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〝県独自の補聴器購入補助継続・拡充を〟 署名3千筆超を県に提出

2023.03.25

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兵庫県(右側)に武村協会副理事長(右3人目)らが署名用紙を手渡した

 協会と兵庫県社会保障推進協議会(県社保協)らが取り組む「高齢難聴者の補聴器購入等補助制度の恒久化を求める署名」。3月16日、集まった3178筆を武村義人協会副理事長(県社保協会長)らが兵庫県へ提出した。
 協会では昨年末より、綿谷茂樹理事・地域医療部長が兵庫保険医新聞で会員に協力を呼びかけたほか、永本浩監事が協会出演のラジオ番組で訴えるなどして、42医療機関から377筆を集めた。
 武村副理事長らが、今年度限りとなっている県の補聴器購入補助を恒久制度として確立するよう求めたことに対し、県の田畑司高齢政策課課長は「県だけでなく全国的な課題。国に要望していきたい」と回答。武村副理事長は「補聴器は高額のため耳が聴こえにくくなっても購入に至らないケースが多い。対人関係が難しくなり引きこもりや認知症になる人もいる」「高齢者が充実した生活を送ることができるよう、国の助成制度創設を待つのではなく、県独自の制度を継続・拡充してほしい」と重ねて訴えた。
 要請には、署名に取り組んだ全日本年金者組合県本部や県生活と健康を守る会、県高齢期運動連絡会のほか、仲介した、きだ結・庄本えつこ・ねりき恵子・いそみ恵子ら共産党県議らも出席した。
政策解説
補聴器助成制度を拡充し高齢者のQOLの向上を
 聞こえの重要性を鑑み、いま補聴器助成が全国の自治体に広がっている。県は国へ補聴器購入の公的補助を求める意見書を採択するとともに、今年度、1年限定での県独自の補聴器購入補助事業を行い、協会などは助成の継続を求めている。補聴器助成制度について現状と今後の課題を解説する。

全国的に広がる補聴器助成を求める意見書
 年齢を重ねることによる難聴は、程度の差こそあれ、誰しも避けられない生理的な変化であり、高齢者の尊厳にかかわる問題だ。難聴により、家族との会話が成り立たなくなったり、テレビ・ラジオの音が聞こえにくくなったりすることは、生活の質に関わる。人の話が聞こえにくくなれば、友人・知人、サークルなどコミュニティに参加することも、外出することもおっくうになり、心身の健康に大きく影響する。
 難聴には補聴器の使用が有効だが、日本の補聴器所有率は欧米より低いのが現状である(図1)。要因として、補聴器が両耳で平均40万~50万円と高価であること、専門家が少ないため個人に合わせた調整がなかなか受けられず、購入しても結局使わなくなった方が多いことなどが挙げられている。また調整に費用がかかる場合もある。このようなことから、行政による費用面での高齢難聴者への聞こえへの支援が必要である。
 兵庫県民の要望を受け、2018年12月県議会で「国に補聴器購入に対する公的補助制度の創設を求める意見書」が全会一致で採択された。都道府県議会で初めてとなるもので、これを皮切りに、その後、神奈川県、石川県、長野県、和歌山県、高知県へと広がっている。また、市町村でも181の自治体で同様の意見書が採択されている。
 こうした動きを受け国政でも、2019年3月20日の参議院財政金融委員会で、大門実紀史議員(当時)の質問に、麻生太郎財務大臣(当時)も「こういったもの(補聴器補助)が必要だというのはよく分かっております」と答弁している。
県独自制度に多数の課題
 2019年2月兵庫県議会で井戸敏三知事は補聴器助成について「国に対して、県としてもしっかり制度化するように要請をしてまいります。その要請の状況を見定めた上で(県の事業として実施するか)判断すべき課題だと思っております」と答弁した。その後、知事選挙を経て、現職の斎藤元彦知事のもと、2022年度、都道府県レベルでは初の補聴器購入補助事業「高齢者の補聴器活用調査」が実施された。
 県内では、県の事業以外に、明石市、相生市、養父市、稲美町が独自の助成事業を実施しており(図2)、全国では50以上の自治体で実施されている。
 しかし、兵庫県事業では対象者を400人と極めて限定しており、また調査項目を「同居以外のだれか」との交流が増えたか、社会参加できるようになったかなど社会参加のみに限定している。そして何よりも、国への制度提案が目的だとして、今年度限りだという問題がある。
 2018年版高齢社会白書によれば65歳以上の人口は3515万人とされており、日本補聴器工業界などが実施した調査「ジャパントラック2015年」では、難聴者の数は約985万人とされており、高齢者における難聴者の割合は28%にも上る。これを2022年の兵庫県の高齢者人口158万人に当てはめれば、44万2千人が高齢難聴者ということができる。当然、すでに補聴器を持っている人や身体障害者として障害者総合支援法による助成を受けている人もいるが、約44万人のうち400人しか補助を受けられないのはあまりにも対象が少ないといわざるを得ない。
 また調査項目を社会参加のみに限定することなく、兵庫県耳鼻咽喉科医会が指摘するように「家族や友人と1対1で向かい合って会話する時、聞き取れる」「うしろから呼びかけられた時、聞こえる」など、〝聞こえ〟そのものの評価をすべきだ。
 加えて、1年度限りの実施というのは、助成制度を不十分ながら歓迎した多くの高齢者・県民を落胆させるもので、引き続きの実施が強く求められる。
公的補助の拡充で高齢者のQOL向上を
 県事業はもちろん、他の市町の助成制度も含めて問題なのはその助成金額が少なすぎるということだ。補聴器は両耳で平均40万~50万円と高価であり、年金者組合兵庫県本部の聞き取り調査でも実際に助成金を受けているのは、高所得層であり、一般的な年金暮らしの高齢者は2~3万円の補助では購入に至らないことが分かっている。
 上記の課題を克服することと多くの自治体に助成制度を広げ、最終的に国の制度として医療保険への収載も含めて確立することが求められている。兵庫県では協会も参加する社会保障推進協議会を中心に、すでに助成を行っている県や他の自治体に対しては補聴器購入補助を恒久制度とすること、補助の増額、調整費用や修理費も対象とすること等を求めており、今月16日には「高齢難聴者の補聴器購入等補助制度の恒久化を求める署名」を兵庫県に提出した。
 高齢者のQOLを重視し、ヨーロッパ諸国のように購入に対する公的補助を充実させるべきである。

図1 欧米諸国と日本の補聴器所有率(米国は2014年、その他は18年の値)
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図2 県内の補聴器助成事業
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