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兵庫県「2015年受診実態調査」詳報 半数の会員が治療中断を経験

2016.04.25

 協会は昨年末、「2015年受診実態調査」を実施。調査票を送付した5316件の会員医療機関のうち、約10%にあたる542件から回答をえた(表1)。結果からは、半数の会員が経済的理由で治療中断や検査・投薬を断られたことがあるなど、2010年に行った前回調査よりも、受診抑制がいっそう深刻になっていることが明らかになった。前号に続き、今号では、結果をくわしく解説する。
 

経済的理由による治療中断「あった」1割増の5割に

 設問1「この半年間に、主に患者の経済的理由によると思われる治療を中断する事例がありましたか」では、「あった」との回答は、全体で48%と、2010年の37%から10ポイント増加した。医科は33.5%から44.2%へ、歯科では48.3%から56.9%へと、上昇した(図1)。
 治療中断があっても、その原因が「経済的理由による」ものかどうかが、不明である場合は少なくないが、医科の「あった」は10ポイント高くなり、逆に「なかった」は36.5%から26.7%へと10ポイント減少している。「あった」は大きく増え、「なかった」は逆に減少していることは、受診抑制が強まっていることを示している。
 歯科の「あった」は、医科よりも10ポイント以上高いことも特徴だが、歯科では「わからない」が、2010年の30.2%から25.6%へ減少。「あった」が9ポイント高くなった一方、「なかった」は5ポイント減少した。医科の「わからない」は、2010年・2015年とも3割でほぼ変わらなかったことと比べても、歯科はより受診抑制が深刻化したといえる。

中断事例の病名高血圧、糖尿病、脂質異常がトップ3

 中断事例の病名では、高血圧、糖尿病、脂質異常症が高い率を示している(図2)。これは、慢性疾患で自覚症状が乏しいと治療中断を起こしやすいためであると考えられる。

「検査や治療を断られた」高水準で微増

 設問2「この半年間に、医療費負担を理由に検査や治療を断られたことがありましたか」は、個々の検査や治療を断られるケースの把握を目的にしたもの。
 医科は、2010年48.9%から51.8%へと微増し、5割を超えた。設問1の治療中断よりも「断られた」経験はさらに高くなっている(表2)。
 歯科は、38.4%から38.8%でほぼ横ばい。医科よりも低い水準だが、設問1とあわせて考えれば、歯科では、自覚症状がなくなるとすぐに治療中断となるが、自覚症状があるうちは治療を断るケースは、医科ほど高くないと思われる。

小児科「なかった」8割

 設問2を標榜科別に比較すると、小児科系は治療中断が「あった」は14.3%しかなく、逆に「なかった」は78.6%ときわめて高い。内科系の「あった」6割、「なかった」2割とは、真逆の傾向を示した(図3)。
 小児科は急性期疾患が多いこともあるが、内科系とこれほどの差がついたのは、窓口負担を「中学3年生まで無料」とする自治体が増加したことによる影響もあると考えられる。2010年調査では標榜科目を尋ねていないため、正確な比較はできない。しかし、2010年時点で「中学3年生まで無料」(通院・入院とも)の自治体は、41市町中わずか3市町(西宮市、小野市、福崎町)しかなかったが、2015年には、30市町へと10倍に増加し、全市町の7割に広がっていることが、結果に影響を与えたと思われる。窓口負担の軽減が受診抑制をなくす上で、決定的に重要であることを示している。

「薬が切れても受診来ない」75%

 受診抑制でよくある事例についての経験を尋ねると、医科で5割を超える上位4項目は、1位「薬が切れているはずなのに受診に来ない」74.6%、2位「受診回数を減らしてほしい(「月1回を2カ月に1回に」「長期投薬を希望」など)と言われた」66.2%、3位「薬代の負担を減らしてほしい(ジェネリックを希望など)と言われた」62.8%、4位「投薬のみを希望する患者がいた」60.7%であった。
 1位から4位まで、医薬品関係が占めている。経済的理由とともに、薬価の高価格化が影響しているとみられる。
 歯科では、1位「保険のきく範囲で治療してほしい」79.4%、2位「痛みがとれたら受診に来ない」78.8%の2項目が他の項目に比べてきわめて高かった。
 1位が「保険のきく範囲で治療してほしい」であることは、経済的理由によるものと考えられ、十分な治療を行うために保険範囲を広げることの重要性を示している。2位の「痛みがとれたら受診に来ない」は、歯科医療によくある傾向であるが、口腔状態が全身の健康状態に大きな影響を与えるという最新の医学研究をふまえると、深刻な問題である。

患者負担金の未収「あった」4割

 設問4の「この半年間に、患者一部負担金の未収金がありましたか」に対しては、医科歯科ともに、ほぼ4割が「あった」と回答している。
 診療行為の報酬が公定価格である現制度のもとでは、未収金をコストとして上乗せできないため、それは直接医療機関の経営を圧迫する。
 診療報酬の抜本的引き上げとともに、そもそも未収金が発生しないよう、患者負担を軽減することが必要である。

75歳以上の患者負担引き上げ「受診抑制につながる」8割

 設問5「今検討されている75歳以上の患者窓口負担の2割への引き上げについて、患者の受診に影響があると思いますか」に対しては、「受診抑制につながる」との回答が医科・歯科とも8割で、圧倒的多数であった。
 受診抑制をなくし、国民のいのち・健康を守るためには、窓口負担をこれ以上増やすのではなく、縮小し、廃止をめざすべきである。

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