兵庫県保険医協会

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特別オンラインインタビュー 沖縄県保険医協会に聞く米軍基地問題
〝基地反対〟ぶれずに闘い抜く

2022.04.25

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沖縄県保険医協会会長
高嶺 朝広先生
【たかみね ちょうこう】1962年、沖縄県生まれ。琉球大学医学部卒業後、沖縄医療生活協同組合で勤務。中部協同病院、沖縄協同病院副院長を経て、2009年、とよみ生協病院院長(現職)。2009年7月より沖縄県保険医協会副会長、2021年8月より同会長

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沖縄県保険医協会理事・前会長
仲里 尚実先生
【なかざと なおさね】1947年、沖縄県生まれ。普天間高校卒業後、米軍占領下の沖縄から国費留学生として東北大学医学部に進学し、1974年卒業。初期研修を坂総合病院・長町病院、東北大学第一外科。沖縄医療生協沖縄協同病院外科を開設し、中部協同病院院長、老健かりゆしの里施設長を歴任。2008年、オリブ山病院精神科で研修開始、精神保健指定医を取得。同病院副院長を務め、現在は島しょ診療部長。沖縄県保険医協会会長(2009年~2011年8月)、現在は理事。保団連出版部副部長

 政府は沖縄県民の声を聞け--。今年は参議院選挙に加え、沖縄県知事選挙が予定されている。兵庫協会はこれまで、辺野古新基地建設反対で沖縄協会に連帯し、選挙のたびに支援を重ねてきた。新基地建設反対を願う沖縄県民の訴えや、コロナ禍における状況について、沖縄協会の高嶺朝広会長と、仲里尚実前会長に西山裕康理事長がオンラインでお話を聞いた。

全国的にも多い沖縄の感染者数
 西山 本日はよろしくお願いします。沖縄県では新型コロナウイルス感染症が今も拡大し、人口10万人当たりの患者数は、全国的に見ても非常に高い状況が続いているとのことですが、医療提供体制は維持できていますか。
 高嶺 第6波のピークと同水準の患者数です。子どもの感染が多く、家庭内で感染が広がっているのに加え、まん延防止等重点措置が解除され、若者世代でも感染が広がっています。すでに第7波と言える状況かと思います。
 西山 入院者数や重症患者数、死亡者数はいかがですか。
 高嶺 病床使用率も5割に近づいていますが、入院の適用を酸素投与が必要な患者に絞ることで、なんとか医療崩壊を防いでいます。私の病院では多くの腎不全の方が透析治療を受けています。当初は透析患者がコロナに感染すると全員がコロナ病棟に転院していましたが、今はSpO2が94%以上の患者は通院で隔離しながら透析を実施しています。入院が必要な患者は、臨床研修指定病院などの救急対応可能な病院が受け入れています。現在1日1000人を超える感染者数ですが、1500人くらいになると、医療崩壊に近くなってくると思われます。
 西山 入院のハードルを上げれば、入院患者数を減らすことが可能ですが、自宅や介護施設での療養は、特に高齢の患者では予後が心配です。
 仲里 ある老人保健施設では、先日クラスターが発生し、重症化した患者もおりました。なんとか入院させることができましたが、感染した患者は原則その施設内で診るように言われます。現時点で最大の問題は、介護施設でのクラスター対策と、中等症患者さんを入院治療することができないことにあります。
 西山 自宅療養中の患者さんには、往診など適切な治療ができていますか。
 高嶺 例えば高齢患者さんで、普段から訪問診療を受けている場合はその医師が対応できますが、新患への往診は難しいでしょう。今は軽症患者にも保健所から定期的に電話連絡が行われていますが、今後逼迫すると、それも難しくなることが考えられます。
 西山 兵庫でも自治体によっては、低リスクの人にはほとんど連絡がないこともありますが、同様に厳しい状況ということですね。一方、医療提供の点では、医療従事者が濃厚接触者に認定されたり、子どもの感染や休校のために休んだりといったケースが多いですね。
 高嶺 職員と同居する家族が感染すると、休ませざるを得ず、どうしても診療に影響がでますね。検査キットで陰性を確認して出勤することもできますが、今後さらに感染が増えると第6波同様、検査キットの不足が心配です。
不平等な防疫体制日米地位協定見直しを
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聞き手 西山裕康理事長

 西山 さて沖縄のコロナは昨年末から急増しましたが、米軍由来であることは明らかと思います。しかし、政府はそれを認めようとしません。
 高嶺 経過を説明しますと、昨年12月15日にキャンプ・ハンセンで最初の患者が見つかり、19日には数十人の患者が発生していました。その時、県民の感染者は数人でした。この感染爆発を受け、20日に玉城デニー沖縄県知事が、米軍に対し基地外に出ないよう要請しましたが、米軍は当然従いません。しかも、感染者が急増する中、基地内の体育館で運動会を行ったことが報道され、危機感のなさが浮き彫りになりました。
 西山 若い兵士は軽症で済むし、文化の違いもあるのでしょうか。責任は個人にあるのではなく、その根底に日米地位協定があることは明らかですが、これはどうにか改善できないのでしょうか。
 高嶺 日米地位協定では、防疫を米軍に任せるとし、日本国や沖縄県には権限がないことが定められています。しかし諸外国、例えばドイツでは、ドイツ国内法に従うとされているように、NATO圏内では各国の定めに従うとされています。日本が地位協定の修正をしてこなかったことに問題があります。
 仲里 防疫については、昔から指摘されている問題です。沖縄返還前の1964年から65年、沖縄で風疹ウイルスが猛威を振るい、多くの母親たちが感染し、聴覚などに障がいを持つ〝風疹児〟が400人超も生まれました。当時、米国で風疹が大流行しており、これも米軍基地由来のものだとされています。
 西山 本土でも山口県や長崎県など基地がある地域では、新型コロナ患者が増えました。決して他人事ではありません。
 高嶺 基地を抱える地域は感染が増えていますが、基地周辺の問題に矮小化されています。他の国では、地位協定は必要に応じて変更されますが、日米地位協定では運用は変えても条文を変えていません。明治期に日本は不平等条約を改正しましたが、今の政権は不平等な地位協定を変えようという考えを持っていません。
二度と戦場にさせないぶれずに訴えぬく
 西山 基地問題は、沖縄だけの問題という意識なのでしょうか。沖縄県では、いわゆるオール沖縄勢力が、新基地建設に反対する声を結集して国に訴えていますが、政府はこれを無視して新基地建設を強行しています。1月には県知事選の前哨戦と言える名護市長選挙で、オール沖縄候補が敗北してしまいました。
 仲里 沖縄県知事選挙をはじめ、辺野古米軍基地建設に関する県民投票、名護市長選挙では、兵庫協会から多大な支援をいただき、ありがとうございました。翁長県知事の時は、基地は沖縄経済の発展の阻害要因であると、保守と革新が共同して選挙を戦いましたが、沖縄財界の象徴である有力企業グループがオール沖縄から離脱したことが影響しています。
 西山 沖縄県知事選挙の構図、争点はどうなりますか。
 仲里 基地容認派からは、佐喜眞淳前宜野湾市長が立候補するとみられ、一騎打ちとなると思います。新基地建設反対の県民の声を代弁する候補者に、沖縄の未来を託したいと考えています。
 2年間のコロナ禍で、辺野古新基地建設問題が、吹き飛んでしまった感がありますが、辺野古は地質学的にも軟弱地盤が広がり、新基地建設は不可能と言われています。しかも軟弱地盤については、事前の調査もしていません。県の試算では工事費は2兆5千億円にも上ります。知事は埋め立て承認をしませんでしたが、国交省が却下し、すぐに許可するように命令しました。26年前に普天間基地が返還されると決まった時は、沖縄県民は大喜びしましたが、代替地として辺野古を指定したことがすべての過ちです。
 高嶺 沖縄の選挙は絶えず競った戦いが続いていますが、反基地を核として戦い続けることが重要です。
 アメリカ国防省は中台危機においては、グアムの基地、空母、沖縄基地の三つが戦術核の標的となると表明しています。ウクライナの問題を見てもわかる通り、軍事基地は真っ先に標的とされます。核共有の意見も出されていますが、そんなことをすれば、さらに狙われる危険は増します。二度と沖縄を戦地にさせないために、有事に巻き込まれることにはぶれずに反対し続けることが重要です。
 沖縄タイムスと琉球新報が沖縄の新聞で大きなシェアを占めているのも、二社が切磋琢磨し、ぶれずに沖縄県民の思いに寄り添った記事を掲載しているからです。
 最近は、各地の市長選挙で敗北が続き、今年の県知事選も激しく競る闘いとなるでしょうが、こういう時こそ沖縄協会、全国の協会・保団連の出番だと思います。沖縄協会は、コロナでは日米地位協定の防疫体制の改善、新基地は建設反対と、今後もぶれずに訴えていこうと決意しています。
 西山 戦後の闘いの歴史の中で培われた沖縄協会の皆さんの運動のたくましさ、ぶれない姿勢に頭が下がる思いです。その姿勢を県民に示していくことが重要ですね。また、基地と経済で、県民を二分する状況に追い詰めた日本政府の責任はもちろん、自らの問題として、私たちも高い関心を持ち続けなくてはならないと感じました。本日はありがとうございました。

図 沖縄の新規感染者数は第6波に迫る
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