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主張 診療報酬改定 プラス改定で社会保障充実と景気回復につなげよ

2015.12.15

診療報酬改定が目前に迫っている。財政制度等審議会は、社会保障費の伸びを5000億円弱に抑える意見書を提出した。
 概算要求では社会保障費は15年度より6700億円増えており、意見書実現のためには、1700億円を削らなければならない。狙われるのは診療報酬改定であり、診療報酬だけで国庫支出を1700億円減らすためには約1.5%の引き下げが必要となる。
 意見書は「骨太の方針2015」に依っており、赤字国債の主因は「社会保障の受益と負担の不均衡」にあり、財政健全化と社会保障改革は「表裏一体」であると、旧来のまやかし論を繰り返している。
 診療報酬のマイナス改定が「患者窓口負担と保険料負担を下げる」との論も見受けられるが、窓口負担は「受益者」ならぬ「受難者」負担である。「負担の不均衡」を指摘するなら、逆進性の高い消費税や保険料率の格差を放置した財源構造こそ問題である。社会保障の原則「能力に応じて負担、必要に応じて給付、結果として所得再分配を伴う」を徹底すべきである。
 そもそも財政赤字の原因は、法人、富裕層への減税と経済失政による税収低下であり、社会保障のせいではない。社会保障費の高い欧州諸国の財政状況をみれば明らかである。
 景気のけん引役は不在で、GDPは連続減、ワーキングプアは史上最多の1139万人、個人消費は停滞し、社会保障への将来不安と消費税再増税が景気回復へ悪影響を及ぼすことが、主要企業を含めた国民の共通認識となりつつある。
 政府与党は、企業に賃上げを繰り返し要求し、最低賃金の引き上げに加え、企業の内部留保に課税する発言まで財務大臣などから飛び出している。
 300万人の医療従事者の原資である診療報酬のマイナス改定は、労働集約型の医療において、雇用、賃金、消費を抑制し、政府の目標であるGDP拡大、景気回復に一層のブレーキとなるであろう。
 社会保障分野の総波及効果、雇用誘発効果は決して低くない。市場規模は60兆円を超す国内最大級の産業であって、サービスを必要とする人は増え、提供する人は不足している。何より国民は景気の回復と社会保障の充実を切望している。今、この産業に投資しない理由はない。
 診療報酬の改定は、マスコミの言うように「医療経営者の収入増加」や、「財務省と業界団体+族議員の攻防」などという近視眼的な問題ではない。欧州諸国のように、成熟した国家は、社会保障の充実で経済成長が可能なのである。高齢化のトップを走る日本は、正しい解答を世界に示すべきである。
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