしば おさむ】1949年岐阜県生まれ。1967年多治見北高校卒業、71年新潟大学人文学部(当時)法律学科卒業、72年10月司法試験合格、75年神戸弁護士会(当時)入会、中神戸法律事務所入所、現在所長。兵庫スモン訴訟弁護団事務局長、尼崎道路公害訴訟弁護団事務局長など

 

安倍政権の軍事大国路線

 日本版のNSC法(国家安全保障会議を創設するための関連法案)と特定秘密保護法案が成立した。もう一つ残っているのが国家安全保障基本法で、この通常国会で予算の審議終了後に審議が始まると思う。また、昨年発表された防衛大綱では、自衛隊にオスプレイを17機配備するなど、軍事力の強化が進んでいる。
 そういう状況の中で、安倍首相はこの通常国会で、集団的自衛権の行使を容認するという解釈改憲をしようとしている。この前哨戦が秘密保護法だった。
 

現代によみがえる宮沢・レーン事件

 特定秘密保護法は、ジャーナリストとか、公務員とか特定の秘密に関連、接触する方々だけではなく、一般の市民を対象にしたものだ。多くの人たちがこの秘密保護法というのは自分たちには関係がないと思っていることが一番の問題だ。
 どう関係があるのかということを、「宮沢・レーン事件」を例に説明したい。これは真珠湾攻撃で太平洋戦争が始まった日に特定秘密保護法とそっくりの当時の法律、「軍事機密保護法」に違反したとして宮沢さんという大学生が逮捕された事件だ。
 宮沢さんは当時、北海道帝国大学の学生で、英語教師のハロルド・レーンという人と交流があった。それで、宮沢さんが、まだ日本の領土だった樺太や満州を旅行した際に、たまたま根室の海軍飛行場を見た。この話をレーン夫妻にした。それで彼は逮捕されたが、彼は何が原因かまったくわからなかった。結局宮沢さんは、特高警察に拷問をされ、懲役15年の判決を受け網走刑務所に収容、獄中で体調を崩し、終戦後27歳の若さで亡くなった。
 戦後、当時の最高裁にあたる大審院の裁判記録を調べてみると、根室飛行場のことが原因だったんだろうということが明らかになった。
 確かに、当時の状況と今の状況は異なる。もちろん今は日本国憲法があり、表現の自由などの基本的な人権が保障されている。だから、もし秘密保護法違反で逮捕されても、このような戦時中のような拷問が行われたりはしないと思う。しかし、今でも警察は偽造調書を作成したり、警察官が勝手に調書に署名をしたり、拷問ではないが、20日間の拘留に耐えられないような大変厳しい取り調べを行っている。
 だから、当時と同じように、秘密保護法違反で逮捕されれば、自分が何が原因で逮捕されたかわからなくなる。しかも、逮捕状と拘留状にも容疑の事実や日時を特定して何をしたかということが書かれない。今の憲法や刑事訴訟法で保障されている「罪刑法定主義」(ある行為を犯罪として処罰するためには、法令であらかじめ、明確に規定しておかなければならないという原則)がないがしろにされてしまうということだ。
 刑事法研究者の多くが反対の声を上げたのも、秘密保護法によって刑事裁判そのものが大きくゆがめられてくるという懸念が払拭されないからだ。
 軍事機密保護法があったころは、治安維持法もあり、暗黒の時代だった。そうした時代に直結するわけではないが、今の日本は間違いなくそういうところに向かって歩んでいると思う。

軍事機密漏えいを恐れた米国

 安倍首相はなぜ、秘密保護法を成立させたのか。この法律を安倍首相が持ち出してきたのは、これが初めてではない。第1次安倍内閣のころから、改憲を掲げていたし、特に9条を変えようと狙っていた。だから、こうした法律も9条を変えて、戦争ができる国にするための一つの法整備として、以前から準備していた。
 何が特定秘密に指定されるのかまったくわからなかったが、参考になるのは、「特別管理秘密」だ。これはすでに、各省庁が指定して管理している秘密で、約42万件あると言われている。そしてこの特別管理秘密は、すでに国家公務員法や自衛隊法により、漏えいすれば、罰せられることになっている。
 これをさらに厳しく管理するのが特定秘密保護法だ。なぜ厳しくする必要があるのかというと、アメリカと一緒に、共同で軍事作戦を遂行するためには、アメリカの機密が日本から漏えいすると困るというのが理由だ。アメリカから提供されるミサイル防衛技術に関する秘密や、中国の潜水艦の音紋の情報などが含まれていて、これが漏えいするとアメリカが困る。
 尖閣諸島近海では、アメリカと日本の潜水艦が中国の潜水艦とソナー探知合戦を行っている。日本の潜水艦には必ず、米軍の専門官が乗艦しており、中国の潜水艦のスクリュー音や暗号の解読を行っている。こうした情報が漏れるのをアメリカは恐れている。アメリカからの要請で特定秘密保護法がつくられたとも言える。

集団的自衛権と秘密保護法

 今後政府が成立を狙う国家安全保障基本法案では、第4条で「国民は国の安全保障施策に協力し、我が国の安全保障の確保に寄与し、もって平和で安定した国際社会の実現に努めるものとする」とされ、安全保障における国民の「協力」が義務化されている。
 第3条3項には「国が我が国の平和と安全を保障する上で必要な秘密が適切に保護されるよう法律上、制度上必要な措置を講じる」という条文も明記されている。さらに、第10条には「我が国、あるいは我が国と密接な関係にある他国に対する、外部からの武力攻撃が発生した事態であること」などの要件のもとに集団的自衛権の行使を容認することが盛り込まれている。
 また、日本版NSC法が成立し、国家安全保障局が設立された。この組織は国家安全保障会議の事務局という位置づけで、文官だけでなく、自衛隊の制服組が30〜40人入り安全保障計画を策定するとしている。
 つまり、これらの法律は、アメリカと一緒に海外で戦争を行うために、日本版国家安全保障局を設置し、安全保障計画の詳細を決めるのだが、そのためには、一般の国民には絶対に情報が漏えいしないようにしなければいけない。だから特定秘密保護法を制定したということだ。

欺瞞に満ちた第三者機関のチェック

 特定秘密保護法では、何を秘密に指定するのかは行政機関の長が行うとされている。しかも、開示しない期限も事実上無制限に決められる。そうなれば、市民生活にとって非常に大切な原発事故の情報なども、市民に知らされることがなくなってしまう。
 確かに、第三者機関のチェックが必要だといわれて、情報保全諮問会議や保全監視委員会、情報保全監察室が設けられることになった。その準備を行う有識者会議が、施行後、情報保全諮問会議となるようだ。この有識者のメンバーをみると、座長は秘密保護法が必要だと論陣を張った読売新聞グループの会長である渡辺恒雄氏だ。
 保全監視委員会とそれを補佐する情報保全監察室が設けられるが、これは秘密を指定する関係省庁の次官クラス、事務次官クラスが集まって各省庁の秘密指定について妥当かどうか判断する機関だとされている。
 つまりこれらの機関は第三者性がほとんど保障されていない。大きな問題だ。

他人ごとではない適性評価制度

 また、適性評価制度も大きな問題だ。適性評価制度は特定秘密を扱う国家公務員らが情報を漏らすおそれがないかどうかを政府が事前にチェックする制度だ。
 現在の特別管理秘密を扱わせるかどうかの評価対象となっていたのは、防衛省、外務省、警察庁などで働く国家公務員約6万4500人だった。
 しかし、特定秘密保護法では都道府県の警察職員や防衛産業などで働く民間人も含まれるため、対象者の数は格段に増える。多くの人のプライバシーが侵害されるということだ。
 今の国家公務員約6万4500人の評価も再度行われる。評価の内容は、借金がないか、病気はないか、男女関係、配偶者以外に親密な異性がいないかなどまでチェックをされる。
 さらに、現在自衛隊員等に対して行われている、配偶者や父母子、兄弟、姉妹、配偶者の親、家族以外の同居人に対して、住所、氏名、生年月日、国籍、犯罪・懲戒歴、情報の扱いにかかわる違法行為歴、薬物の乱用・影響、精神疾患、飲酒の節度、信用状態や経済的状態のチェックが、対象者全員に行われる。しかも5年ごとに再調査が行われるといわれている。
 また、この適性評価制度には医師が非常に深くかかわることになる。たとえば、患者に調査対象がいた場合、本人の同意がなくてもカルテに記載したことについて照会を受けると、回答する義務があるとされている。これは国会でも、はっきりと明言をされた。
 また、防衛産業で働く民間人も調査対象になる。民間人の場合、調査に応じるかどうかは形の上では自由になっている。しかし、調査を拒否した場合には、調査を拒否したことが使用者側に通知されるので、その業務に従事ができなくなり、たとえば解雇をされる場合も十分あり得る。

特定秘密保護法廃止のために

 これほど問題の多い特定秘密保護法だが、成立してしまった。ではどうすればいいのか。
 私たちは、この問題は憲法9条が変えられることに直結する問題だと位置づけて、「本番」並み、つまり、憲法改定の国民投票がいよいよ近いというたたかいとしないといけないと考えている。
 確かに特定秘密保護法は法案が提出されてから国会での審議時間が非常に短かったため、反対する側も出遅れた面がある。これからは、このたたかいを終わらせないことが非常に重要だ。
 今後も、反対のパレードをしたり、街頭宣伝を続けていきたい。それから、法律を廃止するためには国会請願を行う必要もあるから、署名運動を始めた。
 確かに両院で圧倒的多数を持っている自公政権下では大変だが、粘り強い運動で、何とか施行までの1年以内にこの法律を廃止したいと思う。
 ぜひ、先生も患者さんも含めて、この法律が日本国憲法下の日本にあってはならない憲法違反の法律であるということを大きく広げていただきたい。国家公務員やジャーナリストだけではなく、一般の市民の人権と生活に非常に大きな影響を与える法律であるということをぜひ説明していただきたい。

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