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統一地方選特集 政策解説(下) 国の抜本的支援なき国保の都道府県化

2015.04.05

 3月3日に閣議決定され、国会へ提出された「持続可能な医療保険制度を構築するための国民健康保険法等の一部を改正する法律案」では、国民健康保険も制度の変更が検討されている。統一地方選挙にあたっての政策解説第3回目は、この制度変更でどのような影響が出るかについて取り上げる。
 

脆弱な財政基盤

 国民健康保険(国保)は現在、市町村を保険者として運営されている。しかし、国保加入者は65歳以上の高齢者や、無職の者を含んだ低所得者を中心として構成されている。にもかかわらず、国はここ30年の間に実質的な国庫負担率を半減させてきた。その代償として保険料(税)は年8万円以上に倍増している。
 国や市町村の減免制度が存在しているが、制度を利用してもなお高額のために、保険料を払いたくても払えない状況となり、滞納や、それによる差し押さえが起こるなどといった現状がある(表1)。

保険料の高騰と医療費抑制の圧力

 厚労省は「国保の都道府県化」を打ち出し、2018年度から実施するとした。財政単位を都道府県とすることで財政に余裕ができ、加入者が少ない負担で安心して医療を受けられるようになると説明されているが、本当だろうか。
 国保の都道府県化では、現在の市町村ごとではなく、都道府県を財政運営の主体として、財政基盤の「安定化」や事業の「効率化」を進めるとしている。一方で保険料率の決定や徴収などの国保業務は市町村が引き続いて担当する。
 都道府県化にあたっての大きな変更点は「分賦金方式」の導入である。従来は市町村ごとに保険料が決定されていたが、分賦金方式では、県が県内の医療費の収納必要額を算出し、市町村ごとに、県に納める額である分賦金を定めるとしている。市町村はこの分賦金を賄うために必要な保険料を定め、加入者から徴収することになる。
 都道府県への移行によって、県は各市町村間の保険料の格差をならしていくことが見込まれる。現在、市町村の一般財政からの繰り入れによって保険料を低く抑えている自治体では、繰り入れが廃止されることにより、保険料の高騰が懸念されている。
 また、分賦金の額は各市町村の医療費の実績によっても決定される。医療費が高くなると、自動的に分賦金が高くなり、保険料に跳ね返ってくる。保険料を低く抑えるために、医療費抑制の圧力がさらに高まることが懸念される。

新たな予算なき国の「国保支援」計画

 現在、各市町村は高すぎる国保料を是正するために、それぞれ独自に一般会計からの繰り入れを行っている。その総額は、全国でおよそ3500億円であるが、都道府県化によってこの繰り入れをなくすことが見込まれている。厚労省は、その代わりに2017年度までに、国が新たに毎年3400億円の追加支援を始めるとした。しかし、この支援は、現在の市町村による繰入総額よりも少ない。これでは高すぎる国保料の是正や、財政の立て直しにつながるとはとても言えない。
 そもそも国が示した3400億円の国保支援の財源は、1700億円が増税した消費税から充てられる分で、残り1700億円は協会けんぽにあてていた国庫補助2400億円を削減して、その中から国保に回すという予算の付け替えにすぎず、国が新たに予算を拡充して行うものではない。協会けんぽの財政問題も含めて国保の財政基盤の安定化を主張するのであれば、新たに予算を確保して国保への抜本的な財政支援を行うべきである。

6割が保険料減免世帯

 協会は、昨年12月1日時点での国保保険証交付数、資格証明書、短期保険証の発行、減免制度、差し押さえ件数などについて県内全市町にアンケートを行った。
 県全体の国保保険証の未交付率は3.17%と昨年の5.79%から改善がみられた。市町別では姫路市が10.1%と、1割を超える世帯に保険証が交付されていなかった(表2)。
 保険料滞納世帯に対しての、有効期間の短い短期保険証の交付は4万8887件と、前年度より減少し、5万件を下回ったものの、被保険者世帯比では5.95%と、依然高い水準となっている(図1)。
 窓口でいったん全額自己負担しなければならない資格証明書交付は7108件、被保険者世帯比では0.86%となっている(図2)。
 保険料減免制度利用世帯割合は国による減額制度の利用が41万620世帯で、全体の49.96%とほぼ半数に上った。また自治体独自の制度の利用数は8万1522世帯で全体の9.92%となり、国による減免制度と合わせると国保加入世帯の6割近くが減免世帯となった(図3)。
 保険料の滞納は13万9854世帯で、全体の17.02%に上った。加入者の6人に1人が滞納していることになる。また滞納世帯のうち、61.39%にあたる8万5860世帯が、1年以上の長期の滞納となっている。
 また、保険料の滞納による差し押さえが6047件となった。差し押さえ件数はここ2年間、毎年1000件以上の増加が続いている(図4)。各市町でこのような強制的な徴収が、今後より強められていく恐れがある。

国保は社会保障の柱国庫負担率元にもどせ

 このような兵庫県下のアンケート結果からも、国保料が高すぎて払いたくても払えない人が、短期保険証や資格証明書の交付を受けたり、滞納によって差し押さえを受けている現状が明らかとなった。
 国保の都道府県化により各市町村からの財政支援が原則なくなることで、国保料のさらなる高騰が起こり、これらの件数がさらに増える恐れがある。アンケートでは県下41市町のうち36市町が「国は補助をさらに増やすべき」と回答した。国保は、市民の助け合い制度ではなく、国の社会保障制度の大切な柱の一つであり、国には責任を持って安定した運営を行う義務がある。
 これ以上国保料負担を増やさないためにも、国が責任を持って国庫負担率を元にもどすことが、国保加入者と各市町の双方から求められている。協会も国の財政政策の転換を求めていく。

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