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2017年総選挙特集 政策座談会 大義なき解散 社会保障削減に審判を

2017.10.05

 10月10日公示・10月22日投開票で行われる総選挙にあたって、協会は9月27日、医療・福祉を中心とした争点と各党の政策について座談会を行った。司会は加藤擁一政策部長(副理事長)が務め、西山裕康理事長、武村義人・辻一城・足立了平各副理事長、幸田雄策政策部員が参加した。

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西山 裕康 理事長

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辻  一城 副理事長

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足立 了平 副理事長

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司会 加藤 擁一 政策部長・副理事長

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武村 義人 副理事長

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幸田 雄策 政策部員

大義なき解散
 加藤 突然の解散・総選挙となったが、このタイミングでの解散をどうみるか。
 武村 そもそも、6月から野党は憲法53条に基づいて臨時国会の開会を要求していた。それを3カ月放置し、いよいよ臨時国会の開会にあたって冒頭解散というのは、憲法をないがしろにした、安倍首相の国会私物化であると思う。
  テレビなどでも安倍首相は「森友」「加計」学園問題を問われると、非常に歯切れが悪い。やはり、「森友」「加計」学園問題で野党の追及を恐れたのだろう。これらの問題に答えず、野党や国民の批判をかわすために国会を解散してしまうのだから言論封殺としか言えない。それに8月に行われた内閣改造はなんだったのか。安倍首相は「仕事人内閣」などと言っていたが、行った仕事は江崎鉄磨沖縄・北方担当大臣が就任直後に、北方領土問題で自分を「素人」と認め、国会では「答弁書を朗読する」と発言し、批判を受けたくらいだ。
 幸田 安倍首相は自分が首相のうちに改憲とオリンピックをやりたいのだろう。野党の選挙準備が整わないうちに解散し、今回の総選挙で勝利し、来年の自民党総裁選での3選を狙っている。非常に身勝手な解散だ。
 西山 今までの議論の通りで今回の総選挙には大義も争点もない。争点というなら、共謀罪や特定秘密保護法、安保法など国論が二分されていた時期こそ国民に信を問うべきだった。消費税の使い道や北朝鮮への対応などは、国会できちんと議論をすべきことがらだ。どの政権であれ、このような前例は許すべきでない。
明らかになった「消費税増税は社会保障のため」の嘘
 加藤 首相は2019年10月に予定している消費税増税で、増税分の使途を「全世代型社会保障」の実現に振り向けることについて国民の信を問うなどとしているが。
  消費税増税分をすべて社会保障にまわすというのは、民進党の代表選の際に、前原誠司氏が掲げていた政策だ。それを横取りして、自民党の政策として国民の信を問うというのは、露骨な争点隠しで、まさに「抱きつき」戦法だ。
 西山 これまでも政府は、消費税増税分はすべて社会保障に使ってきたと言い張ってきた。私たちは消費税の使い方について、実際に社会保障の充実には一部しか使われておらず、大半は、所得税や法人税など他の財源を減らし、消費税と付け替えただけか国の借金返済にまわされていると主張してきた(図1)。それでも政府は国の借金返済に使った分も「後代への負担のつけ回しの軽減」と言い「社会保障の安定に寄与」しているなどとごまかして来た。
 加藤 今回、消費税増税分を国の借金返済から社会保障の充実にまわすと政府が言い出したのだから、これまでが誤りだと自ら認めたことになる。
 足立 そもそも逆進性が高く低所得者ほど負担が重くなる消費税を社会保障の財源にするのは、問題があるのではないか。私たちは空前の経常利益を上げる大企業や株高で儲けている富裕層に対する減税をやめ、能力に応じた負担を求めるべきだと主張してきた。
 幸田 その通りだ。財源の議論になると、消費税にばかり狙いを定めるのはおかしい。野党には消費税でなく、法人税の引き上げや所得税の累進強化などをきちんと掲げてほしい。
 武村 これまでの経緯からみて、今になって、安倍自公政権が「全世代型社会保障」だとか「社会保障の充実」などと口にしてもおよそ信じることはできない。
 足立 全くだ。第2次安倍政権の発足以来、彼らは国会のたびに医療・社会保障制度改悪を実施してきた。
 加藤 医療・介護の患者・利用者負担増では、70歳から74歳の医療費窓口負担の引き上げ、一定の所得以上の層の介護サービス利用料を1割から2割に引き上げ、さらに所得の多い層には3割負担を導入することを決めた。また、高額療養費制度や高額サービス費制度も上限を引き上げたし、入院時の食事療養費と高齢者の光熱水費引き上げ、介護保険の食費・居住費の軽減制度も改悪してしまった。さらに紹介状なしの大病院受診時には初診料に加えて5000円以上を負担しなければならないという制度も創設した。
 武村 患者・利用者負担増だけではない。後期高齢者医療制度の保険料の特例軽減措置の廃止なども、高齢者世帯には非常に厳しい制度改悪だ。
  これら制度改悪の背景には患者や利用者負担を引き上げて、医療や介護をなるべく利用させないようにし、社会保障費を抑制するという政府の大方針がある。
 加藤 一方で、医療提供体制の改悪も進められた。
 西山 安倍自公政権の下では、都道府県は地域医療構想として2次医療圏ごとに2025年の必要病床数を推計し、その数字まで病床を減らすことになった。兵庫県でも600床以上の病床が削減される。しかも、そのために知事は公立病院には病床削減や転換を命令できるし、民間医療機関にも勧告を行うとしている。
 武村 地域の実態を無視した強引な病床削減が進むおそれがある。しかも、2025年といえば日本で高齢化がピークに達する時期だ。今でさえ、入院が必要な患者さんが早期退院を余儀なくされたりしているのに、さらに病床を削減してしまえば、今まで以上に行き場のない患者さんが出てしまうのではないか。
 足立 政府は自宅や介護施設を受け皿にするとしているが、現場の医師は在宅医療まで手が回らないことも多いし、そもそも介護施設も数がまったく足りていない。
 加藤 そんななか、来年4月には診療報酬改定が予定されている。
  安倍政権の下では全くプラス改定は期待できない。前回の診療報酬改定でも結局、マイナス改定となった。これも毎年の社会保障費の増加を5000億円に抑制するという方針に基づくものだ。
 武村 来年もこの方針は継続するとしており、今回も診療報酬はマイナス改定になるのではないか。今回の総選挙では、ぜひ診療報酬のプラス改定を掲げる政党に大きくなってほしい。
 幸田 そもそも安倍政権は4年連続で賃上げを実現したとその成果を誇っているが、400万人ともいわれる医療・介護従事者の賃金の原資である診療報酬や介護報酬はなぜ引き上げを行わないのか。
 足立 歯科医療の分野でも医療費が抑制し続けられ、地域の現場は疲弊している。社会保障の充実を言うなら、歯科の医療費をきちんと引き上げて、歯科医師はもちろん、歯科技工士や歯科衛生士の待遇を改善し、国民により良い歯科医療を提供できるようにすべきだ。
「アベノミクス」は失敗
 加藤 経済政策についてはどうだろうか。
 足立 自民党は「アベノミクス」の成果について、「戦後2番目の好景気」とアピールしており、誰もが実感できるような総仕上げを行うと訴えている。
 西山 しかし、「誰もが実感できるような」というように、多くの国民には実感がないのが現実で、問題だ。個人消費は伸び悩み、「実質賃金」も前年比0.7%増と伸び悩んでいる。デフレも脱却できていない。
 武村 一方、大企業の業績は非常によい。2016年度の法人企業統計では、企業の経常利益は前年度比9.9%増の74兆9872億円で過去最高。内部留保も7.5%増の406兆2348億円で過去最高額だ。
 幸田 やはり「アベノミクス」は一般の国民生活そっちのけで、大企業や富裕層のみに富をもたらし、格差を広げただけだ。
  政府は財政赤字で、国民の多くも生活は厳しい。国民生活を豊かにするためには、空前の利益を上げている大企業に応分の負担をさせて、社会保障の充実にまわし、国民生活を支えて個人消費を底上げするという持続可能な景気回復を行う必要があるのではないだろうか。
 加藤 雇用も大切だ。正規雇用を増やし賃金を引き上げれば、国民が豊かになるだけでなく、所得税や社会保険料も増える。それをさらに社会保障にまわせば、景気の好循環を作り出すことができるだろう。
 幸田 確かに財政出動は必要だが、何に使うかが大切だ。本当に国民の生活にとって必要な教育、社会保障、生活インフラなどにこそ財政出動を行うべきだ。
改憲許さない取り組みを
 加藤 もう一つ今回の総選挙の大きな争点となるのは、憲法9条を中心とした改憲議論だ。
  自民党は公約に、憲法9条に自衛隊を明記することを盛り込むとしている。これに、教育無償化や緊急事態条項などを加えた憲法改正を訴えるようだ。
 武村 これは非常に危険だ。自民党の9条改憲案は、自衛隊を憲法で認めるというだけのものではないと思う。第3項で自衛隊の存在を認めれば、戦力不保持を定めた9条2項を空文化させることになる。そうなれば、自衛隊はアメリカ軍とともに世界中で軍事行動を取ることができるようになるのではないか。
 加藤 確かに。安倍政権は秘密保護法、安保法制、共謀罪と、日本を戦争できる国にするための法案を次々と通し、北朝鮮問題を口実に防衛予算を拡大させてきた。これらのことを合わせて考えれば、自民党の改憲案は非常に危険だ。
北朝鮮問題対話で危機打開を
 加藤 安倍首相は解散の理由のひとつとして北朝鮮問題を国難として、対応を国民に問うとしている。
 武村 北朝鮮のたび重なるミサイル発射や核実験は、国連決議や国際世論を無視したもので許せるものではない。しかし、安倍首相やトランプ大統領の圧力に偏った対応も事態をエスカレートさせているのではないか。
 足立 安倍首相は国連演説で「必要なのは対話ではなく圧力だ」「すべての選択肢を持つというアメリカを支持する」と述べた。これはアメリカによる軍事力の行使を容認するということで、非常に危険だ。
 西山 国連総会では、各国から対話や交渉を求める発言が多かったそうだ。フランスのマクロン大統領は「平和につながる対話の扉は閉じない」と述べたし、スイスのロイトハルト大統領も「交渉と外交措置だけが、朝鮮半島の...問題の解決策を見出すことを可能にする」と冷静に発言している。
 日本も直接対話による解決を米朝両国に求めていくべきではないか。
野党は国民の期待に応えられるのか
 加藤 さて、これまで安倍自公政権の政策を見てきたが、他の各党の政策はどうだろうか。
 武村 野党共闘に注目している。共産党は勝てる選挙区から野党候補の一本化を行うとしている。安保法制廃止や安倍政権の下での9条改定反対などは一致している。確かに共通政策は大切だが、党が違うのだから、細部まで政策を一致させることはできないだろう。それでも共通政策を国民に提示して、それで支持を得ることが大切だ。
  今の政治状況から見て、一強多弱という体制を続けさせないという一致点での共闘が必要だと思う。熊本では民進党が候補をおろして、野党共闘が具体化している。このように市民連合などが中心になって、野党共闘を進めるべきだ。自民党候補に対して多くの野党が候補を立てれば、自民党の思う壺だ。大局観のない負け戦はやめるべきだ。
 幸田 しかし状況は厳しい。民進党や自由党は希望の党との事実上の合流を行うとしている。共産党は希望の党との共闘を否定している。
 足立 民進党は、野党4党が市民連合との間で確認した次期衆院選での共通政策を破棄して、野党共闘の枠組みを壊してしまった。この動きには失望した。安保法廃止などを市民が求め、野党共闘でそれを実現すると言っていた政党が、安保法案に賛成した人たちが中心にいる政党と合流するなど、市民への裏切りではないか。
 加藤 野党の間のやり取りを見ていると、野党共闘は政党間だけの課題に見える。しかし、そもそも野党共闘は市民運動から始まったものだ。野党はその原点に立ち返って共闘を継続するべきだ。参院選のときは兵庫選挙区が3人区だったので野党共闘ができなかったが、今回は1人区なので野党共闘が必要だ。兵庫でも私たちの要求を掲げて各政党に働きかけたい。
希望の党をどう見るか
 加藤 さて、先ほどから話題になっている希望の党についてだが。
 幸田 消費税を上げないというのは賛成だ。
 足立 確かに希望の党が掲げる原発ゼロについても賛成だが、所属議員をみると、日本会議に所属する議員ばかりだ。小池百合子東京都知事は、安保法制に自民党議員として賛成したばかりか、東京新聞のアンケートに対して安倍政権を100点満点中90点と高く評価している。若狭勝氏も共謀罪に賛成している。これで本当に反自民の受け皿になれるとは思えない。
  当初、希望の党に参加した議員は、選挙基盤の弱い議員ばかりだった。所属する議員は、とにかくどうすれば議員バッジをつけたままでいられるかということしか考えていない。
 加藤 希望の党については、今後出てくる公約を見ないとわからないが、新しい政党だというだけで飛びつくのは危険だと思う。小池都知事は、都議選の前は築地市場の豊洲移転について反対していたのに、選挙が終わると立場を変えて豊洲移転に賛成してしまった。そんなことでは、今は一時的にブームに乗れるかもしれないが、長続きはしないだろう。
 西山 希望の党には人気と新しい旗があるが、中身がない。今は一時的にブームに乗れるかもしれないが、長続きはせず、国政を託すのは危険な選択だろう。
 武村 確かにその通りだ。国民生活を省みず、財界や米国にいいなりの政治、首相の周囲の人たちだけが利権にあずかれるという政治を続ける安倍自公政権に国民は怒っている。しかし、それを正面から批判する野党の政策がぶれていては、いくら看板を架け替えても国民の支持は得られないだろう。やはり、安倍自公政権のやり方をキッパリと否定して、対案を示す野党こそが国民の求めている受け皿なのではないだろうか。
 幸田 マスコミの希望の党の取り上げ方もおかしいのではないか。まるで希望の党が安倍政権に対抗する党のように描いているが、実態は元自民党、元日本のこころ、野党共闘に批判的な元民進党の寄り合い所帯で、非常に保守的な党だ。これでは、安倍政権に対抗するどころか、安倍政権の補完勢力になってしまうのではないか。
 武村 確かにマスコミがそういう本質を報道しないのが問題だ。それで安倍政権に批判的な国民が、希望の党に期待してしまう。それに日本の選挙制度における異常な制限選挙も問題だ。選挙期間には候補者の名前を入れたチラシも配布できない。これでは有権者は各候補者の政策をきちんと把握することもできない。
投票に行こう
  最近の選挙では、政府与党からの圧力もあり、マスコミの選挙報道も盛り上がらない。有権者が選挙に関心を持つようにマスコミはきちんと選挙の争点や各党の政策をきちんと報道してほしい。
 加藤 このような大義なき解散・総選挙は政治不信につながりかねない。しかし、投票に行かなければこうした政治は変えられない。それどころかますますひどくなる。確かに、安倍自公政権の側に解散する大義はないが、国民には安倍自公政権のこれまでの政治に審判を下すという大義がある。憲法改定を許すのかどうかなど、日本の将来を大きく左右する選挙になる。やはり、国民の健康と命を守る医師・歯科医師として、平和と社会保障を大切にする国をつくるという志をもって、投票に臨んでほしい。
 西山 どんな政治を望むのか。それを決められるのは有権者だけだ。ぜひよく各候補者や政党の政策を比較して投票してほしい。そしてその後、自分の投票した候補者や政党がどういう政治を行ったのかきちんと検証して、さらに次の投票行動につなげてほしい。一人ひとりが選挙という政治体験を通して、政治を見る目を養わなければ、日本の政治は成熟していかないと思う。
 加藤 本日はどうもありがとう。

図1 消費税収は法人税減税の穴埋めに使われてきた
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