兵庫県保険医協会

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第93回評議員会での理事長あいさつ

2018.05.27

兵庫県保険医協会第93回評議員会 2018年5月27日 於.兵庫県保険医協会会議室

 

診療報酬大幅アップ、医師の抜本的増員を
兵庫県保険医協会理事長 西山 裕康

  

 本日はお忙しい中、第93回評議員会にご出席いただきありがとうございます。また、平素は評議員として、協会の活動にご理解を賜り感謝します。最近の情勢と協会活動について、一言述べさせていただきます。
 ご承知のように、この4月には診療報酬と介護報酬の同時改定がありました。今年の診療報酬改定率は、全体でマイナス1.19%。過去10回の平均改定率マイナス1%から導き出した、プラス10%という私たちの要求には程遠いものでした。世界に類を見ない高齢化が進むわが国で、長年にわたる医療費抑制政策のもと、私たちはすべての国民に、安全・安心、必要・十分な医療を提供できるのでしょうか。
 6月にはいわゆる「骨太の方針」が定められ、毎年のように「経済・財政の再生」のために「社会保障費削減」が行われています。公的医療保険制度の質と量を決定する指標は、決して経済成長や財政状況であってはなりません。医療においては、後期高齢者の患者窓口負担の倍増化、受診時定額負担の上乗せ、薬剤の参照価格制度などの改悪メニューが目白押しです。とりわけ「都道府県別の診療報酬の活用」と「給付率自動調整」は、公的医療の原則を捻じ曲げるものであり、決して看過することはできません。
 「都道府県別の診療報酬」の導入により、1点単価や入院基本料の引き下げなどが行われれば、全国統一の公定価格が崩され、地域間の格差と偏在がさらに拡大し、地域医療の現場に混乱をもたらします。
 「給付率の自動調整」制度とは、少子高齢化、人口減少が見込まれる現在、経済成長が鈍化し医療費が増加した場合に、患者窓口負担を自動的に増やす仕組みです。言うまでもなく、これらの社会情勢の変化は、政治の無策の結果であるのに、その「つけ」を病人の窓口負担に回し、その尻ぬぐいをさせるのは、責任転嫁に他なりません。そもそも患者負担とその増加は、経済的弱者、病弱者を公的医療から遠ざけ、受診抑制や重症化の危険性を高め、社会保障制度としては本末転倒です。
 今「患者負担増加やむなし論」が広がりつつあるとすれば、それは社会保障の歴史に逆行する「自助」の強要、病気の「自己責任論」が徐々に刷り込まれたためです。健康の社会的決定要因は、個人の生活習慣だけではありません。そして、経済格差は健康格差に直結します。
 昨今、「負担と給付のバランスが大事」や「受益者感覚が必要」などの文言が広く報じられていますが、「負担」の原則は「能力に応じた負担」であり、ここでいう「能力」とは、決して「受難者」である患者さんの窓口支払い能力ではありません。一方、医療の「給付」は必要に応じて提供されるものです。そして、その必要性を判断し、提供するのは私たちプロフェッショナルです。宇沢先生は、医療を社会的共通資本の一つと定め、「職業的専門家によって、専門的知見にもとづき、職業的規範に従って管理・運営されなければならない」と述べています。
 現在、協会会員は7400人以上となり、保団連は10万人以上の会員を擁する医師・歯科医師の職業的専門家集団です。私たちは、地域医療において、急性・慢性を問わず、日々の外来、入院、在宅医療の場で、患者さんの疾病だけでなく、健康の社会的決定要因を熟知しています。それらの要因に配慮し、患者さんに寄り添って、「医学」を社会に適応させ「医療」を提供している私たちは、医療給付のありかたを決める大事な役割を担う責任ある集団です。保険医協会は、単なる互助会ではありません。このことを再確認し、会員とともに活動を進めていきます。
 もう一点は「医師の働き方改革」です。現在、人口1000人当たりの医師数は、OECD平均3.4人に対し日本は2.4人であり、約10万人少ない水準です。OECD平均からみると、過去も現在も医師不足であり、決して将来も追いつきません。医師数に関して、厚労省は「現在の医療提供体制で必要な医療サービスが提供されている」という根拠の乏しい前提に立ち、「働き方改革」を受けて、いわゆる「過労死ライン」を前提とし「10年後には需給が均衡するので、医師数増員は必要なし」との方向です。地域医療構想を中心とした、病床削減、病院統廃合、診療科の閉鎖が相次ぐ現状は、国策である医療費抑制に従った、医師不足と診療報酬不足の必然の結果と言えます。現在の勤務医は、次世代の医療を支える後輩たちです。国民の命と健康を守る医師と医療機関がともに健全であるためには、人員増強とそれを支える診療報酬の増加が必要なのは明らかです。医師の働き方改革に関しては、本日配布の勤務医ニュースをご覧いただきたく思います。
 このような状況の中、本年度は組織部の勤務医対策活動を勤務医部として独立、新設しました。協会会員も、かつてはほぼ全員が勤務医だったかと思います。私たちの仲間を増やし、彼らの意見に耳を傾け、共に活動していくために、新たな勤務医部に力を注ぎたいと考えております。評議員の皆さまにもぜひご協力をお願いします。
 私たちは「開業医の生活と権利を守る」「地域医療の充実をめざす」という二つの目的を中心に集まり、活動を続ける医師・歯科医師の団体です。政治は妥協の産物といわれ、昨今の医療行政は、財政至上主義ともいえる原則のもとに、いたずらに短期的成果を求め、計画され、決定されています。私たちは決して目先の事に流されることなく、遠くない将来、私たちの主張と活動が正しいと評価、証明される時が必ず来ると信じて運動を続けます。
 私ども執行部は、医科歯科一体となり、事務局とともに、よりよい協会、よりよい医療を目指して一層努力したいと思います。皆さまのご理解、ご協力をお願い申し上げます。それでは、このあと、評議員会議案に関して、概略をご説明させていただきます。忌憚ないご意見、活発なご討議のうえ、ご承認いただくようお願いし、ごあいさつとさせていただきます。ご清聴ありがとうございました。

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