兵庫県保険医協会

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第96回評議員会での理事長あいさつ

2019.11.17

兵庫県保険医協会第94回評議員会 2019年11月17日 於.兵庫県保険医協会会議室

 

社会保障の拡充求めさらなる運動を展開しよう
兵庫県保険医協会理事長 西山 裕康

 

 本日は、お忙しい中、第96回評議員会にご出席いただきありがとうございます。また、平素は評議員として、協会の活動にご理解、ご協力を賜りありがとうございます。最近の情勢と協会活動について、若干の所感を述べさせていただきます。

 来年4月は診療報酬改定です。すでに報道ではマイナス1.5%という数字が見受けられ、財務省は2.5%のマイナス改定を要求しています。診療報酬は医師の報酬ではなく、もちろん開業医のポケットマネーではありません。病院で働く20万人の勤務医師や300万人の医療従事者の給与の原資であり、その生活をささえています。診療報酬は、すべての医療機関において、健全な経営のもと、心身の健康な医師や従業員が、すべての患者さんに「いつでも、どこでも、だれでも」に、安全・安心の医療を提供するために必要な費用です。政府は「地域医療構想」「医師・医療従事者の働き方改革」「医師偏在対策」を「三位一体」で推進していくとのことですが、診療報酬の増加無しには極めて困難で、現場に過重労働や医療提供体制の縮小をもたらし、地域医療、患者さんに悪影響を及ぼすことは明らかです。診療報酬増の院長署名は、現在約800人からご協力をいただいていますが、まだまだ力不足です。ぜひ署名にご協力をお願いします。

 政府は9月に「全世代型社会保障検討会議」を立ち上げました。会議の構成員から、現場の人間は排除され、過去の政府の検討会議等のメンバーや大企業の代表者などが名を連ねています。この検討会議は、7年前の野田内閣での、民・自・公の三党合意である「税と社会保障の一体改革」、つまり、「増税分は全部社会保障に」と称して消費税を増税しながら、大半を国の借金返しに回し、社会保障費を抑制し続ける、この既定路線の追認あるいはさらなる悪化方向が打ち出されるでしょう。財務省主導による、プライマリ・バランスの黒字化を金科玉条とし、政府の無策による少子高齢化と経済成長の鈍化に伴う公債依存と残高累増の主因を、社会保障費の増加に押し付け、負担先送り論と財政危機論を喧伝する、古くからの「社会保障お荷物」論「枯れ木に水をやるな」論の繰り返しです。医療は、「社会的共通資本」であり、統治機構の一部として、政治家や官僚から支配されたり、経済学者や財界代表により、利潤追求の対象として市場的な条件によって左右されたりしてはなりません。

 政府は、診療報酬マイナス改定によりコストを抑制する一方で、「負担の公平化」と称し「後期⾼齢者の窓⼝負担の2倍化」や「受診時定額負担の導入」「薬剤自己負担の引き上げ」などによりアクセスを制限しようとしています。そもそも「自己負担」や「窓口負担」という言葉には「自己責任」「受益者負担」という思惑が刷り込まれています。その目的は受診抑制と負担の付け回しであって、さしたる哲学や思想はありません。「医療費をたくさん使う人は、他人に金銭的負担をかけている。だから余分にお金を払いなさい」「患者さんは自分の懐具合を考えて受診しましょう」このような考え方は、国民に分断をもたらし、決して許されるものではありません。患者は受益者ではなく受難者であり、心身の負担に加え、金銭的負担は決して受診と連動するものであってはなりません。財政難を理由とした患者窓口負担の増加は、経済的弱者、健康弱者を中心に、受診抑制や早期発見治療の遅れ、重症化の危険性を高めるため、国民皆保険制度の中に取り入れるべき方策ではありません。

 先日、公立・公的病院の再編統合リストが報道されました。病床削減を目的とした、偽りの前提と杜撰な考え方、一面的、粗雑な計算方法から得られた結果の公表は、地域の実情を無視した乱暴な進め方と言わざるを得ません。撤回が当然と考えます。兵庫県は、南の都市部と北の地方には、それぞれの地域に合った多種多様な医療提供体制と機能・役割分担があり、充実のための対応策も当然異なります。地域になくてはならない医療機関は公立・公的・民間に関わらず残すべきです。その際に最も重視すべきは、その地域の住民の声であり、入院、通院する患者であり、周辺の開業医師であり、病院勤務医師であり、医療従事者です。協会執行部としては、これらの声を丁寧に吸い上げ、支部の意見を中心に、より良い地域医療を目指して活動していきたいと思います。

 現在の医療は、医師や医療従事者の職業的倫理感や献身的働き方、一部は違法状態のまま放置された激務の上にかろうじて成り立っています。これ以上の医療費抑制は国民皆保険制度を名ばかりのものに変質していくでしょう。もちろん皆保険制度がなくなるわけではありませんが、患者負担が増加すれば、受診抑制が起こり、一方で診療報酬が下がれば医療提供体制が縮小し、地域格差が一層広がります。その結果、地方在住者、低所得者、病弱者が皆保険から排除され、「保険証は持っているが、適切な医療が受けられない」国民が増加します。つまり「いつでも、どこでも、だれでも」の有名無実化です。このような方向性、考え方、政策には強く反対したいと思います。

 さて、私は、皆さまのお陰さまをもちまして、理事長5年目に入りました。遅ればせながら、組織や団体の前進、発展とは何か、と考えました。一般企業では「収益性」「生産性」「成長性」などを評価する指標として、「売上高総利益率」「自己資本比率」などが用いられます。では私たちの協会はどうでしょうか。何を指標に評価すべきでしょうか。もちろん、協会の二つの目的に向かい、安定的に持続的に活動し、どれだけ目的を達成しえたか、が大事な指標であるのは言うまでもありません。しかしそれらを具体的に「見える化」するのは何でしょうか。それは「会員数」「財政規模」「知名度」ではないか、と思っております。この三つをバランスよく、着実に向上させていくことが重要と考えています。特に、会員が増加するということは、協会の数々のサポート活動、共済事業などが認められ、「役に立つ、頼りになる」との評価をいただいていることの証です。また活動への参加者数、署名数も一つの指標です。秋には、ラジオ出演にもご協力いただき、来週には初めての市民向け健康フェスティバルを開催します。このような、多岐にわたる協会活動を通じて、目的を共有した仲間が増え、組織能力が高まっていくのは、協会の資産となります。

 この点をご理解いただき、会員増加、協会活動への参加、各種署名等に一層のご協力をお願いします。事務局員もこれまでにも増して、よろしくお願いします。会員とともに頑張りましょう。それでは、このあと、評議員会の議事に入り、各担当部からご報告とご提案をさせていただきます。忌憚ないご意見、活発なご討議のうえ、ご承認いただきますようお願いいたしまして、ご挨拶とさせていただきます。ご清聴ありがとうございました。

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