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【声明】8月1日付日本経済新聞の報道「子供医療費 過剰な競争」に抗議する

2017.08.09

8月1日付日本経済新聞の報道

「子供医療費 過剰な競争」に抗議する

兵庫県保険医協会

政策宣伝広報委員会

 貴紙2017年8月1日付の経済部飛田臨太郎記者署名記事「子供医療費 過剰な競争」は偏向した憶測と論理飛躍を基調とした、極めて悪質な記事であり、保険医の団体である当会として、容認できるものではない。

 まず、記事では自治体が行う子ども医療費助成制度が「安易な受診を増やし医療費膨脹につながる」「コスト感覚が鈍って安易な受診を助長しやすくなるためだ」などとしているが、それらは政府の言う医療費の波及増効果、いわゆる「長瀬効果」を根拠としているものと思われる。ご承知のように「長瀬効果」の大小は価格弾力性に比例する。例えば老人の入院医療は価格弾力性が低いため長瀬効果が少なく、現役世代の外来医療は軽医療が多いため価格弾力性が高く、その効果が顕著に出るといわれ、対象とする年齢層や提供する医療により長瀬効果が左右される。その点、乳幼児医療や小児医療は、価格弾力性が低いと言われている。分かりやすく言えば、発熱している子供をお金がかかるからと受診させない保護者は少ないということである。また、中高生世代ではそもそも疾病の罹患頻度が少なく受診が多くないので、仮に貴紙の言うところの「安易な」受診が増えたとしても医療費に与える影響は極めて小さいと考えられる。実際に、岐阜県大垣市では所得制限を設けずに高校生世代まで医療費を無料にしているが、受診回数や医療費は横ばいであるとの報告がある。

 そもそも、記事では「安易な受診」が増えることを否定的に記述しているが、なぜ医師でもない国民がその受診を「安易」かどうか判断できるのであろうか。むしろ専門的知識の無い患者が自身の疾病を「コスト感覚」から事前に判断し、「安易」に受診抑制することで重症化する例は、低所得者を中心に医療現場では少なくない。このように患者窓口負担増は、自助と自己判断、自己責任により、低所得者を国民皆保険から排除し、窓口支払い能力ではなく、専門職が判断する必要性に応じて受けるべきという公的医療保険の原則から大きく逸脱するものである。「長瀬効果」とはまさにこの窓口負担増による受診抑制という問題点を数値化したものに他ならない。

 また、記事では厚労省の試算を元に、高校生まで患者負担を無料化すると医療保険からの給付が8400億円増えるとしているが、これは厚労省も認めるように「粗い」試算である。この8400億円という数字は自治体の助成をなくし、健康保険法で「(家族療養費) 被扶養者が十八歳に達する日以後の最初の三月三十一日以前である場合 百分の百」などと規定された場合の数字である。しかしこの8400億円と言う数字は、財源別国民医療費の保険料の4・2%である。つまり被用者保険において現在の10%前後である保険料率を10・04%程度に引き上げれば賄える程度の負担なのである。これをもって、国の財政を揺るがす問題だとするのは、読者をミスリードする誇張した表現と言わざるを得ない。

 さらに、記事では「自治体の医療費補助は医療保険財政の窮状を無視した大盤振る舞い」「地方は予算の不足分を地方交付税という形で国に請求書を回し、最後は赤字国債で穴埋めする」などとしているが、これは明らかな間違いである。総務省によれば「地方交付税は、本来地方の税収入とすべきであるが、団体間の財源の不均衡を調整し、すべての地方団体が一定の水準を維持しうるよう財源を保障する見地から、国税として国が代わって徴収し、一定の合理的な基準によって再配分する、いわば『国が地方に代わって徴収する地方税』」であり、決して国からの支援金ではない。さらに、その原資と額は所得税の33.1%、法人税の33.1%、消費税の22.2%などと決められており、「最後は赤字国債で穴埋めする」というのも誤った記述である。

 最後に、国も「一億総活躍社会の実現」の実現に向けて、少子高齢化に真正面から挑むため「夢をつむぐ子育て支援」を行おうとしている。こうした取り組みの一環として、地方自治体の努力で広がる子ども医療費助成制度は、子育て世代にとって切実な要求に応える施策である。これを、国の財政赤字の観点のみから、根拠の希薄な憶測と飛躍した論理で、地方自治体の努力を批判する記事は、貴社の報道姿勢に疑問を抱かせるものである。

 貴社におかれては、今後こうした記事を内部検証することなく掲載しないよう、強く申し入れるものである。

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