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反核医師のつどいin北海道 参加記

2023.10.25

 第33回反核医師のつどいin北海道が9月23日~24日、北海道札幌市内とオンラインで開催された。同つどい実行委員会と核戦争に反対する医師の会(反核医師の会)の主催。全国から200人超(うち来場151人)が参加し、被爆者運動を継承し、核兵器のない世界をどうつくるか、原発ゼロの世界をどうつくるか、学習するとともに交流した。兵庫協会から、武村義人・近重民雄両副理事長、横田裕一・坂口智計両理事、松岡泰夫評議員、川西敏雄参与、永本浩監事が参加した。参加記を掲載する。
参加記(1)
今後の反核・反原発運動の重要性を認識
監事  永本  浩
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全国から200人超の医師・歯科医師・医療者らが参加した

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記念講演した孫崎享氏

 1日目の記念講演として、孫崎享(うける)氏の講演「-ウクライナでのロシアの核兵器使用台頭をふまえ-核兵器使用をさせないための現状分析と日本の未来」を拝聴した。
 元外務省国際情報局長という肩書、および氏の日刊ゲンダイの論説や最新刊『同盟は家臣ではない』等の著書と講演との内容に齟齬がなく、論理的に矛盾なく首尾一貫した内容であった。
 演者の博覧強記で頭脳の明晰さがにじみ出た論理展開により、聴講者の心が揺さぶられた。紙面の都合で理解しやすく箇条書きにすると、
(1)核の傘はない。全面戦争になったとき、米国の大統領は西欧や米国の都市と引き換えに日本を守らない。
(2)「反撃能力」「敵基地攻撃能力」では解決しない。中国には2000以上のミサイルあり(数倍返し)。
(3)ウクライナ戦争の長引く消耗戦で米国の軍事産業は潤うが、石油や小麦等の値段が上昇し、戦争による破壊は双方の国民に憎悪を拡大させ禍根を残す。さらに戦争は地球温暖化の最たる原因にもなる。
 氏の述べる落としどころは、(1)NATOはウクライナに拡大しないと確約する。(2)ウクライナ東部2州に高度な自治権を与える。そうしていたら戦争は起こらなかったとのことだった。ポーランド等はウクライナに対する支援疲れも出ている。米国が多大援助しすぎることも戦争が長引く原因になっている。
 次に安倍元総理暗殺事件について、演者は体を動かしてエネルギッシュに弾丸方向と山上被告の位置関係が不一致であると述べられたが、なぜかそれ以上の言及はされなかった。幸いにも講演終了後、懇親会およびその後の時間、孫崎氏と対面で対話させていただき、春秋の筆法のごとく、氏の眼の動きで読めた!
 それは田中角栄のロッキード事件然り、安倍元総理は米国の逆鱗に触れたのか、特に核を自前で作ろうとすると米国は強烈な制裁を加えるとのこと! マスコミは報じないが...統一教会問題は陽動作戦で「目くらまし」なのか? 示唆はすれど断言はされなかった...。もし安倍氏が米国に暗殺されていたのなら、一体だれがどのような方法で行ったか。さらなる謎が残る。政権交代のない限り、この事件は歴史の闇に埋没するかもしれない。しかし筆者は安倍政権の10年間を惜しんでいるのではない。そこは誤解しないでほしい。
 日本は米国の同盟国ではあるが、家臣(従属国)ではないということを肝に銘ずべし。
 翌日の室蘭工業大学の宮尾正大名誉教授の「日本原発の変遷と今後」と題する講演は理解しやすく熱がこもっていた。原子力発電の歴史的経緯・経過を起承転結で上手に解説された。
 福島の事故は「転」である。原発の事故後の処理は解決が極めて困難。科学万能の世の中という詭弁を弄するのは間違いで、たとえばウラン238の半減期は45億年、プルトニウムは2万4000年。人智をはるかに越え、人間の力の及ぶところでないということを再確認した。だからこそ今後の反核運動は重要である。
参加記(2)
脈々と続く核廃絶運動の力強さ
副理事長  武村 義人
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若手医師・医学生が集まっての新プロジェクト「いっぽプロジェクト」が立ち上がった

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核兵器のない世界をどうつくるかを語った川崎氏

 北海道での開催は10年ぶりとのこと、コロナ禍も少し沈静化し、約150人という多数の参加者が現地に集まった。多くの活動家に実際に会うことができ、加えて若手医師、学生さんの参加もみられ運動の継続性、発展に勇気づけられた。当然のことであるがやはり懇親会は重要な意味を持っておることを改めて実感した。
 教育講演(1)「核戦争の危機の中で核兵器のない世界をどう作るか」、地道で息の長い活動を行っている、ピースボート共同代表の川崎哲氏のお話は理解しやすく、理論的かつ実践的であった。
 特にロシアの核使用の危機に際して、一部で国連や国際法に対する無力感が漂っているがそれは誤りである。民主主義は法の支配が重要で、核兵器廃絶も法の支配が有効であり、国連や国際法(核不拡散条約〈NPT〉、核兵器禁止条約〈TPNW〉)によって戦争を防止する、また被害を最小限にすることに最大限の力を注ぎ、規範の強化によって次の戦争を防止していかなければならないと示された。
 またTPNWの批准国の現状として、おおよそ100カ国(地球上の過半数の国)が早期に批准するであろうとも述べられた。
 そしてわが国の状況を把握するため「議員ウォッチ」というサイトを立ち上げ、国会議員、都道府県知事、市区町村議会がTPNWにどのような立場をとっているかを公表している。まさにわれわれの草の根運動の反映がここに見られるということだ。
 もう一つ感動的であったのが医療系学生と若手医療者の交流企画である。長野県の若手医師が中心となり、多数がこの企画に参加された。
 名もなき集まりであったようだが、この企画で「ABC for Peace(日本語名:平和の一歩、愛称:いっぽプロジェクト)」とネーミングが決められ全国に発信された。脈々と続く核兵器廃絶運動の力強さを感じた。
参加記(3)
利権ではなく民を考える原発政策を
参与  川西 敏雄
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原発政策と核廃棄物問題をテーマとしたシンポジウム

 2日目の原発をテーマとするシンポジウムについて報告する。
 まず、宮尾正大・室蘭工業大学名誉教授が「日本の原発政策の変遷と今後」についてご講演された。要旨を示す。
・世界で最初に原発を稼働させたのはソビエトであり、それは兵器から始まった
・IAEA(国際原子力機構)は、米国が核兵器拡散抑制・主導権の確保・核軍縮を目指し設立された。よって、同機構の主眼は兵器であり、福島汚染処理水へのお墨付きはIAEAにとってそれほどの関心事ではない
・事故を起こした福島第一原発は構造的に危険な沸騰水型である
・福島の惨劇を忘れるかのような現政権の再安全神話を復活させるべきではない
 核のごみの最終処分場問題について、最終処分場としての文献調査に応募した寿都町より、「子どもたちに核のゴミのない寿都を!町民の会」共同代表の三木信香さんからご報告いただいた。
 三木さんは、応募は片岡町長の独断で、町民には全く知らされなかったこと。地元の水産加工業への影響などを懸念する住民を中心に会をつくり、住民投票を求めて活動し、有効な署名も集まったが議会では否決され、21年町長選挙で片岡氏が再選されるなど、この間の経過を紹介され、町が分断されていると話された。そして「最終処分場についての国民的議論の必要性を伝え、対話や議論をはじめてほしい」と訴えられた。
 核燃サイクル阻止1万人訴訟原告団運営委員の澤井正子氏は、「核燃料サイクルの破綻と廃棄物問題」についてお話された。
・福島原発事故により「原子力緊急事態宣言」が発せられ現在も継続中である。解除は永遠にないであろう
・一年間の原子炉1基の運転に必要な核燃料は約30トンである。その原料作成工程では、膨大な資源・エネルギーを費やした上、ウラン鉱山の残土240万トン、製錬時残滓13万トン、濃縮加工時劣化ウラン160トンのゴミが発生し外国に置き去り。原発運転時にも、低レベル廃棄物ドラム缶1000本、使用済み燃料30トン、さらに再処理でも大量の低レベル廃棄物・中レベル廃棄物が発生し、処分方法はない。〝膨大なゴミ〟が出続けている
・核燃料サイクルの破綻。ウランとプルトニウムの混合燃料(MOX)を原発で無理やり使用しているが、本来計画していた高速増殖炉は破綻した。そのため再抽出してもプルトニウムは増え続け日本は世界一の保有国となり、その一番の保有企業は東京電力である
・フランスに使用済み燃料からプルトニウム再抽出を依頼している。しかしこのプルトニウムが増え続けているため、フランスに譲渡した。その額350億円であり、今後も続くであろう。
まとめ:この不条理は日本国内で散見され、政治家が作ったものだ。われわれは利権を追う〝政治屋〟と国(国は民)を考える〝政治家〟を峻別する〝目〟を養わなければならない。「選挙は人気投票ではない」。
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