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第88回評議員会 特別講演「新自由主義の自滅」 日本を福祉型資本主義の国に 日本金融財政研究所 所長 菊池 英博氏

2016.01.05

昨年11月15日に日本金融財政研究所所長の菊池英博氏を招いて開催した、第88回評議員会特別講演「新自由主義の自滅」の講演録を掲載する。(文責:編集部) 
 

新自由主義が出てきた背景

 新自由主義とは何か。創始者は、米国の経済学者ミルトン・フリードマンである。彼はユダヤ移民の子で1912年、ニューヨークで生まれた。コロンビア大学で博士号を取得し、シカゴ大学で教授として新自由主義思想に基づく経済理論を樹立した。
 新自由主義の特徴としてあげられるのが市場原理主義で、新自由主義の経済面での行動基準である。新自由主義の目標は「国家全体の富を1%の富裕層と大企業に集中する」ことだ。そこから、富裕層や大企業による投資や消費が経済を成長させるという、トリクル・ダウン理論も導かれる。
 もう一つの特徴として、信奉者は、目的のためには政治権力と結託し、手段を選ばず富を収奪するという点が挙げられる。米国の経済学者で新自由主義に批判的なジョセフ・スティグリッツは彼らのことを「レント・シーカー」と呼んだ。「レント」とは「利権」、「シーカー」は「追い求める人」という意味だ。
 実際、米国はチリなどの南米の左派政権諸国にCIAなどを介入させて新自由主義政権を樹立し、短期間に規制緩和政策をとらせ、その国の富を収奪した。
 こうした事例はカナダの女性ジャーナリストであるナオミ・クラインの『ショック・ドクトリン』にくわしい。「ショック・ドクトリン」とは、クーデターや大災害など、社会に混乱が生じた時に一挙に重要なことを決めてしまうことで、まさに新自由主義者が各国に新自由主義を持ち込む際のやり方だ。
 戦後、米国では戦前の大恐慌への反省から、自由放任資本主義がもたらした弊害を除去しようという機運が高まった。
 そこで、安定した資本主義が継続するためには、経済成長と経済的平等を両立させる必要があると、法人税と所得税をともに累進課税とするなど、所得の再分配により資本家の富を労働者に配分する政策をとり、50年代、60年代の経済成長を実現した。
 ジョン・ケネス・ガルブレイスが58年に書いた『豊かな社会』という本の中では「自由放任の古典的資本主義がもたらした貧困・不況・格差(不平等)はもはや過去のもの」とさえ表現されている。
 しかし、これに反発したのが「ネオコン(ネオ・コンサバティブ=新保守層)」と呼ばれる富裕層と大企業だ。彼らは、ケインズ型の経済政策は一般庶民に有利とし、自分たちの富を一般庶民に配分しないことを正当化できる経済理論の必要性に駆られた。
 そこで登場したのが、新自由主義である。

新自由主義政策の基本的理念

 新自由主義の基本的理念として市場万能主義、小さな政府、金融万能主義が挙げられる。
 市場万能主義は、自由な市場は価格機能によって資源の最適配分ができるようになるから、自由市場が富をもっとも効果的に配分するというものだ。だから自ずと公平や平等の理念は否定されるし、格差についても是認するという立場をとることになる。
 小さな政府というのは、市場万能主義を実現するには、政府機能を縮小する必要があるというものだ。だから、必然的に累進課税や社会保障制度は否定される。そして、富裕層に富が集中すれば経済が成長し国家が栄えると主張する。
 この根拠となるのが、トリクル・ダウン理論である。トリクル・ダウンとは「滴り落ちる」という意味で、富裕層に富を集中すれば、富裕層は消費し投資するので、中間層以下の庶民は「おこぼれ」を頂戴できるという理論である。
 もう一つ根拠となるのが、ラッファー理論である。これは所得税を引き下げるとその分、所得が増えるので、国民は従来よりもよく働き、税収が増えるというものだ。
 この二つの根拠から、所得税と法人税の最高税率の大幅引き下げが導き出され、「小さな政府」という考え方が生まれた。
 しかし、これらはスティグリッツによれば、「いずれも立証性に乏しい政治的スローガンに過ぎない」といわれている。彼は、クリントン大統領の時代に大統領経済諮問委員会の委員長をしていた。その際、こうした理論を否定して増税(所得税と法人税の最高税率引き上げ)し、所得再分配機能を充実させた。その結果、米国の財政赤字は改善し、景気も改善した。
 昨年、来日しブームとなった、フランスの経済学者トマ・ピケティも、これらの新自由主義経済学の理論について根拠がないとはっきり言っている。
 さて、新自由主義は累進課税を否定するが、その結果持ち込まれるのは、フラット税制だ。これは所得の多寡に関係なく、税率は一律何%とする税制のことだ。日本でも小泉政権の時代、地方税に持ち込まれた。すでに、こんな税制は増収に結びつかないというのは米国の失敗で明らかだったにも関わらず、導入してしまった。結果、地方の税収は減り、現在の地方疲弊の一因になっている。
 次に、金融万能主義だが、これは「マネタリズム」とも呼ばれ、経済政策は金融政策だけでよいとし、財政政策の効果を否定するものである。
 これはフリードマンが、「大恐慌」から米国が抜け出した理由を「金融緩和」によるものだといって導き出したものだ。しかし、これは偽証だ。実際、フリードマンの弟子でFRB(連邦準備制度理事会)議長を務めていたベン・バーナンキは、金融緩和だけでは経済をよくすることはできないと言って、14年にFRB議長を辞任にしている。
 フリードマンが「金融万能主義」を導き出したのは、「大恐慌」から米国が立ち直った契機を、F・ルーズベルト大統領が金本位制から離脱し、金融緩和を行ったことに求めていることによる。しかし、これは誤りで、ルーズベルトは財政政策によって有効需要をつくり、金融緩和でそれをファイナンスしたことで「大恐慌」から立ち直ったというのが真実だ。

新自由主義の歴史

 新自由主義が実際の政策として採用されていく歴史をみていく。
 米国は60年代、70年代のベトナム戦争による財政赤字と70年代初頭の石油危機による石油価格の高騰で、スタグフレーション(不況下での物価高)に陥った。解決策として採られた手段が新自由主義だった。確かに市場に任せることでスタグフレーションは収束したが、一方で失業率が急上昇し、高止まってしまった。
 英国でも79年にサッチャー政権が成立すると財政赤字を解消するとして、新自由主義が導入された。サッチャーは社会保障費や医療費を削減し、組合をつぶした。また、法人税や所得税を引き下げ、消費税を引き上げた。しかし、その帰結として、財政赤字は縮小するどころか拡大した。
 米国でも81年にレーガンが大統領に就任すると、本格的な新自由主義政策が採られ、法人税の最高税率をそれまでの50%から30%へ、所得税の最高税率を70%から28%へ低下させた。結果、85年には、財政と貿易収支の双方が赤字になり、米国は債務国へ転落した。米国が1918年に債権国になって以来、67年ぶりのことだった。ここに米国の不幸の原点がある。
 結局、新自由主義者たちは本来、適正な税率によって政府に入るべき税収を大幅な減税によって富裕層に移し、国家財政を赤字にさせて米国を債務国に転落させてしまったのだ。

ワシントン・コンセンサス

 さて、ここからは米国による新自由主義を海外諸国に強制し、海外の富を収奪するための手段であるワシントン・コンセンサスについてみてみる。
 ワシントン・コンセンサスとは、自由化・規制緩和・民営化・小さな政府などの新自由主義的概念を、累積債務を負った途上国に対し、米国の影響下にあるIMF(国際通貨基金)などが融資や返済猶予と引き替えに、政策として強制するものである。
 これは、「新帝国主義」といってもいい。97年に始まったアジア通貨危機がその典型である。この通貨危機は米国が仕掛け人だとも言われており、自国通貨を買い支えることができなかった韓国などアジアの国々は、IMFの管理下におかれ、変動相場制やその他、ワシントン・コンセンサスを受け入れさせられた。
 日本に対しては、米国は94年から毎年、新自由主義による日本改造計画ともいえる「年次改革要望書」を送り、小泉構造改革や安倍首相の成長戦略を実行させ、郵政民営化などで日本の富を収奪している。

新自由主義の帰結

 結局、新自由主義は何をもたらすのか。
 新自由主義政策を採った米国や英国では、財政赤字が拡大し、米国は債務国へ転落してしまった。また、所得の格差が広がり、一部の富裕層とそれ以外の貧しい国民という国民の分裂を招いてしまった。
 さらに、たちが悪いのは、新自由主義では持続的な経済発展はできず、たび重なる経済危機が起こっていることだ。その都度、大企業やその株を大量に保有する富裕層は、政府に支援を要請している。つまり、小さな政府などといっておきながら、実際には自分たちの都合で政府を頼るという「まやかし」が横行しているのだ。

米国の所得格差

 米国では、この28年間の物価の上昇率は約80%だ。そして、所得全体の平均の伸びが62%なので、平均所得の伸びは物価上昇に追いついていない。
 しかし、それぞれの所得階層に分けてみてみると、上位1%の最富裕層は275%も所得が伸びており、物価上昇よりも所得の上昇率が高い。それ以外の層では最富裕層1%を除く上位20%の富裕層ですら所得の伸び率は65%で、物価上昇を下回っている。
 さらに、上下2割を除く6割の層の所得上昇率は37%に過ぎず、まさに中間層が没落しているといえる。下位20%の層は28年間でわずか18%の所得上昇しかしていない。これはジョージ・W・ブッシュが大統領を務めた8年間、ずっと最低賃金が据え置かれたことなどに由来している。
 まさに、新自由主義のもとでは1%の富裕層にしかマネーは回ってこないのである。日本でもこのようなことが進んでいる。

「妖怪」の日本への波及

 新自由主義の日本への波及をみていこう。
 81年に当時の中曽根康弘首相とレーガン大統領が会談を行った。このときに決まったのが日本国有鉄道(現在のJR)と国際電信電話(現在のKDDI)の民営化である。これは国有企業の民営化という新自由主義の典型的な政策だ。
 94年のクリントン大統領と宮沢喜一首相の会談を契機に、米国は市場開放、規制緩和を具体的に求める「年次改革要望書」を日本に突きつけるようになった。この「年次改革要望書」は当初から在日米国大使館のウェブサイトで公開されていたが、日本政府は公開していなかった。在日米国大使館は記者会見を開催して内容をマスコミにも明らかにしていたが、日本ではどのメディアも取り上げなかった。その存在を政府が公式に認めたのは、09年に当時の麻生太郎首相が、国民新党の下地幹郎議員の質問に答えたのが初めてである。
 08年には「年次改革要望書」はなくなったが、10年・11年には日米経済調和対話の要望書として復活した。そして、これに盛り込まれていたのが、TPP参加への要請である。
 小泉構造改革は、こうした米国の要望をそのまま実行に移したものである。具体的には緊縮財政や金融緩和、時価会計の導入、労働法改悪による非正規労働の蔓延、郵政民営化などだ。
 さて、この郵政民営化は米国による「日本財布論」の具体化の典型である。「日本財布論」とは、米国の一部で言われているもので、日本の金を米国のために使おうというものだ。
 郵政民営化では、もともと郵便局が集めた郵便貯金は日本国債や地方債を購入したり、特殊法人に融資され、地方の景気を支えていた。これが民営化されると、米国の国債購入や米国の投資銀行に運用されるようになる。そうして、日本のお金が米国によって使われることになる。
 現在の安倍内閣の金融緩和と成長戦略も、同様に米国いいなりの新自由主義政策である。金融緩和でだぶついた日銀マネーは米国に投資されているし、成長戦略はその中身をみれば、労働規制や農業、医療分野などでの規制緩和が目白押しである。

地方への影響

 こうした日本での新自由主義政策は何をもたらしたのか。
 地方への影響から見ると、小泉構造改革が始まる00年と10年を比較すると、地方向けの「地方交付税交付金」「補助金」「公共投資」は合計で75兆円も減らされている。
 自民党は「一億総活躍社会」「地方創生」などと言うが、これでは地方が疲弊するのも無理ない。

日本経済への影響

 図1は日本のデフレーションが始まる97年を100として、各国の名目GDPの推移を指数化したものだが、日本は主要国のなかで唯一のマイナス成長だ。一方、米国は1.95倍、英国は1.84倍、ユーロ圏1.64倍となっている。
 また、日本のデフレーターの推移をみてみると、累積で17.8%もデフレになっている。これだけ私たちの富が奪われていることになる。
 これに対し、「その分購買力が上がる」という意見もあるが、それは富裕層に限った話で、多くの層では賃金も低下しているので、物価が下がったからといって、その分モノが多く購入できるわけではない。
 これが結局、小泉構造改革の結果だ。これを見れば、日本の経済は新自由主義で良くなるどころか悪くなっていることが分かる。
 しかし、日本はもうダメなのかというと、別の側面から見るとそうではない。
 日本は対外純債権367兆円を持つ世界最大のカネ持ち国だ。純債権367兆円のうち、米国債151兆円。しかしこれは売却不能だ。また、直接投資が144兆円あるが、これも日本の会社が海外に工場を建設したとか、海外の会社を購入したというもので、すぐに使用することは不可能である。
 そこで、日本が民間も含めて使用することができる資産はざっと82兆円に上る。これをどう使うかが政治に問われている。

新自由主義を拒否する欧州

 新自由主義の他国への影響をみていこう。
 まずはEUだが、注意しなければならないのは、グローバリゼーションとグローバリズムの違いである。
 グローバリゼーションとは、国境の垣根が低くなってモノや人が活発に行き交うようになることで、EUなどの現状はグローバリゼーションが進展した結果といえる。一方、グローバリズムとは、米国型の新自由主義で世界を席巻しようという考え方だ。だから、グローバリゼーションが進むと必然的にグローバリズムになるというわけではない。これを誤解している人が多い。
 さてこの間、EUでは米国の新自由主義に対抗し、「人間の顔をした資本主義」を確立しつつある。
 新自由主義は人間性を無視した資本主義で、過度に競争が煽られ、社会が不安定になり、各階層の対立が激化し、ひいては犯罪が増加する要因にもなる。
 こうした点から、EUの要人からは厳しい新自由主義批判が起こっている。ドイツのヘルムート・シュミット元首相は「公共の福祉こそ、最高の掟であり、エゴイズムが最高の掟である米国資本主義とは違う」と述べているし、フランスのリオネル・ジョスパン元首相も「社会的欧州が必要である。欧州は社会的モデルによって経済的繁栄を築いてきた」と述べている。英国のトニー・ブレア元首相も「(米国は)社会のなかで両極の対立が深まり、犯罪が増え、教育が荒廃し、生産性と成長率が低下してゆく」と述べている。
 こうした発言に裏打ちされ、EUでは欧州社会憲章にみられるように、労働者の保護などが徹底され、調和のある経済発展をめざしている。
 この流れの根本にあるのが、カール・マルクスだ。カール・マルクスは共産主義を唱えたことで有名だが、労働者の困窮の原因が古典的な資本主義にあることを資本主義研究を通じて明らかにした。そこには労働者など貧困にあえぐ人々に対するヒューマニズムがあった。社会主義革命が実際に起こったのはロシアで、欧州諸国は共産化しなかったが、マルクス主義のヒューマニズムの部分は受け継がれた。
 ドイツでは基本法(憲法)で自らの国を「民主的社会的共和国である」と規定している。だから政府主導で民間との混合型経済体制をとっている。例えば、失業者対策は国が責任をもってすべて行っている。
 フランスも同じように混合型経済体制だ。一時、サルコジ大統領の出現によって新自由主義政策に舵を切ったが、結局、国民に受け入れられず、12年5月の大統領決選投票で敗退し、経済成長と所得の再分配機能を重視する福祉国家政策に戻った。
 図2を見てみると、96年からの各国の保健・社会保障費は、フランスやドイツで高く推移している。英国も保守党政権による新自由主義政策の下で長らく低かったが、労働党政権になって再び上昇している。こうした状況の下で、こうした国々が経済成長をしていないかというと、全く逆で、図1をみれば分かるように、こうした国々もきちんと経済成長をしている。
 日本も戦後は、福祉国家として成長してきたが、新自由主義で壊され、経済成長が止まってしまった。

新自由主義の見本市・韓国

 次に、韓国の実情をみてみる。韓国は80年から96年まで低金利で外貨を借り、それを国内投資に向けて好景気を維持していた。
 しかし、97年のアジア通貨危機で一気に債務が返済できなくなり、IMFの管理下に入った。それで、従来の経済理念や経済体制が崩壊し、IMFにワシントン・コンセンサスを押しつけられてしまった。IMFは緊急融資の条件として緊縮財政、金融引き締め、金融機関の整理、貿易や資本自由化、規制緩和などに及んだ。これを「清算型構造改革」という。
 こうした「改革」により、韓国の経済体制はがらりと変わり、主要銀行は17行から11行に再編され、大手銀行はほとんど外資による支配を受けることになった。たとえば、大手銀行の外国人持ち株比率は、新韓銀行64.2%、国民銀行63.9%、第一銀行100%となっている。企業も再編され、電機メーカーはサムソン電子とLGのみ、自動車は現代自動車だけで国内シェアの8割を握ることになった。しかも、こうした企業も海外資本に支配され、サムソン電子の外国人株主比率は47.5%、現代自動車も44.5%となっている。
 何人かの大学教授と韓国の調査に行き、韓国の高官に話を聞いたが、彼らは「IMFはとにかく一方的に政策を押しつけてきて、私たちの意見など全く聞かなかった。ひどい」と机をたたいて怒っていた。
 他にも韓国では法人税引き下げ、社会保障費削減、所得格差の拡大で内需が伸びないため、ウォン安誘導をして、外需を獲得するなどの政策が採られた。
 その結果、実質賃金は06年からずっとマイナスが続き、上位1%の所得は全体の16.6%となり、OECD加盟国のなかでは米国の17.7%に次いで高い水準となってしまった。大学進学率は71%と高いものの、卒業しても正社員になる機会が少なく、卒業生の半数近くがコンビニでアルバイトをして就職機会を求めているといわれ、自殺率もOECDの統計では10万人に38人と非常に高い水準にある。これが新自由主義者がめざす社会なのだ。
 さらにその後、韓国は米韓FTA(自由貿易協定)を締結した。与党議員も含めて多くの韓国人が反対したが、最後には一院制の議会で議長職権で批准されてしまった。この協定にはTPPに盛り込まれている条項も多いが、非常に米国に有利なものとなっている。立教大学の郭陽春教授は「米国の植民地へ追いやるトラップ(悪魔の罠)がふんだんに散りばめられている」と指摘し、日本がTPPへ参加する時に注意するよう警鐘を鳴らしている。
 まず、ISD条項と呼ばれる条項は、日本語では「投資家対国家紛争解決条項」と呼ばれているが、韓国では「毒素条項」と呼ばれている。この条項は「米国の投資家(企業、個人)が進出先の韓国で不当な扱いを受けたために当初期待した利益が上がらなかったと判断すれば、韓国政府を訴えて、当初見込まれた利益を賠償させることができる」という条項だ。
 ラチェット条項もある。ラチェットとは「歯止め措置」の意味で「いったん行った規制緩和は、後でどのようなことが発生しても、その条件を変更できない」というものだ。
 また、スナップ・バック条項も盛り込まれた。「スナップ・バック」とは「手のひらを返す」という意味で、自動車分野で韓国が協定に違反したり、米国製自動車の販売・流通に深刻な影響を及ぼすと判断された場合、米国は自動車輸入関税撤廃を無効にすることができるというもので、韓国には同様の権利が認められていない。
 こうした条項はすべてTPPにも盛り込まれており、日本も米国に、韓国のような経済体制を押しつけられるかもしれない。

アベノミクス「成長戦略」こそ日本破壊政策

 米国を中心として世界中に広がる新自由主義だが、欧州ではそれとは異なる資本主義が標榜されている。
 日本では今後どのような資本主義体制が到来するのだろうか。安倍政権がまとめた「経済成長」をみてみると、法人税の引き下げと消費税の引き上げ労働法改悪医療費抑制と混合診療につながる「患者申出療養」の創設、規制緩和のパイロットスタディを行う国家戦略特区の認定、農業への株式会社参入と農協が持つ金融資産の略奪など、極めて新自由主義的な政策が並んでいる。
 これが実施されれば、日本が戦後培ってきた共存共栄資本主義は崩壊してしまう。日本は有史以来の危機にあると言っても過言ではない。団結して福祉型資本主義を守ろう。

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