兵庫県保険医協会

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G7神戸保健大臣会合記念企画での挨拶

2016.10.02

G7神戸保健大臣会合記念企画
市民公開シンポジウム開催にあたっての挨拶
兵庫県保険医協会理事長 西山 裕康

 本日はお忙しい中、本企画にご参加いただきまして誠に有難うございます。理事長の西山です。
 さて、ご承知のように、9月11日、12日にG7の神戸保健大臣会合がここ神戸で行われました。
 神戸市長は、出席者に対し、神戸医療産業都市で取り組む「世界最先端の研究や革新的な医療技術」のプレゼンテーションを行い、最先端研究施設や医療関連企業の視察を実施しました。
 G7保健大臣会合は、会合後に「神戸宣言」を発表しています。
 その一つに「ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(=UHC)の達成と、高齢化を焦点とする生涯を通じた健康の推進」を掲げています。
 その中で、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジとは「誰もが負担可能な費用で、必要な医療や保健サービスを受けることができるシステム」であり、「強靭で包摂的、負担可能、持続可能、公平な保健システムは、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ達成の基盤」としています。さらに「こうしたシステムは、女性や、子ども、高齢者といった脆弱な人々のニーズに対応すべきである」としています。
 これらは、まさに我が国が知恵を出し、努力し育ててきた「国民皆保険制度」そのものでありますが、と同時に、世界一「少子高齢化」が進む日本において「国民皆保険制度」が直面している課題でもあります。
 この課題に対し、私たちがどのような答え、解決策を示すかは、高齢化を共通の課題とする世界各国が注目しているところであります。
 では、最近の日本の方向はどうでしょうか。
 政府は医療を「日本を牽引する成長産業」と位置づけ、市場規模拡大を掲げる一方で、社会保障を硬い岩盤にたとえ、首相のドリルで打ち破るとし、実際は社会保障費や公的医療費の抑制と規制緩和です。つまり「公的医療にはブレーキ、営利産業化にはアクセル」の方向です。
 最近では、更なる患者窓口負担増を計画し、弱者を中心とした受診抑制が危惧されます。この方向は、医療においても、格差をさらに拡大させていくのは確実です。
 世界一少子高齢化が進む日本において、「社会保障費を削減し、弱者を医療から遠ざけ、規制緩和し、医療を営利産業化する」-このような政策を日本の解答として、世界に発信していいのでしょうか。もちろん国民はこんな方向は望んでいません。
 今回、G7保健大臣会合開催地のセールスポイントとした「神戸医療産業都市」は、まさにその象徴ともいえます。
 基礎研究・臨床応用・産業化までを一体化した医療システムには、もちろん光の部分もありますが、「KIFMECの迷走と倒産」「自治体病院である神戸中央市民病院・兵庫県立こども病院の関与」などの具体的問題点から、医療分野での規制緩和、患者申出療養や混合診療、先進医療のビッグビジネス化と営利産業化、その有効性と安全性、医の倫理に至るまで、「医療産業」に伴う影の部分も見過ごせません。
 兵庫県保険医協会は、これまで日本の医療関係者と国民が育んできた「国民皆保険制度の意義と今後の展望」、並びに、神戸のような医療特区における先進的医療を中心とした「医学・医療の発展と営利産業化」などに伴う問題点を広く知ってもらおうと、今回の講演とシンポジウムを企画しております。
 本日はお忙しい中、
全国自治体病院協議会会長 邉見公雄先生、
先端医療振興財団臨床研究情報センターセンター長 福島雅典先生
に来ていただき、ご講演をお願いしております。
 また、神戸医療産業都市の実情に詳しい、兵庫協会の副理事長、全国保険医団体連合会の副会長も兼任されます、武村義人先生からもご報告がございます。
 最後まで、ご清聴のほどをお願い申し上げまして、私のご挨拶とさせていただきます。
 

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