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平成29年度分 確定申告を終えて

2018.04.15

平成29年分確定申告を終えて

協会税務講師団 浦上 立志税理士

 

 申告期間期限間近に国税庁長官が事実上の更迭に追い込まれました。現場では税務署員への風当たりが強く、一部には財務省に対する不満への対応マニュアルがあったようです。

 これまでは医療費控除は領収書の提示があれば、明細の記入は必要ありませんでしたが、29年分からは、明細書の添付が必要となり、領収書は納税者本人に5年間の保管責任を課すという逆転が行われました。領収書の束を持参した納税者には、自分で保管するよう慫慂(しょうよう、しきりに勧めること)が行われたようです。しかし31年までは経過措置がありますので、領収書を提出して行政に保管責任を負わせることができます。

また、納税者への申告書送付の停止など、税務行政の効率化・自己責任化が進みました。

安倍内閣発足当初の平成25年を基準とする職員給与の一人当たり平均などをみると、給与を増やした場合に所得税または法人税の減税となる、「アベノミクス」の所得拡大税制が適用になるケースはそれほど多くありませんでした。

 年金機構は、年金データ入力が中国企業へ無断で再委託されていた問題や漏洩・誤入力等で、しばらく年金情報とマイナンバーの連携を延期しました。これは、マイナンバー制度の無期延期と同じことだと私は思います。

 マイナンバーによる年金所得や社会保険料、預貯金等の情報の統合は、将来的に国が狙う、あらかじめ申告書に所得税額や社会保険料などが記載された「プレプリント申告」の導入や自動保険料調整機能の基盤であり、申告納税制度を形骸化させるものです。

 銀行預金や投信信託などの特定口座開設者に対して、マイナンバーの提供と本人確認通知を求める案内が届いています。投資口座としての特定口座を新たに開設する場合や、無記名公社債利子等の受け取りをする際には、マイナンバー通知が税法で規定されていますが、それ以外は、預金者に強制されるものではなく任意の要請にとどまります。

 上場株式譲渡損失の繰越を使うことで、昨年は還付がそれなりにあったようですが、それがいつまで続くでしょうか。また、上場株式の配当等を申告するかどうか、高齢者世帯では住民税や社会保険料への影響など税金以外の負担のことも無視できなくなりました。

 仮想通貨による雑所得の総合課税は、前年に利益があった場合に課税されますが、究極の博打的所得ですから、課税の時期にはすでに全額損失であるという事態も想定できます。

 少子高齢化で空き家増加の一方で、アパート経営ローンはすでにバブル期越えの規模ですから、いつ弾けるかの瀬戸際ではないかと筆者は思います。

 さて、医院経営は、昨年は夏場の患者減と予防接種のワクチン不足による減収が顕著でした。気圧や寒暖差のある気候変動が常態化してきた中で、開業医の診療内容も対応に工夫がいるのではないでしょうか。

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