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税経部より 2024年1月~電子帳簿保存制度 慌てず対応を
○紙の請求書はこれまで通り
○電子取引データは整理して保存
協会税務講師団  山田 英信税理士

2023.06.25

 2024年1月から「電子帳簿保存法」がスタートします。
 「メールに添付された請求書などのデータを印刷して紙で保存する方法は取れなくなる」など耳にしたことがあるかもしれません。
 慌ててソフトを購入したり業者と契約することがないよう、医療機関が事業所として取るべき対応について解説します。
電子帳簿保存制度の概要
 経済社会のデジタル化を踏まえ、経理の電子化による生産性の向上、記帳水準の向上等に資するという名目で1998年にいわゆる「電子帳簿保存法」が施行され、2022年1月以降その一部が改正されましたが、拙速な推進のため事業者側の対応が進まない実情から2023年度税制改正においてさらに見直しが行われました。

 電子帳簿保存制度は税法上保存等が必要な「帳簿」や「領収書・請求書・決算書」など国税関係書類を電子データで保存することに関する制度をいい、保存方法は3種類に区分されます(表参照)。

(1)電子帳簿等保存
 パソコン等で作成した帳簿、国税関係書類を電子データのままで保存できます。
 帳簿類の訂正・削除履歴が確認できるなど「優良な電子帳簿」の要件を満たして電子データで保存していれば、修正申告などがあった場合、申告漏れに課される過少申告加算税が10%から5%に軽減される措置があります。

(2)スキャナー保存
 取引先から受領した紙の領収書・請求書等を、その書類自体を保存する代わりに、スキャナーで読み取り、電子データとして保存することができます。

(3)電子取引データ保存
 注文書・契約書・送り状・領収書等を電子メールなど電子データでやりとりした場合にはその電子データを保存しなければなりません。

 (1)と(2)は任意の保存法ですが、これらの方法を取る場合には、記録の改ざんを防止するためソフトを導入するなど一定の要件を満たす必要があります。
電子取引データは整理して保存を
 (3)電子取引データ保存は、すべての事業所に対応が求められている点に留意が必要です。
 電子取引に関するデータ保存に関しては2022年1月1日以降におこなう取引から電子データ保存が義務化され、改ざん防止措置としてタイムスタンプ付与などの要件がありますが、「宥恕措置」として2023年12月31日までの書類は紙保存が認められ、税務調査等の際に提示・提出できればよい(ダウンロード不要)とされています。
 2024年1月1日以後は以下の要件を満たせば改ざん防止措置等の対応は不要となります。
 (1)電子取引データを保存すべきこと(改ざん防止措置等)ができなかったことについて所轄税務署長が相当の理由があると認めた場合(事前申請は不要)
 (2)税務調査等の際に電子データの「ダウンロードの求め(調査担当者にデータのコピーを提供すること)」に応じること及び電子データをプリントアウトした書面の提示・提出ができること(両方必要)
 つまり、電子データを日付や取引先ごとなどフォルダに分け保存するなど、税務調査等の際に求められた資料を提示できれば問題ありません。「相当の理由」についても税務調査時に対応状況や今後の見通しなどが説明できればよいと考えます。
 また紙で受け取った請求書等は従来通り、紙で保存することが可能です。
未対応でも直ちに青色申告取り消しはない
 電子取引データの保存義務化に対応できない事業者から青色申告取り消し対象になるのでは、といった質問がされていますが、国税庁「電子帳簿保存法Q&A」によれば、データ保存に不備がある場合でも直ちに青色申告承認が取り消されることはないとされています。
 従来通りの帳簿記載、請求書、領収書の保存等を行えば当面は今まで通りの経理処理を行えます。ただし政府のデジタル化を推進する方向性は変わりませんので、事業主として今後の対応策を検討していくことが必要です。

表 電子帳簿保存制度の3種類の保存方法
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