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ストップ!負担増 政策解説(3) 紹介状なしの病院受診 初・再診料の保険外し

2020.12.15

 前回解説を行った紹介状なしの病院受診時の定額負担の引き上げと対象病院拡大について、12月2日に開催された社会保障審議会医療保険部会でより具体的な提案が行われた。今回はその詳細について解説する。

 同部会では具体的に「(1)新たに設けられる『紹介患者への外来を基本とする医療機関』にも、対象医療機関を拡大する」「(2)かかりつけ医機能を担う地域の医療機関を受診せず、あえて紹介状なしで大病院を受診する患者の初・再診については、一定額を保険給付範囲から控除し、同額以上に定額負担の額を増額する」「(3)大病院からかかりつけ医機能を担う地域の医療機関への逆紹介を推進するとともに、再診を続ける患者への定額負担を中心に、除外要件の⾒直し等を行う」の提案がなされた。
 (1)について、当初、厚生労働省は一般病床200床以上を持つすべての病院に対象を広げることを狙っていたが、病院団体等の反対を受け、義務化の対象を一般病床200床以上で「紹介患者への外来を基本とする医療機関」に限定し、すでに対象となっている特定機能病院や一般病床200床以上の地域医療支援病院以外は、手挙げ方式とする方向を示した。
 「紹介患者への外来を基本とする医療機関」は、これまで「医療資源を重点的に活用する外来(仮称)」とされてきた医療機関を指す。今年3月13日に開催された「第19回医療計画の見直し等に関する検討会」では「類型<1>医療資源を重点的に活用する入院の前後の外来」「類型<2> 高額等の医療機器・設備を必要とする外来」「類型<3> 特定の領域に特化した知見を有する医師・医療人材を必要とする外来」と3類型に定義した。その後、類型<3>は「紹介患者に対する外来」に修正された。
 厚労省は「病床機能報告」に倣い、地域における外来機能の実態を把握するため、今後「外来機能報告(仮称)」を行うとしており、一般の診療所も対象とすべきとの意見も根強い。今回の厚労省案が実現すれば、最終的に重装備の診療所から一定数の一般病床を持つ病院はすべて、かかりつけ医からの紹介患者を診るべき医療機関とされる可能性が高い。そうなれば現在のフリーアクセスを基本とした日本の地域医療は大きく変化し、原則かかりつけ医を通してでしか検査や手術、入院できない制度となる。
 (2)は、紹介状なしで大病院を受診する患者の初・再診料の一部を保険から外し、病院はその分を患者から徴収する定額負担で賄うという制度である(図)。厚労省は、こうした選定療養費制度はすでに「180日以上の入院」で導入されているというが、今回対象となる初・再診料は基本診療料である。今後さまざまな診療料に選定療養費制度を導入し、患者から自由料金を得た分は保険給付しないとなれば、2002年の健保法改正法附則の「将来にわたって7割の給付を維持する」という定めが反故にされる。
 (3)は、再診において「特別の料金を徴収しなかった患者」のうち、「保険医療機関(担当医師)が当該保険医療機関を直接受診する必要性を特に認めた患者」の割合が、23.8%を占めていることを厚労省や一部の有識者が高すぎると問題視し、医師の判断で安易に受診を続けないように定額負担の免除要件を厳しくするということである。しかし医師の判断による再診さえも問題視するのはフリーアクセスどころか医師の権限の否定である。
 紹介状なしの大病院受診時の定額負担を選定療養としていることからも、政府には紹介状なく大病院を受診することは、必要がないのに個室に入院するような贅沢であるという考えが根底にある。
 今回の新型コロナ禍でも、政府はPCR検査数を抑制しつづけ、国民に受診抑制を促した。そして感染拡大局面に際しても、政府が行うべき公衆衛生行政を放棄し、一般の医療機関に検査や診療を丸投げした。このことからも政府のいう「上手な医療のかかり方」など、単に医療費を抑制するという目的しかないことは明らかである。

図 病院受診時の初・再診料の一部の保険給付外し
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