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主張 高額薬剤 まずは薬価算定方法にメスを

2016.09.25

 最近の国民医療費における調剤薬局費の伸びは著しく、その大半は薬剤費の伸びである。
 近年、オプジーボ(1瓶約73万円)、ハーボニー(1錠約5万5千円)といった「超」高額医薬品が薬価収載され、適応患者全てに投与されれば、単剤でも1兆円を超える薬剤費となる。このような薬剤は今後も次々と上市が予定されるが、薬剤費の急激な上昇は、国民医療費、保険料、あるいは診療報酬改定に及ぼす影響も少なくない。ちなみに1兆円あれば、「高すぎる」と言われる市町村国保加入者の保険料を1人あたり2万5千円引き下げることができ、診療所の再診料を100点引き上げることができる。
 高額医薬品が公的医療費に及ぼす影響を少なくする方法には四つある。一つ目は薬価を下げる、二つ目は診療報酬ではなく一般財源で対応する、三つ目は適正使用(患者・医師・施設をガイドライン等で限定)を行う、四つ目は保険収載しない、であるが、皆保険制度の「いつでも、どこでも、だれでも」を守るのなら3番目は慎重に、4番目はぜひとも避けたいところである。
 画期的な新薬が保険収載されるのは、患者、医師にとって喜ばしいことであるが、日本の薬価算定方法には以前から不透明さが付きまとう。
 オプジーボを例にとれば、保団連の調査では、日本の価格は英国の約5倍、米国の2.5倍である。このような価格を設定しておきながら、その決定過程には議事録すらないためブラックボックス化し、事後の検証も不可能である。一部報道では、承認審査を所管業務とするPMDA(医薬品医療機器総合機構:厚労省所管の独立行政法人)の担当者が「日本発の薬だから応援したい」と決めたと言われている。
 新薬の開発においては、その相談段階からPMDAの担当者と製薬企業の二人三脚で進められ、PMDA予算の8割以上が企業からの拠出金や手数料と言われる。
 成長産業の一つとして国内製薬産業を支援し、国際競争力を高めるのが国策とはいえ、開発の段階において、3千億円近い科研費や研究開発予算を税金で賄い、さらに数十億円単位の研究開発減税を受け、新薬開発の成功報酬として不透明な高薬価設定をどう考えるか。製薬企業の利益率は8〜15%を推移し、他企業より高い。
 国民皆保険制度はその財政難から、持続性が危惧され、患者負担の増加が計画・実行されている。そのような状況下に不透明な薬価決定で参入し、高い利益を上げ、国民医療費を費消するのでは、国民の理解は得にくい。
 現在検討中の「費用対効果評価」も一つの方法ではあるが、その前に公正で透明な薬価決定制度を議論すべきである。 

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