兵庫県保険医協会

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【パブリックコメント】兵庫県老人福祉計画(第7期介護保険事業支援計画)(原案)に対する意見(全文)

2018.03.15

 兵庫県保険医協会は、県が実施した兵庫県老人福祉計画(第7期介護保険事業支援計画)(原案)」へのパブリックコメントとして、以下の意見を送付した。全文を掲載する。

 

はじめに

 地域包括ケアシステムは、超高齢社会において、「高齢者が可能な限り住み慣れた地域で・・、必要とする医療、介護、予防、住まい、生活支援が包括的に提供される」ように「深化・推進」するものであり、入院・外来受診の抑制や医療から介護へのサービスの付け替え等による医療・社会保障費の削減とは相いれないものであることを共通認識とすべきである。そもそも、専門家から「少なくとも重度の要介護者・患者の場合には、地域・在宅ケアの費用が施設ケアに比べて高いことは、1990年代以降、医療経済学の膨大な実証研究により確立された国際的常識になっています」(二木立「リハビリテーション医に必要な医療経済・政策学の視点と基礎知識」『文化連情報』436号:16-24,2014。)という指摘がある通り、在宅ケアには非常に費用がかかることを認識すべきである。
 本計画には様々な形で「主な取組」や「推進方策」が記されているが、財政的・人的裏づけを持たなければ実現性に乏しくなる。ついては、県においては必要な財源を確保するとともに、国に対する介護報酬や関連予算の増額等の働きかけを行うべきである。

 10頁「第1部 概要(第1章 第7期計画について) 4 圏域の設定」において、「介護保険法第118条第2項の規定により県が定める老人福祉圏域は、市町間の保健・医療・福祉に関するニーズと施設整備などのサービス供給体制の調整を広域的に進め、医療と介護の連携強化を図る観点から、引き続き、保健医療計画で定める2次保健医療圏域と同一区域とし、これまでの10圏域を改め8圏域とします。」、「《2次保健医療圏域の統合》保健医療計画改定にあたり、中核的な医療機関の分布、患者の受診状況などを総合的に勘案し、現行医療圏域で高度、特殊な救急医療体制を一体的に確保している阪神南圏域と阪神北圏域、また中播磨圏域と西播磨圏域がそれぞれ統合されます。」とされているが、現行医療圏域で確保できなかった医療体制を、圏域を統合することによって解決するのではなく、各2次医療圏域で完結的な医療提供体制を整備すべきである。また、老人福祉圏域は、「重度な要介護状態となっても住み慣れた地域で自分らしい暮らしを人生の最後まで続けることができるよう、住まい・医療・介護・予防・生活支援が一体的に提供される」地域包括ケアシステムを整備するために、住み慣れた地域を圏域として設定すべきである。

 27頁「第2部 推進方策(第1章 地域包括ケアシステムの深化・推進) Ⅰ 介護サービスの充実強化 第2節 介護サービスの質の向上」において、「◇要介護認定者への介護サービス提供状況(平成29(2017)年→平成37(2025)年)」が図示されているが、施設介護が22%の定員増に対して、居宅系サービスの定員増は25%であり、「地域の実情や高齢者のニーズに応じて、定期巡回・随時対応型サービス等の在宅サービスと特別養護老人ホーム等の施設サービスのバランスのとれた介護サービスの基盤整備を推進します。」とされているが、そうであれば、高齢化の進展との関係で施設介護の充実こそ必要となるのではないか。

 36-37頁「第2部 推進方策(第1章 地域包括ケアシステムの深化・推進) Ⅰ 介護サービスの充実強化 第2節 介護サービスの質の向上  4 特定施設の整備及び特定施設入居者生活介護の指定促進 施策の方向 (1) 有料老人ホーム」において、「適切な運営が行われるよう、有料老人ホーム設置運営指針等に基づき指導・監督を進めていきます。」等とされている。有料老人ホームは民間業者による経営が多く、利益を優先するあまり必要なサービスが受けられなかったり、入居金等を巡るトラブルが発生しがちであるので、介護保険施設の整備を優先すべきである。同項目「(2)サービス付き高齢者向け住宅」についても同様である。

 44頁「第2部 推進方策(第1章 地域包括ケアシステムの深化・推進) Ⅱ 高齢者が地域で自分らしく暮らしのための仕組みづくり 第1節 介護予防・生活支援の基盤整備の推進 1 介護予防・生活支援サービスの充実 現状と課題」において「総合事業の実施にあたっては、既存の事業者によるサービスの提供だけでなく、身近な地域で住民が主体となった地域活動を支援するとともに、高齢者がサービスの担い手として生きがいをもって活動し、地域社会に貢献することを促進します。」とされているが、地元介護事業者のスタッフ不足と大手事業者の撤退などにより、担い手を確保できない市町がある。県として、事業者を確保するために市町の支援を行うべきである。

 46頁-50頁「第2部 推進方策(第1章 地域包括ケアシステムの深化・推進) Ⅱ 高齢者が地域で自分らしく暮らすための仕組みづくり 第2節 地域ケア会議の推進 施策の方向」において、「地域ケア会議の目的としては、高齢者の身体機能の維持・改善だけではなく、その生活に寄り添う『その人らしい生活が続けられるような支援を行う』ことを主な目的とすることを徹底します。」とされている。また、同「第3節 地域包括支援センターの機能強化 施策の方向」において、「すべての支援センターが、地域の実情に応じてその機能を十分に発揮し、高齢者一人ひとりにきめ細やかな対応を行えるよう市町及び支援センターを支援します。」とされている。しかし、全国的に一部の自治体ではこうした会議体が中心となり、「自立支援」に名を借りて、介護サービス利用者に介護保険制度からの「卒業」を強い、必要な支援を打ち切っているとの報告もある。そうしたことのないよう、介護サービス利用者それぞれのニーズに合わせて、各会議体が機能を発揮することが必要である。

 56頁「第2部 推進方策(第1章 地域包括ケアシステムの深化・推進) Ⅲ 医療・介護連携の推進 第1節 医療との連携強化 1 在宅医療の推進 (1) 在宅医療の推進 施策の方向」において、「○ 地域におけるかかりつけ医・歯科医の支援体制を確立するとともに、その必要性について広報し、普及、定着を促進するとともに、在宅療養が必要な方に対する訪問診療の提供を促進します。」とされているが、超高齢社会を迎えて健康長寿の延伸のために、口腔ケアの重要性、歯と全身の健康との密接な関係が注目され、口腔機能の維持・増進が認知症や脳卒中、転倒の予防など健康長寿にもたらす効果が重視されている。しかしながら、推進方策の全般にわたって、歯科医師と歯科衛生士による歯科医療や口腔ケアの関与が明記されておらず、歯科医療機関との連携が具体的でない。とくに要介護者の歯科ニーズは高いが実際の提供はいまだ少なく、需要・供給に差がある。健康寿命を延伸するために、高齢者の潜在的な歯科需要を掘り起こして全身疾患の予防につながるよう、具体的な推進施策をはかるべきである。

 57頁「第2部 推進方策(第1章 地域包括ケアシステムの深化・推進) Ⅲ 医療・介護連携の推進 第1節 医療との連携強化 1 在宅医療の推進 (1) 在宅医療の推進 主な取組 ○ICTを活用した在宅医療ネットワークの整備」において、「在宅医療を支える医師間・多種職間の連携を円滑に進めるICTツールを活用し、地域における在宅医療ネットワーク体制の基盤整備を進めているところです。」とされているが、セキュリティの強化と漏洩が生じた場合の対応体制、責任の所在を明らかにすべきである。

 84頁「第2部 推進方策(第2章 介護人材の確保及び資質の向上) 第1節 介護人材の数等の推計 現状と課題」において「○ 介護業務については、短時間勤務や日勤のみなど様々な勤務形態があり、また、公的介護保険制度に基づく介護報酬を主たる事業収入とする比較的安定した業種であるにもかかわらず、「夜勤などがあり、きつい仕事」、「給与水準が低い仕事」、「将来に不安がある仕事」など、否定的な見方のみが流布され、マイナスのイメージが生じていることが人材確保の阻害要因の一つと考えられます。」とされているが、「夜勤などがあり、きつい仕事」、「給与水準が低い仕事」、「将来に不安がある仕事」は事実であり、「イメージ」ではない。事実の改善こそが必要である。そのために、とりわけ重要なのは88頁「第2部 推進方策(第2章 介護人材の確保及び資質の向上) 第2節 介護人材の確保・定着と資質の向上 (3) 魅力ある職場づくり支援施策の方向」に記されている「○ 福祉・介護人材の処遇改善に向けた継続的な取組を国に提案します。」との取り組みをさらに進める必要がある。

 92頁「第2部 推進方策(第2章 介護人材の確保及び資質の向上) 第3節 医療人材の確保・定着と資質の向上」において、「○ 女性医師の増加や開業医指向の高まり、医療の高度化・専門分化が進む中、新医師臨床研修制度の創設を契機として、勤務医の不足や診療科、地域における医師の偏在が顕在化し、自治体病院の使命である地域医療の確保に支障が生じています。」とされている。医師は除外されているとはいえ、時間外労働の罰則付き上限規制を盛り込んだ「働き方改革実行計画」が昨年発表された。県立病院においても年間800時間を超えて働く医師が全医師の14%に上っているなど過酷な勤務実態がある。この点、追記すべきである。また、【推進方策】にも厚生労働省の医師の働き方改革に関する検討会でまとめられた「医師の労働時間短縮に向けた緊急的な取組」はもちろん、抜本的な医師養成数の増員も含めて、県としての対策を明記すべきである。

 94頁「第2部 推進方策(第3章 介護保険制度運営の適正化(介護給付適正化計画) 第1節 介護給付適正化事業の推進」において「○ 県内各市町における平成28年度の適正化主要5事業(①要介護認定の適正化②ケアプランの点検③住宅改修の点検等④介護給付費通知⑤縦覧点検・医療情報との突合)の取組状況は、平成26年度(前回計画策定前)と比較すると進展が見られます。」とある一方で、「◇平成28年度 県内市町の適正化主要5事業実施状況」の表において、「主要5事業項目」の順が「④縦覧点検・医療情報との突合」「⑤介護給付費通知」となっている。数字に取り違えは無いか精査が必要である。

 94頁「第2部 推進方策(第3章 介護保険制度運営の適正化(介護給付適正化計画) 第1節 介護給付適正化事業の推進 1 介護給付適正化「主要5事業」 (1) 要介護認定の適正化 施策の方向)において、「○ 市町によって審査判定にバラツキが生じないよう、要介護認定に係る法令、仕組み等を正しく理解するための研修の充実を図っていきます。」といわれているが、要介護認定の際には、当事者の個々の状況を丁寧に把握し、適切な認定を行うことが求められる。そのため、審査判定のバラツキを解消するという名目で、公表されない内規のようなものを作成したり、審査判定が厳しい市町の基準に統一されないように注意すべきである。

 97頁「第2部 推進方策(第3章 介護保険制度運営の適正化(介護給付適正化計画)第1節 介護給付適正化事業の推進 1 介護給付適正化「主要5事業」 (4) 縦覧点検・医療情報との突合 主な取組」において、「○ 市町が縦覧点検及び医療情報の突合を実施するにあたり、県国民健康保険団体連合会への委託が可能であり、費用対効果も高いことから、未実施市町に県国民健康保険団体連合会への委託検討を促すとともに、既に実施している市町も、実施月数・回数の拡大を図るよう働きかけます。」とあるが、機械的な縦覧点検及び医療情報の突合により、介護事業者や医療機関が不利益を被らないように実態に合わせた請求を認めるように注意する必要がある。

 104頁「第2部 推進方策(第4章 高齢者の持てる力を活かす支援) 第1節 高齢者の持てる力を活かす場の確保 3 高齢者の活動(老人クラブ活動など)の促進 現状と課題」において「◇圏域別の老人クラブの加入率(平成29年4月1日現在)」が示されており、都市部において加入率が低いようであるが、入率が低い圏域について、その原因と対策を明記すべきである。

 114-158頁「第3部 圏域別の状況」において、「計画値精査中」とあるが、精査途中のものにはコメント不能なので、精査した後再び意見公募を行うべきである。

 172頁-194頁「巻末資料 県民モニターアンケート」「巻末資料 平成29年度県民意識調査『2030年の兵庫の姿』の調査結果」において「調査対象者」がそれぞれ「県民モニター」とされているが、県民モニターは県民からの応募によっており、調査の標本として母集団(=全県民)を必ずしも的確に示さない。特に兵庫県は都市部と地方でその状況が大きく異なるため、母集団の属性の明らかでないアンケート結果を全県的な意見とする事は適当でない。回答者の年齢・性別・居住地等の属性を明らかにし、母集団との偏りを検討するとともに、それぞれの項目をクロス集計して地域性を検討すべきである。また、これらのアンケートや調査が県民の声を的確に示しているとすれば、明らかになった県民の個々の要求は精査し、的確に応えられるよう計画を策定すべきである。 たとえば、174頁「不足していると思う診療科」であれば、「産科・婦人科」等の診療科を県立病院等において整備する計画を策定すべきである。

以上


 [NH1]表現がむずかしいな。つまり県全体では「交通事故が少ない」という意見が多くても「明石に交通事故が多い」意見には対策をすべき。

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