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県知事選特集 井戸県政16年の検証(下)「地域医療構想」 強まる知事の役割

2017.06.25

 7月2日投開票の兵庫県知事選挙にあたり、医療にかかわる主な県政の課題のうち、地域医療構想について解説する。
 

2025年までに662床を削減

 この間の国の医療制度改定で、医療・社会保障分野における県知事の役割は非常に強くなりつつある。
 2014年に成立した医療・介護総合法により都道府県は「地域医療構想」を策定することとなった。これは厚労省が定めた「策定ガイドライン」に基づいて2次医療圏ごとに2025年の必要ベッド数を推計し、その推計に基づいて病床を整備・削減するというものである。
 しかし、厚労省が定めた「策定ガイドライン」には多くの問題がある。一つは現在の入院患者数を前提として、2025年の人口推計を単純に当てはめただけということである。現在でも、医師の不足などにより入院が必要でもできず、自宅療養や早期退院を余儀なくされている患者は多い。この点について厚労省の「策定ガイドライン」は全く考慮していない。
 さらに、比較的軽度とされる患者が入院している療養病床に至っては、何の根拠も示さずに一律に人口当たり最も少ない県に合わせて削減するとしている。しかし、療養病床に入院する患者には、食事が経口摂取できず、心不全で投薬治療が欠かせないという人もいる。こうした人を在宅や介護施設で療養させることは大変困難である。
 こうした一方的な「策定ガイドライン」に対し、一部の自治体では、病床を減らさず全体として増加する見込みとしたり、病床の区分ごとの必要数を細かく書き込まないなど、地域の実情に合わせて地域医療構想を策定したところもある。
 しかし、兵庫県は厚労省の「策定ガイドライン」どおりに「兵庫県地域医療構想」を策定した。それによれば、県全体で2025年までに662床を削減するとしている(表1)。現状でも入院が必要でもできない患者がいるにも関わらず、さらに病床を削減すればこうした傾向にさらに拍車がかかってしまう。
 また、厚労省は地域医療構想を実現するために知事の権限を強化した。具体的には公立病院には病床の転換や削減を命令することができる上、民間病院に対しても病床削減を要請でき、従わない場合は管理者を変更させることもできるとしている。さらに現在、保険医療機関の指定取り消しもできるように検討が進められている。

各地の病院統廃合を計画

 今年度中には県は新たな地域医療計画と医療費適正化計画、介護保険事業計画を策定し、来年から運用が始まる。また、すでに県は県立病院改革プランを策定している。
 このうち、医療費適正化計画には2015年に成立した医療保険制度改革関連法により、「医療に要する費用の見込み」を明記することになった。これは、都道府県毎に医療費の目標を決めるというものである。さらに現在、政府は高齢者医療確保法第14条に定められた都道府県ごとに診療報酬を定めることができるという制度を具体的に利用できるよう、検討をしている。
 これらが組み合わされば、県が定めた医療費の目標よりも医療費が増えそうならば、診療報酬を県が引き下げることもできるのである。
 また、地域医療計画は地域医療構想と整合的に策定するとされており、病床削減の具体的な計画が盛り込まれる可能性が高い。
 すでに策定された県立病院改革プランでは、県立柏原病院と柏原赤十字病院の統合再編、県立姫路循環器病センターと製鉄記念広畑病院の統合再編、県立西宮病院と西宮市立中央病院のあり方の検討が盛り込まれている(表2)。
 現在の計画でもこれらの病院の統合にあわせ、一部病床削減は計画されている。地域医療構想に合わせて今後さらなる病床削減が行われる可能性も否定できない。

地域の声を聞いて県民医療の充実を

 このように県は県内の病床数や医療費の目標を定め、それに向けてさまざまな施策を行うことを国から求められている。しかし、国の策定するガイドラインなどにしたがえば、国の医療費抑制政策に沿って、県がその計画を具体化することになる。
 地方自治体の役割は「住民福祉の向上」である。県は国の医療費抑制政策の片棒を担ぐのではなく、地域住民や医療従事者の声に耳を傾け、県民医療の充実を進めるべきである。

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