兵庫県保険医協会

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「保険証廃止は中止を」インタビュー
保険証廃止は「監視社会」への入り口

2023.10.25

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尼崎市 山内 道士先生

 来年秋に政府が実施しようとしている保険証廃止に対する会員の声をシリーズで紹介する。第1回は尼崎市の山内道士先生に聞いた。

 精神科医の立場から、オンライン資格確認システムの義務化・保険証の廃止は大変問題だと感じています。
 この目的は何なのでしょうか。「デジタル化による利便性」などとあいまいな言葉でしか説明されていません。しかし、利便性はあくまで手段であり、目的ではありません。
 目的があいまいなまま「言うことを聞きなさい」というのは人を鬱にします。実際、義務を感じすぎて鬱になってしまう患者さんを日々診ています。それでも、義務化による責任や負担を上回って、患者さんのためになるという希望が感じられたならば、その負荷は軽減するのでしょうが、私にはあまりにもその目的があいまいだと感じられます。
 4月からオンライン資格確認が義務化されたことを受け、当院でもシステムは導入しました。しかし、窓口では「準備中」として、患者さんにはこれまで通り保険証を持ってきてほしいとお願いしています。
 当院では以前から電子カルテを導入していますが、大手の業者であるにも関わらず、年に数回はトラブルが発生します。機械は風邪をひくものだから仕方がないと業者に言われたことがあります。これに保険資格確認システムが加われば、トラブル発生は格段に増えるでしょう。とても利便性があるとは思えません。
 さらに、マイナンバーカードを保険証として使おうとする患者さんへの、機械の操作の説明やマイナポータルに登録していない場合・暗証番号が分からなかった場合の対応など、国はすべて医療機関に押し付けており、スタッフが残業しなければとても対応できません。もしマイナンバーカードを「クリニックで紛失した」と言われたらどうするのかということも心配です。
 精神科関連のある研究会で行われた講演で、政府の医療DX推進本部が取りまとめた「医療DXの推進に関する工程表」の内容を知りました。オンライン資格確認義務化の後には、電子処方せんの導入、保険証廃止と同時期の24年度には電子カルテ情報の共有がスタートすることが示されている、それは「既定路線です」と強調されました。
 私は精神科医です。ここで何を話してもいい、他には漏れないという信頼のもとで患者さんは話してくれるのです。電子カルテの共有化がされたら、私はカルテ記載ができなくなり、手書きメモを併用するしかないのか、そうしたら近畿厚生局から指導が入るのか、不安はただもう広がるばかりです。
 私が聞いた講演で強調されていた医療DXの計画、その目的というのは、「医学の進歩のため、データを集める」ということでした。これは裏を返せば目的は「監視社会」にするということです。しかし「監視社会」になるとデジタル化を危惧する意見は、不安症である、心配しすぎと相手にされない時勢があります。「仕方がない、従うしかない」という時勢も日々患者さんをみていて感じます。
 今回の保険証廃止が実施されてしまったら、一気にこの流れが進められてしまう。保険証廃止は「監視社会」の入り口です。
 11月5日の大阪でのアクションや署名など、多くの人の声を集めて、止めていきたいと思っています。
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