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解説 新たな患者負担増 Ⅲ エーッ 75歳以上の窓口負担が2割に

2016.04.15

財務省が取りまとめた「平成28年度予算の編成等に関する建議」では、医療費窓口負担について「75歳以上についても2割負担を原則とする見直しを医療・介護ともに行うべきである」、「2020年度までのできるだけ早い時期に具体化の方策を取りまとめる」とされた。
 その理由について、「経済財政運営と改革の基本方針2015」(骨太の方針)は、「社会保障制度の持続可能性を中長期的に高めるとともに、世代間・世代内での負担の公平を図り、負担能力に応じた負担を求める観点から」と述べている。
 70歳以上の高齢者の医療費窓口負担は、1973年の老人福祉法改正以来83年に定額負担が導入されるまで10年間無料であった。
 その後、高齢者の医療費窓口負担は徐々に引き上げられ、08年に後期高齢者医療制度が始まると70〜74歳までの高齢者は原則2割負担、75歳以上は原則1割、70歳以上でも「現役並み所得者」は3割負担とされた(図1)。しかし、多くの国民の反対で、70〜74歳の高齢者の負担は13年度まで1割負担が維持された。
 今回の負担増案は、後期高齢者医療制度でも1割負担とされた75歳以上の高齢者の医療費窓口負担を1割から2割と倍にするものである(図2)。政府はその理由について、高齢者と現役世代で医療費窓口負担が異なるのは「不公平」としているが、単に1度の受診における窓ロ負担だけを取り出して、「不公平」というのは暴論である。

現役世代より重い高齢者の自己負担

 高齢者の医療ニーズは現役世代より高く、厚生労働省の推計によれば、15歳から64歳までの医療費自己負担額の平均は年間3.62万円とされている。これに対し、それ以上の世代では8.04万円に上る。つまり、すでに、高齢者は現役世代よりも重い負担をしているのである。
 これをさらに増やせば、経済的な理由で医療機関を受診できなくなる高齢者が増加してしまう。
 全日本民主医療機関連合会が行った「2015年 経済的事由による手遅れ死亡事例調査」では、2015年の1年間で経済的な理由で受診が遅れ死亡に至った63事例のうち、70歳以上の高齢者は27%を占めている。1割負担だから、他の世代よりも受診しやすいとは、決して言えない。現在でも経済的な理由による受診抑制が起こっており、死に至る事例もある。さらに窓口負担を引き上げれば、こうした事例が増加する可能性が高い。
 国民の命と健康を守る医師、歯科医師として75歳以上の高齢者の窓口負担引き上げに反対しなければならない。 
 

図1 高齢者の医療費窓口負担の変遷
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図2 政府が検討する制度改悪案
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