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新型コロナウイルス感染症関連第5回アンケート調査結果 診療所3割以上が感染者へ往診 ワクチン接種8割が協力

2021.06.05

 新型コロナウイルス感染症の拡大から1年余りが経過したが、第4波により病床が逼迫し、自宅療養者が増えている。こうした中、民間病院や診療所にも新型コロナ患者への医療提供やワクチン接種への協力が一層求められている。協会では県内医療機関の対応状況や不安や疑問点などを具体的に把握し、厚生行政に反映させるため、第5回目のアンケートを行った。アンケートは5月17日から5月25日までを期間に、5337の会員医療機関を対象に行い518件から回答を得た(表)。

未だに深刻な受診抑制

 今年4月のレセプト件数とコロナ禍以前の一昨年4月のレセプト件数の比較について聞いたところ、回答した医科診療所の61.0%、病院の56.3%、歯科診療所の52.5%が「減った」と回答した。これまでのアンケート結果と比較すると「減った」割合は改善したものの、依然として受診抑制等による患者の減少が続いていることが明らかになった(図1)。
 歯科では、受診抑制により急性疾患の受診遅れや慢性疾患の増悪について54.5%の医療機関が「あった」とした。具体的事例としては外来では「GA・AA」と「Pul」が最も多く、「抜歯」「Per」と続いた(図2)。訪問診療では「歯周疾患やう蝕の進行」が最も多かった。
 各医療機関に一昨年4月と比べた今年4月の医療収入と医業費用(経費)について聞いたところ、医業収入について医科診療所では59.2%が「減った」と回答した。病院で「減った」のは43.8%、歯科診療所では49.5%だった。医業費用については医科診療所の32.5%、病院の34.4%が「増えた」と回答。歯科診療所では49.5%に上った。各医療機関からは「スタッフがコロナを恐れて退職したため、退職金支給が発生した」(医科診療所)、「コロナ疑い患者用病床の確保のためにその他の病床を減らしたため入院患者が減少した」(病院)との具体的な声も寄せられた。新型コロナ禍における医療機関の経営悪化は1年以上続いており、このままの状況が続けば、閉院等の増加が危惧される。医療は「社会的共通資本」であり、その提供体制の縮小は、地域住民の健康悪化につながるため、国の責任による全ての医療機関を対象とした減収補填が求められる。

6割の医科診療所が発熱患者受け入れ

 医科診療所に発熱患者の受け入れについて聞いたところ、57.7%が「受け入れている」と回答した。一方で「発熱等診療・検査医療機関」の指定については、医科診療所の34.0%、病院の37.5%が指定を受けていた。多くの医療機関が「発熱等診療・検査医療機関」の指定を受けていないものの、実際には発熱患者を受け入れていることが浮き彫りになった。とりわけ、小児科では95.2%の診療所が発熱患者を受け入れているが、「発熱等診療・検査医療機関」の指定を受けているのは38.1%に留まっていた(図3)。発熱患者の受け入れについてアンケートの自由記入欄には「通常診療の合間に感染防護服に着替え、駐車場に設置した発熱外来に移動するなど、非常に手間と時間がかかる」「紹介先病院の病床が足りない」などの困惑の声も寄せられた。
 「発熱等診療・検査医療機関」の指定は、専用の診察室等による時間的・空間的動線分離や、検査・診療報告等の条件が多く指定を申請することが困難な医療機関が多数あると考えられる。そのため多くの診療所が、指定を受けることなく相当数の発熱患者を受け入れている。政府は、こうした医療機関の役割を評価し、「発熱等診療・検査医療機関」の指定にとらわれず、財政措置をとるべきである。

「発熱等診療・検査医療機関」等への補助金の拡充・継続を

 「発熱等診療・検査医療機関」に対し、政府が各医療機関に体制の継続については要請するものの補助金を打ち切ったことに対して聞いたところ、「反対」と回答した医科診療所が52.7%に上り、「賛成」は0.8%だった。一方、補助金終了後の体制については、「継続している」が83.2%で、「体制を一部変更して、継続する」が9.2%だった(図4)。ほとんどの「発熱等診療・検査医療機関」が、補助金が受けられなくてもなんらかの形で、体制を維持するとしている。「補助金がなくても、看護師を増員し地域社会に貢献し続けたい」「地域医療を守るためこれまで通り行っている」との声がある一方で「ワクチン予防接種に関する問い合わせを含め業務量が増えている中で、発熱者診療を行う負担はさらに大きく一定の補助はしていただきたい」「補助金がなければ体制を縮小せざるを得ない」との声も寄せられた。地域の診療所は、経営的な不利を顧みず、第一線で発熱患者の診療・検査を担っており、補助金は続行すべきである。

約3割の病院が新型コロナ患者受け入れ

 新型コロナウイルス感染症あるいは疑い患者の入院での受け入れについて病院に聞いたところ、28.1%が「受け入れている」と回答した。病院内での新型コロナウイルス患者の発生については、50.0%の病院が「発生した」と回答。発症した人は「職員」が最も多く、「入院患者」「外来患者」と続いた。各病院からは「トリアージや発熱外来、ワクチン接種などかなりの人手を要している。第4波では陽性患者が発生しても転院が難しくなり、受入判断が難しくなった」「入院された患者が陽性になり、その都度、接触状況調査や検査対応に追われた」など現場の苦労が多数寄せられた。受け入れた患者が重症化したり、入院患者に感染者が発生しても、専門病院への転送が困難であること、病院内での患者発生は、その対応に多大な時間、労力、費用を必要とし、日常診療に大きな影響を及ぼしていることが明らかになった。病床逼迫解消、新型コロナウイルス感染症以外の疾病等に対する医療提供体制の維持のためには、病院のクラスター制御、機能分化と連携、速やかな医療従事者増員と財政的支援が必要である。

3割以上の診療所が新型コロナ患者への往診実施

 外来以外での新型コロナウイルス感染症患者への対応について「実施・実施予定のもの」を医科診療所に聞いたところ、内科診療所では、「自宅療養、入院・入所調整中の患者への往診・訪問診療」が34.6%と最も多く、以下「宿泊施設への出務やオンコール」が23.0%、「介護施設への往診」が13.3%であった(図5)。また、こうした対応について「不安を感じていること」を挙げてもらったところ、「自身や看護師の感染」が32.7%と最も多く、「悪化・急変時の対応」や「日常診療との両立」などが続いた(図6)。自由記入欄には「少しでも地域医療に貢献したいと思い、対応すると手を挙げたが、後方支援(入院)を期待できない中で対応することにストレスが多い」「ステロイドの多量投与により頻尿症になった患者のフォローを行っている」「退院後の患者が再びPCR検査陽性になったが再入院にはならなかったので、増悪しないようにフォローした」「自宅療養中の方への往診について、PPE対応を含めて多大な時間が必要なため少人数しか対応ができない。患者さん1名に2時間かかる」「呼吸不全の方への在宅酸素を導入しているが、品薄で手配が大変」となど現場のリアルな実態が寄せられた。

8割の医療機関がワクチン接種に協力

 ワクチン接種について各医療機関の対応をたずねたところ、医科診療所では57.4%が「自院での個別接種」を行うと回答。「集団接種会場への出務」も47.8%に上った。病院では「自院での個別接種」は90.6%とほぼ全ての医療機関が実施するとした(図7)。
 また、ワクチン接種についての課題については、「来院や電話等による予約受付の混乱」が医科診療所、病院ともに最も多く、それぞれ57.9%、65.6%が課題として挙げた(図8)。具体的に「公的予約システムが非常に未熟で、利用取下げを申請しましたが、いつサイトからの予約が止まるのか不明といわれている」「接種可能な医療機関として広報に先に載ったが実際にはインターネット予約のための登録ができていなかった」「キャンセルがでた場合のワクチンの扱いが今から心配」「毎日問い合わせの電話で診療に支障が出ている」「もしアナフィラキシーショックで救急搬送が必要になったときにすぐ支援病院が見つかるかどうか不安」「費用が見合わない」など、予約システムやワクチンの管理、万が一の際の支援体制、コストなどさまざまな不安の声が寄せられている。ワクチン接種に対する報酬については25日、政府が接種回数に応じた報酬の加算を発表した。ワクチン接種にかかる報酬はかねてから労力に見合わないとの声が上がっており、協会は国会議員等を通じて改善を要望していた。

歯科医師も7割が接種協力の意向

 政府が、歯科医師によるワクチン接種を特例として認めたことについて、62.4%の歯科医療機関が「賛成」した。「歯科医師はワクチン接種程度のことはできる能力があるので、打ち手不足なら協力するのは当然」との声が寄せられる一方、「将来的に後遺症等が出現した場合、責任を行政がとることができるのか」「緊急時対応に対する責任に不安がある」「口腔内と腕への筋肉注射は術式が異なると思う」など不安の声も寄せられた。
 また、実際の出務については13.9%の歯科医療機関が集団接種会場への出務を決めており、「自治体から要請があれば出務する」との回答とあわせて66.4%が協力の意向を示した(図9)。協会は、今回の歯科医師によるワクチン接種について、前向きな歯科医師が思わぬ不利益を被ることがないよう「違法性を阻却する」とした厚生労働省医政局による通知ではなく、法改正による対応を求めている。

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