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政策解説 みんなでストップ! 患者負担増(1) 受診抑制に拍車かける受診時定額負担

2018.11.15

 政府は「全世代型社会保障」と称し、さらなる給付削減・患者負担増計画を進めている。もし、これらが実施されれば、患者さんの受診抑制に拍車がかかるとして、協会・保団連は、「みんなでストップ! 患者負担増」請願署名に取り組んでいる。今号からそれぞれの制度改悪について解説を行う。第1回目は「受診時定額負担」を見ていく。

 受診時定額負担とは、すべての患者に、これまでの窓口負担に加えて100円から数百円の定額負担を求めるものである。
 これは民主党政権下の2011年、政府・与党社会保障改革検討本部の下に設置された「社会保障改革に関する集中検討会議」で厚労省が提案したもので、閣議報告された「社会保障・税一体改革成案」にも盛り込まれた。この時は、保団連・協会など多くの医療関係団体や個人の反対で計画は頓挫した。
 しかし、自民党政権下でも、2015年に閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針2015(骨太の方針2015)」に「かかりつけ医の普及の観点からの診療報酬上の対応や外来時の定額負担について検討する」と再び盛り込まれ、同年に発表された「経済・財政再生計画改革工程表」では具体的に「2016年末までに結論」を得るとされた。
 同計画の具体化を議論した2016年10月の厚労省の社会保障審議会医療保険部会では、日医の松原謙二副会長が「(定額負担は)不適切だ」と厳しく批判。健保連の白川修二副会長(当時)も「国民の納得を得られると思えない」と反対を表明した。こうしたことから、当初の計画通り2016年中までに結論を得ることはかなわなかった。
 しかし、2016年12月末の予算編成過程における厚労相・財務相間の「大臣折衝事項」では、「関係審議会においてさらに検討し、その結果に基づき必要な措置を講じる【平成30年度末まで】」と記載された。これを受け、現在も議論が進んでいるのである。
実質的には4割負担も?
 政府は、11年の段階で「例えば、初診・再診時100円」とし、年間4100億円の医療給付費が削減できるとの試算まで出している。これまでの医療費窓口負担拡大の流れを考えれば、ゆくゆく500円や1000円と高額になることも考えられる。
 定額負担が500円になれば、5000円の医療費がかかった場合、3割の1500円に500円を加えた2000円を、患者は窓口で負担することとなり、実質4割負担となる(図)。
 健康保険法は、2002年に医療費窓口負担が3割負担に改悪されたとき、「将来にわたって患者負担は3割を限度とする」と附則で明記した。受診時定額負担の導入は、国民との約束に反するものである。
日本とは全く違う仏の定額負担
 また、今年10月に開催された財政制度等審議会ではフランスでの同様の制度を例に挙げ、日本も制度を導入すべきだとしている。フランスの公的医療保険制度では自己負担率は概ね3割で、それに受診毎に1ユーロ(約130円)の負担が追加される。一見すると日本の制度ときわめて類似している。
 しかし、フランスでは3割負担の部分は相互共済制度による代理支払いが行われており、実質的な患者負担はない。そのことを問題視して導入されたのが、1ユーロの定額負担であり、フランスでは1ユーロの負担で外来受診と薬剤処方を受けることができる。日本の窓口負担とは実態が全く異なるのである。
 実際、日本ではすでにこの間の窓口負担増や格差拡大で受診抑制が増加しており、保険証を持っているにもかかわらず、病気が悪化するまで医療機関を受診せず、患者が死亡するケースさえある。
 受診時定額負担が導入されれば、この傾向にさらに拍車がかかることは明白である。医師として、患者の命を危険にさらすこの制度改悪に断固反対しなければならない。
「かかりつけ医」以外受診できなくなる
 財務省は今年の財政制度等審議会で「かかりつけ医...への誘導策として定額負担に差を設定する」としている。「かかりつけ医」以外を受診した際には、より高額な受診時定額負担が課されるということである。さらに、16年には同省は「制度のイメージ」として、患者が保険者に登録した「かかりつけ医」と、その「かかりつけ医」と相談して指定した耳鼻科や眼科以外を受診した際に、受診時定額負担が発生するという仕組みを示した。その上で将来的には、新専門医制度における「総合診療科」専門医に、専ら「かかりつけ医」=「登録医」としての役割を担わせることも提案している。これは医療界に専門科による分断をもたらすものであると同時に、患者のフリーアクセスを制限するものである。だれでも、どこでも、保険証1枚で同じ負担で最適な医療を受けられるという国民皆保険制度の特徴を変質させるものであり、許すことはできない。

図 5,000円の医療費がかかった時
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