兵庫県保険医協会

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専門部だより

政策宣伝広報委員会だより

特集 総選挙 政策座談会 大企業応援からいのち守る政治へ

2014.12.15

 

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司会 加藤擁一副理事長

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武村義人副理事長

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川西敏雄副理事長

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池内春樹理事長

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西山裕康副理事長

 政策部では総選挙に向け、安倍自公政権の2年間の総括と各政党の総選挙向け政策を検討するため、政策座談会を行った。参加者は池内春樹理事長、武村義人・川西敏雄両副理事長、西山裕康政策部副部長(副理事長)。司会は加藤擁一政策部長(副理事長)が務めた。

 加藤 急きょ衆議院の解散が決まった。安倍政権の2年間を総括したい。
 武村 医療・介護総合法の成立、集団的自衛権の行使を容認した閣議決定、原発再稼働、消費税の再増税などへの国民的批判の高まりをみて、今後、支持率は下がる一方だから、今のうちに解散総選挙をと判断したのだろう。国民の声が解散に追い込んだのだと思う。
マイナス改定に患者負担増計画
 加藤 では具体的に政策を見ていきたい。まず、社会保障政策はどうか。
 川西 診療報酬の事実上のマイナス改定が最も大きな問題だ。政府は社会保障の充実を理由にして消費税増税を強行したが、あれはウソだった。少なくとも診療報酬には全く回らなかった。
 武村 それどころか、消費税増税で医療機関の損税が増えて、経営は苦しくなった。今年の会員意見実態調査でも医業収入は減る一方で、経費が増えているとの回答が最も多かった。
 西山 経済界には賃上げを要求し、300万人といわれる医療従事者給与の原資である診療報酬を抑制するのは矛盾している。また、改定内容も問題が多い。特に同一建物居住者にかかわる在宅医療の評価が大幅に引き下げられたのは、ニーズに応えて在宅に力を入れてきた医療機関では影響が大きく、会員からも悲鳴が上がっている。政府が、進めてきた入院から在宅への流れに逆行している。
 加藤 診療報酬改定以外ではどうか。2013年に発表された「社会保障制度改革国民会議報告」から、昨年に「社会保障改革プログラム法」、今年「医療・介護総合法」が成立した。
 池内 最も大きな問題は、これまで国民の生存権保障のために社会保障制度を充実させる責任は国にあるとしてきたのを、国の責任を後退させて、まずは自分の力で何とかしろとしてしまったことだ。国民運動で長らく実施をストップさせてきた70歳から74歳の医療費窓口負担の1割も、2割への負担増を強行した。
 西山 医療・介護総合法では、介護でも負担増が実施される。年金収入の年額が280万円以上の利用者の自己負担が現在の1割から2割に引き上げられた。これは、65歳以上の5人に1人が対象となる。さらに、一定の資産のある人には、施設介護サービスの居住費や食費に対する補助を行わないことも決まった。
 池内 その時の厚労省の説明はひどいものだった。厚労省は、対象となる年金収入359万円の高齢夫婦について、年に約60万円が残るから負担に耐え得ると説明してきたが、実際の平均可処分所得は197万円にすぎないことが明らかになり、厚労大臣が根拠を撤回する事態に発展した。
 川西 根拠が崩れたにもかかわらず、法の成立を強行した与党は許しがたい。

県知事が進める医療提供体制縮小
 加藤 医療・介護総合法の問題は負担増だけではない。病院や介護施設への患者や利用者のアクセスを制限しようとしている。
 西山 各病院が病床機能を都道府県知事に報告するという「病床機能報告制度」が実施される。それを元に策定した「地域医療ビジョン」を実行するため、知事が各医療機関に対し、医療機能の転換、新規開設・増床の中止などを要求できるようにし、従わない場合、補助金・公的融資の対象から除外するとしている。県の権限が強くなり、首長や議員の選出が重要になってくる。これはチャンスでもありピンチでもある。
 武村 「地域医療ビジョン」に盛り込む、必要な病床数などは厚労省が定める計算式に基づくので、病床削減が行われる可能性が高い。今回の診療報酬改定でも、「7対1」の急性期病床を減らすために、要件を厳格化した。
 川西 結局、患者を病院に入院させずに、医療費を抑制しようとしているのだろう(図1)。
 加藤 介護分野でも、特別養護老人ホームの利用を「要介護3」以上の人に限定した。さらに、「要支援者」への予防給付を介護保険の給付対象外とし、市町村が住民のボランティア活動などを利用して提供することになった。過疎と高齢化による人手不足と財源不足のため、受け皿のない自治体がほとんどだ。
 池内 今でも、介護施設に入れない人がたくさんいる(図2)。政府は施設に入れる人を限定するのではなく、先進国並みに介護施設を整備すべきだ。
 加藤 選挙の結果と今後の社会保障政策はどう関連するのだろうか。
 西山 政府はさらに医療、社会保障制度改悪を続けるつもりだ。患者負担増だけでも、受診時定額負担の導入、漢方薬や風邪薬、湿布薬等の保険外しなどが目白押しだ。財源不足を「受難者」である患者に求めるのは、社会保険の原則に反する。また、都道府県ごとに医療支出目標を定め、医療費を抑制することまで議論している。
国民生活切り捨てのアベノミクス
 加藤 首相が総選挙の争点だと言っている経済政策についてはどうだろう。
 池内 経済政策とはいうものの、内容は「大企業応援メニュー」ばかりだ。
 武村 金融緩和で円安誘導を行っているが、それで恩恵を得たのは、輸出大企業だけ。円安で生活必需品の値段が上がり、国民の生活は苦しくなっている。患者さんとの会話でも生活が楽になったという話は聞いたことがない。
 西山 金融緩和でだぶついた資金は株式市場に流れて、株価は値上がりしているそうだが、庶民には関係のないことだ。恩恵があるのは多くの株式を保有する大企業や富裕層だけだ。
 川西 株が、政府の資金で買い支えられているのは問題だ。政府はさらに株高を維持するために、年金基金での株式運用分を増やすとしている。国民の大切な老後資金を投機的な市場に流し込むことは危険で、国民の意見も聞いていない。
 加藤 ムダな公共事業も復活している。景気を支えるための公共支出自体は悪いことではないが、使い方が間違っている。東京オリンピック関連のハコモノなどが中心で、潤うのは一部のゼネコンだけだ。
 武村 公共投資を増やすのであれば、震災復興や生活に密着した施設の建設とし、地方再生も、地方が必要としている高齢化・少子化対策としての社会保障で行うべきだ。
医療の営利産業化もたらす
 武村 最も問題なのは規制緩和だ。安倍首相は「いかなる既得権益も、私のドリルの刃の前では無傷ではいられない」などと述べ、規制緩和のターゲットには医療も挙げられている。
 加藤 すでに混合診療に道を開く「患者申出療養」制度の創設が決まってしまった。全国に100程度ある特定機能病院でも、混合診療を行うことができ、混合診療が拡大され、格差医療が当たり前になる可能性がある。
 西山 会員意見実態調査でも、患者申出療養、混合診療の全面解禁には「反対」との回答が「賛成」よりも多く、多くの会員が医療の営利産業化に反対を唱えている。
 川西 混合診療が全面解禁されれば、安全性や有効性のない薬品や治療技術が使われることにもなりかねず、目の前の利益のために国民の命と健康を危険にさらすことなる。
 池内 推進しているのは日米の財界だ。彼らの目的は公的医療保険で扱うべき医療の範囲を縮小し、その分を自由診療に移し替えて儲けの対象にすることだ。
 加藤 結局、政府の経済政策は安倍首相が公言している「日本を世界で一番企業が活動しやすい国」ことであり、国民の生活を良くすることではない。
破たんした「トリクルダウン」
 武村 確かに、安倍自公政権の経済政策は大企業にとっては非常に都合のよいものらしい。この間、円安で儲けた輸出大企業や株高で儲けた証券会社、安倍首相の「トップセールス」で儲けた商社などが軒並み自民党への献金を増やしているそうだ。
 池内 大企業が賃金を引き上げずに献金額を増やして、「カネで政策を買う」ことは許されないと思う。
 西山 政府はいまだに大企業が儲かれば、労働者や中小企業にも恩恵があるという「トリクルダウン」を主張しているが、先進国での実証性はない。実際アベノミクスの経済政策で、大企業の経常利益は過去最高となっているが、国民の賃金は増えるどころか、物価高の影響で実質マイナスだ。社会保障の充実による所得再分配が重要だ。
 川西 ところが、政府はさらに法人税を引き下げると言っている。国民には社会保障制度の改悪や消費税で負担を増やし、大企業には減税というのはさらに格差を拡大させる政策だ。
「原発ゼロを」国民の声を無視
 加藤 原発政策についてはどうだろう。
 武村 露骨に再稼働を進めようとしている。しかし福島では、今なお12万人が故郷を奪われ避難生活をしており、原子炉の冷却水は漏れ続けている。事故原因の解明も進んでいない現状で、再稼働をするべきでないというのが多くの国民の気持ちだろう。
 西山 会員意見実態調査でも74.4%が「原発をなくすべき」と答えている。
 川西 関西電力・大飯原発3・4号機の運転差し止めを命じる福井地裁の判決では、個人の生命を守り生活を維持するという人格権の侵害の危険性という観点から、原発の「稼働は、憲法上は人格権の中核部分より劣位におかれるべきもの」と述べ、再稼働を認めないとした。政府も判決を踏まえて、原発再稼働中止はもちろん、原発ゼロの立場に立つべきだ。
近隣諸国を威嚇し米国いいなり外交
 加藤 政府の外交政策はどうだろう。尖閣諸島や慰安婦問題、首相の靖国参拝などで、中国や韓国との関係は悪化している。
 武村 一方で、特定秘密保護法制定、集団的自衛権行使容認の閣議決定が行われ、自衛隊の予算は右肩上がりだ。
 池内 中国の脅威を煽って、日本の軍事力を制度的にも、装備的にも強くする方向性が強く打ち出されているが、紛争を軍事力でなく話し合いで解決しようとする世界の流れに逆行しているのではないか。
 加藤 私たち医師にとっても他人事ではない。2005年に設けられた国民保護法に基づいて厚労省が制定した「厚生労働省国民保護計画」では、「厚生労働省医政局は、必要に応じ、医師を確保し救護班を編成するものとする」とされており、ひとたび、武力衝突が起きれば民間の医師も動員される。
 西山 特定秘密保護法でも、秘密を扱える人物かを評価する適性評価には、基準として精神疾患に関する事項などが設けられており、国から照会を受けた医師には回答義務があるとされている。これに対し、精神神経学会が「精神疾患や精神障害に対する偏見、差別を助長し、患者、障害者が安心して医療・福祉を受ける基本的人権を侵害する」と反対をしているのはもっともなことだ。
 川西 集団的自衛権行使容認の閣議決定も大きな問題だ。他国の攻撃から日本を守ることは、個別的自衛権で対応できる。集団的自衛権とは、直接関係のない第3国間の紛争に日本も参加できるという権利だ。
 加藤 これまでの歴代自民党政権の憲法解釈でもできないとしてきた集団的自衛権の行使容認を、国民的議論、国会での審議もないまま、閣議で決めてしまうのは本当に恐ろしい。
 池内 安倍自公政権の下で行われた安全保障法制のほとんどは、アメリカの要請を受けたものだ。背景には世界中で行う軍事行動に日本を参加させたいというアメリカの思惑がある。
 西山 確かに、政府は沖縄の米軍普天間基地の辺野古移転も「抑止力」を理由に強行しようとしている。抑止力の妄信が紛争を呼びこむことは、歴史が証明しているのではないか。
 池内 沖縄では、辺野古移設反対、普天間基地の無条件撤去を掲げ、沖縄協会の要請を受けて協会としても応援した翁長雄志氏が知事選挙で勝利した。政府は沖縄県民の声に耳を傾けるべきだ。
 川西 やはり、アメリカのいいなりに日本を海外に派兵できる国にするのには反対だ。それよりも中国や韓国と協調し、安定した東アジアをつくるべきだ。
あきらめずに選挙権行使を
 加藤 ここまでの議論で確かに大企業・アメリカいいなりのひどい政治が行われているといえるが、これに対抗する野党はあるのだろうか。
 武村 野党も頼りない。そもそも、消費税増税、社会保障改悪は民主党政権が自公両党と「3党合意」の上で進めたものだ。民主党は自民党との対決姿勢を強めているが、やはり信頼はできないと思う。
 西山 維新の党や次世代の党は、自民党の「規制緩和」を「かけ声だけに終わっている」と批判している。規制は弱者を守るためにもある。もし、これらの政党の議席が今回の選挙で増えれば、自民党と一緒になって社会保障改悪をしかねない。
 川西 生活の党や共産党、社民党はリベラルな政党として、社会保障の充実や消費税増税の延期ではなく中止、原発ゼロなどを掲げている。こうした党が一定の勢力をもって、政府にブレーキをかけるのが理想ではないか。
 西山 確かに、安倍自公政権とその応援団だけの国会は、来年の重要政策の決定を考えると危険だ。
 加藤 報道では、今回の選挙でも自民党が勝利すると言われている。しかし、自民党が大幅に議席を減らせば、党内でも安倍首相の責任を問う声が大きくなるのは間違いない。そうなれば、少しは国民の声を聞いたり、野党の批判を受け入れたりするだろう。
 西山 そのためにも「どうせ自民党が勝つだろう」と思わずに、意思表示をしてほしい。選挙は国民主権を行使する最も大切な権利だ。自分で考えて投票すれば、どの候補でもいいと思う。それをきっかけに自分が投票した候補や政党がどういった政策を掲げて、国会でどういう活動をしたのか興味がわくはずだ。それが、政治への関心を膨らませることになり、政治的民度の高い国になる。無投票は現状の追認ではないだろうか。
 池内 この選挙には「大義がない」と言われる。確かに、安倍首相がこのタイミングで衆議院を解散し、600億円の税金を選挙に使うのは「無駄遣い」との批判も分かる。しかし、首相に大義はないかもしれないが、国民には政権の暴走をストップさせるという大義があるはずだ。この2年間で政府がしてきたこと、各党の主張をよく考えて、ぜひ投票に行ってほしい。
 加藤 今日はどうもありがとう。
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