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特別インタビュー 神戸大学医学部附属病院 平田健一病院長 地域の診療所・病院とともに兵庫の医療を守る

2018.08.05

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神戸大学医学部附属病院 病院長
平田健一先生 
【ひらた けんいち】1958年生まれ。84年3月神戸大学医学部卒業、同年4月同大学医学部附属病院第一内科入局。92年同大学大学院医学研究科修了。県立柏原病院内科勤務などを経て、95年12月神戸大学医学部内科学第一講座助手。96年9月〜99年6月米国vanderbilt大学、Stanford大学研究員。2001年7月神戸大学医学部附属病院循環呼吸器病態学講師、06年7月同助教授、07年4月同循環器内科学准教授、07年7月同教授、09年4月〜11年1月同大学大学院医学研究科医学研究科長・医学部長補佐、11年2月〜18年1月同大学医学部附属病院副病院長、18年2月〜同病院長、現在に至る

 兵庫県の医療の砦として、医療提供、教育研修、研究開発などの面で多大な役割を果たしている神戸大学医学部附属病院。新専門医制度や医師の働き方改革など激動を迎えている医療界で、いま神大病院が果たすべき役割と将来への展望について、平田健一病院長に、協会の西山裕康理事長と吉岡巌副理事長がお話を伺った。

地域に根差し、最先端の医療を提供する神大病院
 西山 少し遅れましたが、病院長ご就任おめでとうございます。
 平田 ありがとうございます。
 西山 神戸大学は、来年医学部医学科創立75周年、明治2年の神戸病院創立以来150周年を迎えます。現在の、大学病院のミッションや課題をどのように考えておられますか。
 平田 大学病院は、基本理念(表)のもと、医療提供機能、教育研修機能、研究開発機能の三つの使命を果たし、臨床医学の進歩と医療技術の向上に寄与し、医療を通じて社会に貢献することを目的としています。
 吉岡 まず、医療提供機能ですが、大学病院は、患者さんからすると少し遠い存在に感じるのではないでしょうか。
 平田 当院の病床稼働率は92%で、全国の国立大学病院の中で最も高い稼働率です。スタッフが一致協力して、地域で困難な疾病とたたかう患者さんを積極的に受け入れています。ただ、当院の敷地面積は45ある国立大学病院の中で5番目に狭いので、周辺に新たな施設を設置する場所がありません。ですから、さらに積極的に患者さんを受け入れるため、昨年4月、ポートアイランドに神戸大学医学部附属国際がん医療・研究センター(ICCRC)を開設しました。現在60床で稼働していますが、なるべく早く120床の許可病床をすべて稼働させます。現在は、本院で手術待ちの多い泌尿器科や、食道胃腸外科、肝胆膵外科、呼吸器外科などの手術を行っています。
革新的な医療機器の開発
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聞き手 西山裕康理事長

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聞き手 吉岡巌副理事長

 西山 なるほど。患者さんの要望に応える体制を整えられているのですね。もう一つの使命である研究開発に関連して、ICCRCは「先進的治療・革新的医療機器の開発」も担っています。
 平田 はい。ICCRCでは、川崎重工とシスメックスの共同出資企業である「メディカロイド(株)」と協力し、国産の手術支援ロボットの研究、開発を進めています。
 西山 今年、米国製のダヴィンチによる手術について保険収載の範囲が広がりました。普及と発展が望まれる新技術ですが、神戸大学発の国産ロボットが誕生するのは画期的ですね。
 平田 さらに大学病院は、臨床研究中核病院としての承認も目指しています。承認されれば、国際水準の臨床研究や医師主導治験等の中心的役割を担う病院として、より質の高い最先端の臨床研究・治験が実施できます。また、参加する被験者が集まりやすくなり症例の蓄積も増えますし、優れた研究者も集まります。他施設からの相談や研究依頼も期待できます。
 吉岡 次に教育研修機能への取り組みについて教えてください。
 平田 2010年に、米国で医業を行う資格を審査するECFMGが、2023年以降の受け入れについて、国際的な基準で評価・認定を受けている医学部出身者に限ると発表しました。日本でも、日本医学教育評価機構(JACME)が発足し、昨年、世界医学教育連盟から国際認証を受けました。神大出身者が米国などで臨床や研究を行うためには医学部がJACMEの認証を受ける必要がありますので、アウトカム基盤型教育やActive Learningを積極的に導入し、医学部のカリキュラムをさらに改善していきます。
地域医療に配慮しながらすすめる新専門医制度
 西山 グローバル化が進む中、国際都市神戸の医学部として、卒業生が世界で活躍するためにも、大変なご苦労だとは思いますが、一日も早い認証を願っています。
 さて、地域医療に目を向けますと、新専門医制度、医師の働き方改革、医師不足・偏在など、日本の医療は重要な課題の解決を迫られています。神戸大学の取り組みを教えてください。
 平田 まず、新専門医制度における専門医資格認定は、各学会ではなく日本専門医機構が行い、基本的には全員が何らかの専門医資格を取る必要が出てきます。日本専門医機構による認定基準はこれまでよりもハードルの高いものとなり、資格取得には、指導医が充実し、一定の症例数を持つ病院で勤務する必要が出てきます。そうなると若い医師が大学病院などに集中し、第一線を担う民間病院の医師不足を招きかねません。
 吉岡 はい。その点については、会員の病院からも懸念が寄せられています。
 平田 ええ。そこで、神大病院では、県と相談し、関連病院や地域の病院に勤務しながら、専門医資格を取得できるプログラムを組んでいます。また、関連病院の再編・充実にも力を入れています。
 西山 今回の新専門医制度では19番目の専門科として総合診療専門医が位置づけられました。神大でも総合診療専門医のプログラムは用意するのでしょうか。
 平田 本院ではなく、関連病院である県立柏原病院を中心に設置しています。ただ、総合診療専門医は、キャリアパスが見えにくいという課題があるようです。将来は家庭医を目指す、病院内のホスピタリストをめざす、診断学の専門家になる、離島やへき地であらゆることをしたいなど、専攻する医師の中でも目標がかなり異なります。加えて、内科や外科などにおける循環器、消化器に該当するサブスペシャリティとの関連がはっきりしないことも研修医が選択を躊躇する一因だと思います。
 西山 なるほど。ただ、専門性も必要ですが、全身を診るということも大切ですね。
 平田 その通りです。ですから、当院では、総合診療科だけでなく、内科分野などでは特に全身を診るということを徹底して教育しています。
医師の働き方改革に必要なのは医師の増員
 吉岡 専門医制度とも関連しますが、医師の働き方改革についてはどうでしょうか。
 平田 大変な危機感を持っています。国立大学病院でも関東を中心に3分の1の病院が労働基準監督署から立ち入りや是正勧告を受け、中には残業代として数億円の支払いを行った病院もあるようです。
 西山 大学病院では労働時間の把握や管理は難しいですね。
 平田 そうです。病院によっては病棟や外来棟と医局、研究室それぞれに認証システムをつけて、労働時間と自己研鑽を分けているところもありますが、神大病院では施設が一体化していますのでそうした切り分けはできません。だからといって論文を読んだり、研究をしている自己研鑽の時間までを労働だと判断されると大変な人件費になりますし、研究を控えろとも言えません。
 吉岡 厚労省では、対策として勤務間インターバル規制の導入やタスクシフティングなどが議論されています。
 平田 インターバル規制導入も非常にハードルが高いと思います。たとえば、夜間に救急手術をした場合、次の日の外来や手術が規制されると、病院は診療体制を縮小せざるを得ません。
 また、医療行為のタスクシフティングは、特定看護師などに医師の業務を移行させるのですが、やはり最終的には医師の管理や監督が必要で、スタッフ育成にも医師は欠かせません。
 何よりも、そうしたスタッフは、財源的な問題で常勤ではなく期限付きとなり、せっかく養成した有能なスタッフが途中で退職してしまうという問題があります。タスクシフティングも、医師の働き方を改革する抜本的な対策にはならないのではないでしょうか。
 西山 協会は以前より医師の増員を行わなければ、医師の過重労働の問題も地域・標榜科偏在の問題も抜本的な解決は困難だと主張しています。
 平田 おっしゃるとおりです。私たちが研修医だったころには、将来医師が余るとか、勤務先の病院がなくなるなどと言われていましたが、実際には今、医師が余っている病院などありません。医師の増員は必須だと思います。また、医学部に入学する女性が増えていますので、女性医師が働きやすい環境を整備することも非常に大切です。
へき地医療充実のために−地域医療活性化センターの設置
 西山 先ほど少しふれましたが、へき地の医師不足についてはどうでしょうか。大学病院が持つ医師派遣機能への期待が大きくなると思いますが。
 平田 確かに大学病院は医師派遣機能を持っていますが、若い医師を強制的に医師不足地域に送りだすことはできません。一定期間へき地で勤務をした後は、本院に戻すという約束をして確実に守る、そうした信頼関係が必要です。そこで、神大医学部では新たに地域医療活性化センター(図)を設置し、県と連携してへき地を含めた県内医療機関に勤務し、地域の医療充実に努力する優れた医療者を養成しています。以前の養成医は、県が一方的に地域に派遣していました。しかし、今はこの活性化センターが地域医療支援センターと連携して、地域医療の教育研究や県養成医学生のサポート、県養成医のキャリアパス支援を行っています。それにより養成医のモチベーションも定着率も上がっています。同時に、関連病院を整備して、さまざまな地域に若い医師を、責任を持って送り出せる体制を整えることにも力を注いでいます。
診療報酬のプラス改定と消費税損税の解消を
 西山 県民医療の充実のためにはなくてはならない取り組みですね。さて、今年は診療報酬改定が行われました。また、来年は消費税が10%に引き上げられます。病院経営への影響はいかがでしょうか。
 平田 大学病院は、民間病院では難しい移植医療や難病の治療、高度な手術などを行っています。しかし、これらの医療は現在の診療報酬では全く採算が合いません。こうした政策的医療について、もっと十分な評価を行ってもらいたいと思っています。
 また、高度医療を提供するためにも、医学研究を進めるためにも大規模な設備投資は欠かせません。しかし、以前より医療において消費税は非課税となっていますので、大変な金額の控除対象外消費税が病院の負担となっています。税率が10%になれば新たな設備投資が困難になり、ひいては、大学病院の使命である高度医療の提供や医学の発展に悪影響が出かねません。控除対象外消費税の問題は文部科学省や厚生労働省を通じて、改善の要請を行っています。
 吉岡 私たち民間の診療所や病院でも、今の診療報酬は不十分で、医師や医療従事者の待遇や経営の改善が難しいとの声が挙がっています。また、控除対象外消費税も経営を圧迫する大きな問題です。ともに声を上げていければと思います。最後に、地域医療を担う協会の会員医療機関に何かメッセージをお願いします。
ともに兵庫の医療を充実、発展させよう
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ともに兵庫の医療を発展させることを確認した

 平田 医療を取り巻く状況は非常に厳しいですが、大学病院も自治体病院も民間医療機関も一丸となって、兵庫県の地域医療を守らなければなりません。都市部だけでなくそれぞれの地域医療を皆さんと一緒に支えていきたいと思います。
 協会には、病院として保険請求のアドバイスを頂くなど大変お世話になっています。また、個人としても保険医年金などを利用させてもらっています。今後ともよろしくお願いします。
 西山 おかげさまで保険医年金など協会の共済制度は、利率など一般の金融商品より有利な点も多く、勤務医の先生からも好評をいただいています。
 さて、本日は、地域医療に関して先生から大変心強いお言葉をいただきました。私たちも大学病院や関連施設で働く先生方と協力して一緒に、兵庫県の地域医療の充実、発展を守るために力を注ぎたいと思います。大変貴重なお話をありがとうございました。今後ともよろしくお願いします。

表 神戸大学医学部附属病院「基本理念」
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図 神戸大学医学部附属地域医療活性化センターの組織構成
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