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令和2年分確定申告を終えて 税務講師団  濵西 敏郎 税理士

2021.04.15

 本年度の確定申告は新型コロナウイルスの影響で前年と同様に、確定申告会場の混雑を緩和して感染を防止するということから、申告期限が4月15日まで1カ月延長されました。
 令和2年分の確定申告は、平成30年度の改正事項のうち、令和2年分の所得税から適用される重要な改正が多数ありました。計算がより複雑になり、従来からの手計算による確定申告では対応が難しく、国税庁のHPなどの確定申告ソフトを使い、パソコンやスマホで計算する確定申告が主流になったと思われます。
1.給与所得控除額の引き下げ
 給与所得控除額が一律10万円引き下げられました。これは、基礎控除額の10万円引き上げとセットです。ただし、給与所得控除額の上限額は、平成28年分から段階的に引き下げられています。平成27年分までは給与等の収入金額が1500万円以上の場合には、給与所得控除額の上限は245万円でしたが、年々段階的に引き下げられ令和2年分から給与等の収入金額が850万円以上の場合には、給与所得控除額の上限が195万円となりました。つまり、平成27年分までと令和2年分と比較すると、給与等の収入金額850万円の人は、給与所得控除額が10万円減少するだけですが、給与等の収入金額1500万円の人は給与所得控除額が50万円減少しています。850万円の人は基礎控除額が10万円引き上げられますので同じですが、1500万円の人は差引40万円課税所得が増加しています。
2.公的年金控除額の引き下げ
 公的年金控除額が一律10万円引き下げられました。さらに公的年金等に係る雑所得以外の合計所得金額に応じて20万円または30万円引き下げとなりました。従前から65歳未満と65歳以上に区別し、公的年金等の収入金額に応じた公的年金等控除額でしたが、令和2年分からさらに、公的年金以外の合計所得金額により公的年金控除額を計算するようになり、複雑化しました。
3.基礎控除額の引き上げ
 給与所得控除額や公的年金等控除額の引き下げとは反対に、基礎控除額が10万円引き上げられました。ただし、合計所得金額が2400万円を超える場合には控除額が逓減し2500万円を超える場合には基礎控除額は0円となりました。所得控除額は改正されることはありましたが、「誰にでも適用がある」はずの基礎控除額が、2500万円を超えれば適用がないという改正は所得税法の歴史の中で初めてのことです。
4.所得金額調整控除の創設
 前記のとおり給与所得控除額が引き下げられましたので、次の⑴または⑵に該当する場合には、給与所得控除額が上乗せされることになりました。
(1)給与等の収入金額が850万円を超え、23歳未満の扶養親族がいる場合などは、最高15万円の給与所得控除額の追加
(2)給与所得と公的年金等の雑所得がある場合でこの所得の合計額が10万円を超える場合 最高10万円の給与所得控除額の追加
 確定申告書には、この調整控除額の計算を記載する欄がなく、控除漏れがないように注意が必要です。

 コロナウイルスの影響により保険診療収入が減少した医療機関が多くなりました。従前から措置法26条を適用した方が有利な医療機関でも、令和2年分の申告は必要経費を実額計算した方が有利になる場合が多くありました。会計ソフトを利用して実額計算し、申告時に有利な方を選択する方法が良いと思われます。

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