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政策解説 政府「骨太の方針2023」を発表。

2023.06.25

 6月16日、政府は経済・財政政策の基本方針を示すいわゆる「骨太の方針2023」を閣議決定した。医療政策に関しては、コロナ禍のもと医療費抑制政策の転換の必要性が明らかになったにもかかわらず、診療報酬・介護報酬増に背を向け、医療DX(デジタルトランスフォーメーション)や地域医療構想の推進などで、さらなる抑制政策をすすめようとする内容であり、2回にわけてその問題点を解説する。

医療費抑制政策継続の姿勢示す
 今回の「骨太の方針2023」(経済財政運営と改革の基本方針)の医療分野に関連する記述は大きく、総論、医療提供体制の改革、医療DXの推進、歯科分野、創薬力の強化、診療報酬・介護報酬改定の六つに分かれる。
 初回では、総論および診療報酬・介護報酬改定について詳しく解説する。
 まず、総論分野では、「現役世代の消費活性化による成長と分配の好循環を実現していくためには、医療・介護等の不断の改革により、...保険料負担の上昇を抑制することが極めて重要である」と述べている点に注目したい。これは、現役世代の保険料負担を抑制するために、医療費等の抑制を引き続き進めるということである。
 確かに、保険料の上昇を抑え現役世代の可処分所得を増やすことは必要かもしれないが、そうであれば、海外のように保険料のうち、使用者負担分のみを引き上げて、労働者分は引き下げればよいはずである。
 さらに、現役世代の消費活性化のためには、現時点での可処分所得を増やすことのみならず、老後の不安を解消することが非常に重要である。医療や介護の給付を抑制するのではなく、むしろ十分な給付拡大を将来にわたって約束することこそ必要であろう。
診療報酬改定率抑制ほのめかす
 「診療報酬・介護報酬改定」に関しては、「次期診療報酬・介護報酬・障害福祉サービス等報酬の同時改定においては、物価高騰・賃金上昇、経営の状況、支え手が減少する中での人材確保の必要性、患者・利用者負担・保険料負担の抑制の必要性を踏まえ」「必要な対応を行う」とされた。
 「患者・利用者負担・保険料負担の抑制の必要性」を理由に診療報酬・介護報酬の抑制の必要性が強調される内容となっている。
 ただし、5月末に出された財務省・財政制度等審議会の「歴史的転機における財政」で、「巨額のコロナ補助金もあり、積み上がった資産の状況も含めて、医療機関・介護施設の財務状況を見ながら、引き上げの必要性について慎重に議論を行うべきだ」などと引き上げに極めて否定的な記述がなされたことと比較すると、「物価高騰・賃金上昇」「人材確保の必要性」等引き上げを示唆する文言が含まれるようになっているなど、記述に変化が見られ、来春の同時改定に向けて、医療界として、診療報酬・介護報酬の抜本的引き上げを求めて運動を強めることが重要となってくると考えられる。
介護保険改悪に反対しよう
 介護保険については、「介護保険料の上昇を抑えるため、利用者負担の一定以上所得の範囲の取扱いなどについて検討を行い、年末までに結論を得る」とされた。
 現在、介護保険の利用者負担は原則1割で、一定以上の所得(単身者で年金を含む年収280万円以上など)のある人は2割、「現役並み」(同340万円以上など)の所得がある人は3割となっている。この利用料負担の所得要件を引き下げることによって、より多くの人を2割、3割負担にするという方針の表明である。
 この方針は昨年末から検討されてきたが、保険医協会や介護関係者の運動により、今国会での法案提出は見送られた経緯がある。
 「年末までに結論を得る」とされているため、介護報酬改定に合わせて、来年頭の通常国会で法案提出が行われる可能性があるため、今後、介護事業者らとも連携しながら、国民負担増に反対をしていく必要がある。(次号につづく)

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財務省が5月に示した資料。新型コロナ特例や補助金等により診療報酬引き上げは慎重にすべきとされている

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