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九条の会・兵庫県医師の会市民講演会「アジア・太平洋戦争の真実」
戦争であらわになる格差

2022.05.15

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アジア・太平洋戦争の実際について語る吉田氏

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会場とオンラインあわせて67人が参加

 アジア・太平洋戦争の実相を学び、戦争を二度と起こさない決意を−−。協会は九条の会・兵庫県医師の会と共催で、4月30日に吉田裕・一橋大学名誉教授を招き、市民講演会「アジア・太平洋戦争の真実−兵士・民衆から見た戦争」を協会会議室とオンライン併用で開催。医師・歯科医師・市民ら69人が参加した。

 吉田氏は、戦争や軍隊を民衆史・社会史から捉え、戦場のリアルな実態を明らかにする研究を行ってきたと前置きし、アジア・太平洋戦争の経過や戦没死の実態などについて解説した。
 まず戦局の推移については、開戦時の日本陸海軍の戦力はアメリカを上回っていたが、国民総生産は日米間で11.8倍もの差があったため、開戦後に日米間の戦力格差が拡大し、1944年11月には米軍による日本本土への空襲が始まり、敗戦必至となったとした。そして、日本の戦没者数310万人のうち9割が1944年以降に集中していることから、日本政府の戦争終結決意が遅れたために、膨大な数の国民の命が奪われたと指摘した。
 続いて兵士の体格の推移について解説。1935年までは20歳男子の平均身長・体重は一貫して上昇したが、国民の体力向上が急務となった日中戦争開戦後は、平均身長・体重にほとんど変化が見られないと、資料を示しながら説明した。これは、紡績業などの軽工業中心だった国内工業について、日中戦争開戦前後より軍需産業化を急速に進めて総力戦を展開したために、民生部門を圧迫し国民生活が悪化したことが背景にあるとした。
 またアジア・太平洋戦争後期には戦地への補給が途絶。軍人・軍属230万人のうち約6割は、餓えが原因である戦病死だと推定されるが、准士官以上では乾パンが特配されるようになり、死亡率が下がっていることを紹介。米軍による空襲でも、人口が密集する下町は山の手に比べて死亡率が高くなっており、民間人においても貧しい人ほど命を落とすという不平等が、戦争で起こったことだと説明した。そして、これらの不平等の経験から、格差是正を求める声が戦後民主主義の中で定着したと解説した。
 質疑応答も活発になされた。ウクライナ情勢については、アジア・太平洋戦争の実態を深く知ることで戦争が凄惨を極めることをリアルに想像することが大切。その上で、戦争を起こさないためには軍拡競争ではなく憲法9条に基づく平和外交が重要になると強調。また、軍隊においても口腔衛生は軽視されており、従軍する歯科医師がいなかったため、民間療法が流行するなど、戦後でも健康面で影響を与えたことなどを紹介した。

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