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主張 介護報酬マイナス改定 医療者も介護充実に声上げよう

2015.02.25

 本年4月の介護報酬改定で、社会保障審議会はマイナス2.27%とする改定案を塩崎恭久厚生労働相に答申した。
 引き下げの根拠は、社会福祉法人の内部留保額や介護サービスの収支差率の高さである。大企業の内部留保や利益率に目をつぶり、「公的」保険の担い手である介護事業者と収益性の低い中小企業を、詳細な検討のない大雑把な数値で比較するのは乱暴である。
 そもそも介護事業は慢性的な人手不足である。今回、介護職員処遇改善加算として月1万2千円を手当てするとしているものの、賃金は全産業より平均で月10万円も低い。労働環境・処遇が悪いため、求人倍率と離職率が高い。
 人件費率の高い介護事業では、経営状況の悪い小規模事業者は人件費を抑制せざるを得ないため、賃金水準の引き下げ、賞与カット、新規採用の抑制、非正規職員への切り替え等が起こりうる。人材不足対策として、介護職の資格要件緩和や、外国人にも門戸を広くする施策も用意されているため、低賃金、低経験、低技能、過重労働にいっそう拍車をかける。
 一方、「医療・介護総合法」では、要支援1,2の訪問介護、通所介護を地域支援事業とし、市町村が自由に価格や内容を決定できるが、総費用の抑制が目標であるため、サービスの単価か回数か時間か内容を下げざるを得ない。設定単価によっては営利事業者が手を引き、NPOやボランティア等に任されることになるが、そうした担い手のいない地域も多い。
 また、特別養護老人ホームへの入居も原則要介護3以上となる。特養は比較的低額なため、入居待機者が多いが、介護職員の確保が困難なうえ、マイナス改定では、参入にもブレーキがかかり、実際建設計画を中止した自治体も多い。
 総合法と診療報酬改定により、病院は病床削減、在院日数短縮、高い在宅復帰率が求められる。
 一方、患者退院後の受け皿として、介護保険制度の充実がうたわれているが、総合法と今回の介護報酬マイナス改定で、急増する高齢者に対し、充実した質の高い、きめ細かい介護サービスが提供できるのだろうか。家族の介護を理由とした離職も年間10万人とされる。「高齢者の尊厳と自立」「介護の社会化」に逆行した、「寝たきりと孤立死の増加」「介護の家庭化」が進む危険性が高い。
 介護の「確保」は国家の責任であり、目先のお金と数字にとらわれた改定は介護崩壊を生じさせかねない。そして、介護は医療と不可分であり、「社会的共通資本」としての介護にも関心を持ち、その改善に声をあげよう。

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