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山極壽一京大名誉教授が講演 特別政策研究会に100人超 医療の重要性高まる時代に

2021.03.15

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公共財の重要性が増す〝遊動の時代〟となると語る山極壽一先生

 コミュニケーションから読み解くポストコロナ社会とは--。協会は2月27日、協会会議室で、京都大学前総長の山極壽一名誉教授を講師として招き、特別政策研究会「〝遊動の時代〟を迎えて~ポストコロナ社会をどうつくるか~」を開催。会場とオンラインであわせて103人が参加した。

 霊長類学・人類学が専門である山極氏は人類史を振り返り、1万2000年前に農耕牧畜が始まった当時500万人しかいなかった人口は、産業革命を経て、工業社会・情報社会となって現在78億人に達し、爆発的に増えた人間によって開発が進められ、森林は減少し、生物多様性が失われるなど地球が危機に陥っていると説明。
 人間は自分たちが地球を支配していると考えていたが、今回の新型コロナウイルス感染症の拡大は、目に見えない微生物やウイルスによって地球が支配されているということに気づく機会となったとした。本来、野生動物は熱帯雨林などの自然でウイルスと共存してきたが、人間が介入したことによって感染症が地球全体に拡大する事態を招いており、特に新型コロナウイルスは、集団を作り、人がグローバルに活動するという現代社会の特徴に乗じてパンデミックを起こしたとした。

人間の進化に必要な「三密」

 感染拡大防止策として「三密」が避けられているが、山極氏は人間の脳の進化は三密、つまり言葉以前の濃密な接触を伴うコミュニケーションにより促進されており、三密は人間にとって生きる上で大切なものと訴えた。
 霊長類の大脳の大きさは社会の規模の増大に正の相関を持つという研究を示し、脳が大きくなると集団が大きくなるとして、特にコミュニケーションの大切さはゴリラが教えてくれると強調。ゴリラは、顔と顔を合わせ、挨拶、仲直りという対面交渉を行うが、猿には見られないと紹介し、これは共感力を高める仕組みとして共食と共同保育が行われることにより生まれたものと考えられると語った。
 また新型コロナウイルス感染拡大により、医療や介護、子育てや家事などサービス労働の重要性、また文化や芸術の価値が問い直されているとして、人間の豊かさとは何かが問われているとした。
 そしてこれを乗り越えたポストコロナ社会は、さらに人も物も動く〝遊動の時代〟となり、所有の概念が薄まり、共有が拡大するだろうと展望。共有物には公共財である医療や教育も含まれ、これらの制度を充実させることでベーシックインカムと同様の状態が実現できるだろうとした。
 さらにポストコロナ社会でも、人間には五感を通じた交流が不可欠だとして、感染予防を行い通信設備も活用しながら、その形を模索することとなるとした。

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