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日経新聞「子供医療費 過剰な競争」に反論する 「安易な受診」「医療費膨張」「赤字国債で穴埋め」はミスリード

2017.09.05

 8月1日付の日本経済新聞は「子供医療費 過剰な競争」との見出しで、全国の自治体に広がるこども医療費助成制度を「コスト感覚が鈍って安易な受診を助長」「医療費膨脹につながる副作用は深刻」「最後は赤字国債で穴埋めする」などと決めつけ、「強力な歯止め策が必要」としている。これは事実に基づかない曲解により世論をミスリードする内容であり、協会・保団連は、記事に対して抗議を行った。
実態見ない「安易な受診」増加論
 記事の問題点は3点ある。
 第1は、根拠なく「医療費がただなら必要ない受診が増えるのは当然」とし、窓口負担軽減による「安易な受診増加論」を展開している点である。記事は「高校生まで無料にすれば医療給付費が8400億円増える」との厚労省の「粗い試算」を追随し、「安易な受診を助長しやすくなるため」としている。
 表1は、厚労省が作成した「患者負担を無料化した場合の影響額」だが、最大の問題は、厚労省が現行制度のもとで必要な受診は行われており、負担増で増える受診はすべて「安易な受診」という前提に立っていることだ。保護者は必要があって医療機関受診のために、病児を連れ時間をとって足を運ぶのであって、窓口負担が少ないから「安易な受診」をすることはありえない。むしろ、専門的知識のない親が子どもの疾病を「コスト感覚」から判断し「安易な受診」を抑制することで重症化する例は少なくない。
 このように助成制度の縮小に伴う窓口負担増加は、「窓口支払い能力」を前提にした「自己判断と自己責任」により、患者を国民皆保険制度から排除し、「必要に応じて受ける」という公的医療保険の原則から逸脱するものである。
「医療費膨張」にはならない
 第2は、「医療費膨張につながる副作用は深刻」だと断定し、いたずらに危機感をあおっていることだ。
 実際、こども医療費助成制度を実施している自治体の調査によっても「医療費膨脹」は起きていない(表2)。各自治体のデータでは、「時間外受診が拡大前の92.7%に減少」「1件あたりの費用は横ばい」「子ども医療費の伸びは対象人数の伸びより低くなっている」などとあり、助成制度の拡充が「医療費膨張」にはなっていない。
こども医療費助成と関係ない赤字国債
 第3は、「自治体の医療費補助は医療保険財政の窮状を無視した大盤振る舞い」「地方は予算の不足分を地方交付税という形で国に請求書を回し、最後は赤字国債で穴埋めする」という誤った財源論である。
 地方交付税は、「本来地方の税収入とすべきであるが、団体間の財源の不均衡を調整し、すべての地方団体が一定の水準を維持しうるよう財源を保障する見地から、国税として国が代わって徴収し、一定の合理的な基準によって再配分する、いわば『国が地方に代わって徴収する地方税』」(総務省)であり、国からの支援金ではない。その原資は、所得税の33.1%、法人税の33.1%、消費税の22.2%などと決められている。つまり、もともと地方の財源を、国が再配分しているにすぎないもので、赤字国債とは何の関係もない。
 さらに、仮に高校生まで患者負担を無料化した場合に必要な額とされる8400億円は、国家予算の0.22%であり、医療保険財政を揺るがす問題でもない。
 少子化対策は、国・地方あげての重要課題であり、「一億総活躍社会の実現」の実現に向けて「夢をつむぐ子育て支援」を行おうとしている。地方自治体の努力で広がる子ども医療費助成制度は、子育て世代にとって切実な要求である。
 根拠の希薄な憶測と飛躍した論理で、地方自治体の努力による住民サービスを批判するのは、報道の姿勢が問われる。この制度により「安心して受診できる」との若い母親たちの声は少なくない。新聞は、政府からの情報を鵜呑みにすることなく、子育て世代の経済状況や受診抑制の実態を取材したうえで報道すべきである。

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