兵庫県保険医協会

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【パブリックコメント】「第3期 兵庫県医療費適正化計画(案)」に対する意見(全文)

2018.03.15

 兵庫県保険医協会は、県が実施した「第3期 兵庫県医療費適正化計画(案)」へのパブリックコメントとして、以下の意見を送付した。全文を掲載する。

 

 1頁「第1章 第三期医療費適正化計画策定の趣旨 第1節 第三期計画策定の背景」で「急速な少子高齢化、…今後医療に要する費用が過度に増大しないようにしていく…必要があります」との記述があるが、医療に要する費用の多寡を判断する指標とその根拠が不明である。日本の医療費は先進各国の医療費と比較し、高齢化の進展に比して、低い水準となっており、人員不足に起因する勤務医を中心とした医療従事者の過重労働を生んでいる。本来であれば十分な財源を確保し、医師と医療費を先進国並みに増やすことこそ必要である。 

 1頁「第1章 第三期医療費適正化計画策定の趣旨 第1節 第三期計画策定の背景」で「『経済財政運営と改革の基本方針2015』(平成27 年6月30 日閣議決定)において『都道府県別の一人当たり医療費の差を半減させることを目ざす。』こととされました。」とあるが、都道府県別の一人当たりの医療費はそれぞれの地域の実情を反映したもので、一律に半減させることで地域医療に悪影響が及ぶ可能性がある。特に高医療費を下げる方向は、健康状態や疾病を悪化させる危険性が大きく、逆に短期的な低医療費が長期的な医療費増嵩の原因の可能性も検討すべきである。兵庫県においても、そうした個人あるいは地域の実情に充分に配慮したきめ細かい取り組みを求めたい。

 6頁「第1章 第三期医療費適正化計画策定の趣旨 第2節 『兵庫県医療費適正化計画』の概要 3 基本理念」で「 (1) 健康寿命の延伸を図るため、住民の生活の質を確保・向上し、良質かつ適切な医療の効率的な提供を目指します。」とあるが、医療の効率的な提供を追求するあまり、医師をはじめとする医療従事者に更なる負担をかけたり、患者・地域住民が必要な医療を受けられないといった事態を招かないようにするべきである。効率性は、医療費を中心とした短期的な単純評価になりがちであるが、住民の生活の質の確保・向上、良質かつ適切な医療の中長期的な評価基準を明確にし、その結果を重視すべきである。

 6頁「第1章 第三期医療費適正化計画策定の趣旨 第2節 『兵庫県医療費適正化計画』の概要 3 基本理念 (2) 医療保険制度を持続可能なものとするため、医療費が過度に増大しないことを目指します。」とされている。医療費の抑制により医療保険制度を維持するのは本末転倒であり、十分な財源確保により医療保険制度を持続可能なものとする必要がある。医療費の抑制によって、例え一部であっても、県民に必要な医療が提供されないような事態は招いてはならない。

 7頁「第1章 第三期医療費適正化計画策定の趣旨 第2節 『兵庫県医療費適正化計画』の概要 5 他の計画との関係」で「(2) 兵庫県保健医療計画(地域医療構想)との調和」と述べられているが、兵庫県の地域医療構想は2025年までに、県下の病床を662床削減することを掲げるものである。地域の病院の機能を精査し、その実情を軽視した強引な病床削減や病床転換により、地域医療の後退を招かないよう注意されたい。

 9頁「第2章 医療費を取り巻く現状と課題 第1節 医療費の動向」では「1 本県の医療費」「2 国民健康保険の医療費」などとして、各種指標を全国と比較しているが、このような単純な指標により医療に要する費用の多寡を論じるのは、「県民の健康の保持の推進」の視点からは不適切である。 

 17頁「第2章 医療費を取り巻く現状と課題 第2節 生活習慣病の状況」における「1 全国の生活習慣病」では「表2-8 平成28 年度要介護度別にみた介護が必要となった主な原因(上位3位)」が示されているが、介護が必要となった主な原因の1位を占める認知症対策の強化を明記すべきである。

 18頁「第2章 医療費を取り巻く現状と課題 第2節 生活習慣病の状況」における「1 全国の生活習慣病」では「図14 全国の生活習慣病による死亡率の割合」「図15全国の生活習慣病による医療費の割合」が示されているが、ともに「その他」が最も高くなっている。この点、「その他」に関する分析と対策を行うべきである。

 23頁「第2章 医療費を取り巻く現状と課題 第3節 医療資源の状況(兵庫県地域医療構想)」では「団塊の世代がすべて後期高齢者となる2025(平成37)年に向け、『住民が、住み慣れた地域で生活しながら、状態に応じた適切で必要な医療を受けられる』地域医療の提供体制(=「地域完結型医療」)が必要とされています。」と述べられている。この目的から鑑みるに、「兵庫県保健医療計画(改定案)」で「高度、特殊な救急医療の提供体制等に圏域を超えた連携課題がある圏域を広域化し、阪神南圏域と阪神北圏域を、中播磨圏域と西播磨圏域をそれぞれ統合する。」とされているのは、まさに「ゴールを動かす」ルール変更で、到底理解できない。地域の住民・患者・医療関係者へ丁寧に説明し、同意を得るべきである。

 26頁「第3章 医療費適正化に向けた目標及び目標達成による 医療費の推計 第1節 兵庫県医療費適正化計画の目標」「2 『医療の効率的な提供の推進』に関する目標」で「(1) 後発医薬品の使用割合等」について「後発医薬品の使用割合は着実に伸びているものの、全国値を下回っている状況にあるため、国の基本方針に基づき、目標値を設定します。」とある。しかし、2015年に行われた厚生労働省の調査では、病院勤務の医師のうち54.9%がジェネリックに対して先発医薬品との「効果・副作用の違い」や「使用感の違い」を理由に「不信感がある」と回答している。現場の医師の処方権や患者の希望を損なわない方法で取り組みを進めるべきである。

 29頁「第3章 医療費適正化に向けた目標及び目標達成による医療費の推計 第2節 目標達成による医療費の推計」において、表「医療費効果の内訳(2023 年度(H35))」が示され、特定健診等の実施率の達成による適正化効果が7億円と述べられている。しかし、80頁の「参考資料」「(2)国民健康保険特定健診・保健指導受診率・実施率と医療費の保険者別分布 ① 特定健診受診率と1 人当たり医療費の保険者別分布(平成27 年度市町国保)」でも明らかなように、特定検診による医療費抑制効果についてはエビデンスに乏しく、「メタボ健診はむしろ治療の必要が乏しい患者の掘り起こし=医療費増につながる。長期的に見ても、医療費抑制効果はない」(二木立「診療報酬本体プラス改定の意味 行き詰まる医療費抑制政策 負担増路線の登場も『週刊東洋経済』2007年12月29日・2008年1月5日号:146頁」)との指摘もある。どのような算定方法に基づいて、こうした効果を見込んでいるのか明らかにすべきである。本来、特定健診は医療費抑制を目的とするのではなく、県民の健康増進を目的とするべきである。

 37頁「第4章 目標達成に向けた取組等第1節 県民の健康の保持の推進」の「・がん検診の受診状況」において「がん検診を受けない理由については、『費用がかかる』、『心配なら医療機関を受診する』がともに約1/3を占め」とされており、「費用がかかる」が一番多い理由となっている。この理由を解消するための、具体策を明記すべきである。

 40頁「第4章 目標達成に向けた取組等第1節 県民の健康の保持の推進」の「② こころの健康づくり」では「20~59 歳の自殺者が自殺者全体の約5割を占め、その原因や動機として、健康問題が36%、経済生活問題15%、勤務問題14%となっており、全年齢に比べ、仕事のストレスや職場での人間関係等の勤務問題が占める割合が高くなっています。」とされている。当該年齢における自殺の原因や動機として最も多い「健康問題」について更なる分析と具体策を明らかにすべきである。

 45頁「第4章 目標達成に向けた取組等 第1節 県民の健康の保持の推進」の「(5) 歯及び口腔の健康づくり」において、「第1次計画に定める目標『過去1年間に歯科健康診査を受診した人の割合の増加(20 歳以上)』『かかりつけ歯科医をもつ人の割合の増加』『定期的な歯石除去や歯面清掃する人の割合の増加(20 歳以上))『歯間清掃用具を使用する人の割合の増加(20 歳以上)』は改善しています。」とされているが、当会が県内の小中高等学校、特別支援校を対象に実施した「2016年度学校歯科治療調査」では、学校歯科健診で要受診の診断を受けた児童・生徒の65%が未治療で、口腔崩壊(むし歯が10本以上ある、歯の根しか残っていないような未処置歯が何本もあるなど、咀嚼が困難な状態)の生徒・児童がいる学校が35%もあることが明らかになった。成人前の歯及び口腔の健康づくりについても、調査、分析し対応策を明記すべきである。
 県教育委員会は「検診後の追跡調査はしておらず、『受診を促すまでが義務で、後は保護者の責任』」(「毎日新聞」二〇一七年五月一九日付)との立場を明らかにしているが、東北大学歯学部の相田潤准教授のグループによれば、親の教育歴が低い家庭の子どもは、教育歴の高い家庭の子どもより有意に虫歯の罹患状況が高いことを、2017(平成29)年4月に発表している。親の貧困・格差の是正も視野に入れた対策を検討するべきである。
 また、「2016年度学校歯科治療調査」では、学校で歯科についての保健指導を「していない」とする回答が16.8%に上った。年に数回の歯科医師や歯科衛生士による保健指導を年に数回行うなど、歯科検診から歯科受診にいたる働きかけや歯の健康教育を行うことを盛り込むべきである。

 48頁「第4章 目標達成に向けた取組等 第2節 医療の効率的な提供の推進」では「1 病床の機能分化・連携」では「地域医療構想による医療提供体制を確保するためには、国・県・市町が連携して施策を推進すること、県民が適正受診や在宅医療について理解を深めることなど、各々が責務を果たすことが必要です。」とされているが、「各々の責務」とは誰のどのような責務を指すのか具体的に明示すべきである。

 50頁「第4章 目標達成に向けた取組等 第2節 医療の効率的な提供の推進」の「4 ジェネリック医薬品(後発医薬品)の使用促進」について「【主な取組例】 ・ 兵庫県保険者協議会を活用した保険者による差額通知の実施」とあるが、保険者による「差額通知」の実施に重点をおくことで、理解度の高低や経済的格差による医療格差を呼び込まないか危惧される。「差額通知」に通知の目的と、後発品使用時の利点と欠点について明記すべきである。

 54頁からの「参考資料」について、分布図において数式や決定係数等を明らかにすべきである。

 80頁「(注)健診受診率と1 人当たり医療費は必ずしも逆相関の関係にはなっていない。1 人当たり医療費の高低には現時点では地域差の特色の方が強いと思われる。」とあるが、その根拠を明らかにすべきである。また、これは「解説」ではなく「考察」であり、記載場所が不適切である。

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