兵庫県保険医協会

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第53回総会での理事長あいさつ

2021.06.20

 本日はお忙しい中、またコロナ第4波に伴う緊急事態宣言下にもかかわらず、第53回総会にご列席いただき有難うございます。また、平素より協会の活動にご理解・ご協力を賜り、厚くお礼申し上げます。総会は最高意思決定機関であり、その重要性に鑑み開催としました。ご理解ください。

 最初に、新型コロナウイルス感染症で亡くなられた兵庫県内1271人の方々のご冥福をお祈りするとともに、現在も闘病されている方々、19日で入院261人、重症者31人、宿泊療養者103人、入院・宿泊療養調整者22人、自宅療養者54人にお見舞い申し上げます。また、昨年当初から今回の第4波まで、コロナと闘っておられます会員はもちろん、すべての医療従事者の皆様のご努力に対し、心より敬意を表し感謝いたします。県民の命と健康を守るために欠かせないのは、第一線でたたかう医療従事者である事は間違いありません。

 さて、昨年1年を振り返りますと、春には、新型コロナウイルス感染症の蔓延により激しい受診抑制が起こり、医療機関の経営は存続の危機に陥りました。各医療機関においては、新型コロナウイルス感染症への対応に加え、手術・検査・健診・予防接種などの延期要請、国民への度重なる「緊急事態宣言」や「蔓延防止措置」による自粛要請、正確な情報の不足、一面的な報道などが重なって、「受診抑制」が一気に進み、国民への「医療提供量」は、皆保険制度成立以来経験したことのない大幅な減少となりました。医療提供量の減少が、短期的に患者さんの疾病を悪化させることは、私たちのアンケートでも明らかです。また、がんや生活習慣病をはじめとする慢性疾患の中長期的な予後の悪化も心配されます。

 現在、第4波は収まりつつありますが、発熱患者さんの動線分離、感染対策に加え、煩雑なワクチン接種関連業務が重なり、医療従事者の負担は少なくありません。その上、明日にも、緊急事態宣言が解除され、その後五輪・パラリンピック開催、夏休み・お盆休みの帰省等に伴う人出の増加、さらには変異株の流行などにより、感染再拡大、患者数増加、医療体制の逼迫、いわゆる第5波が危惧されるところです。

 一方で、大きく低下した受診患者数は、回復の兆しを見せてはいるものの、元には戻っておらず、一部の医療機関を除き、コロナによる医療機関の減収は十分に補填されていないままです。政府は、緊急事態宣言下においても、「すべての医療関係者に事業継続を要請」しましたが、医療機関の経営悪化について、減収補填は行わず、感染対応のための「支援」や「補助」にとどめています。これは、コロナ感染症拡大による経営悪化の責任を医療機関に押し付け、国民皆保険制度における国の責任を放棄するものです。

 高い公共性と非営利性を有する医療において、事業継続の要請と減収補填はセットであるべきです。国民に安心・安全、質の高い医療を担保し、その健康な生活を維持するためには、医療機関の安定した経営に基づく、途切れる事の無い日常診療の提供が必要です。

 協会は医療機関の減収に対して、早々と「全医療機関に」「前年度診療報酬との差額を」「4月に遡って」「100%」補填する事を方針としました。

 私たちは、平時の医療提供は診療報酬で確保し、加えて有事の感染症への対策としての財政措置という2方向の対策が当然必要だと考えています。さらに、コロナ感染症の拡大を機に、「今こそ医療費抑制策の転換を」と題したパンフレットを作成しました。そのなかで、医療機関を疲弊させた原因を、長年続く医療費抑制政策であると指摘し、医療・社会保障の再建方法を提案しています。特に医師・歯科医師の責務の本質、医療の公益性・非営利性と国家の医療提供責任について、解説しています。ぜひ、最初から最後までお読みいただきたく思います。

 さて、コロナ禍により、これまで医療・社会保障を経済成長の足かせととらえてきた新自由主義に対する批判が世界中で巻き起こっています。新自由主義とは「自己責任を基本に小さな政府を推進し、均衡財政、福祉・公共サービスの縮小、公営事業の民営化、グローバル化を前提とした経済政策、規制緩和による競争促進、労働者保護廃止などの経済政策の体系」です。

 その大きな流れの中で、政権を引き継いだ菅首相は、めざす社会像として「自助、共助、公助」「まずは、自分でできることは自分でやってみる。そして、地域や家族で助け合う。その上で、政府がセーフティーネットで守る」との発言をくり返しました。現代社会に蔓延ってきた「自己責任論」をより強固にする、権力中枢からの「政府責任放棄論」を改めて公言するものです。社会保障は、隣近所の助け合いではありません。新自由主義とは「競争志向を正統化するための市場原理主義からなる資本主義経済体制」です。このような体制が世界中で格差と貧困を拡大させたのは明らかであり、この「一時的」な「単なる経済体制」が、社会保障の柱である「公的保険医療」を掌る私たちの責務と共存するはずがありません。

 今回、コロナ禍により、病床が逼迫し、「自助」「共助」が中心である自宅やホテルでの待機中、あるいは介護施設の中で亡くなる方がおられました。これはまさに「医療崩壊」であり、「公助」である医療制度の機能不全です。この秋には衆議院選挙がありますが、国民の命と健康を守るためには、このような体制を大きく転換する必要があります。

 コロナ禍の1年余り、協会は多岐にわたる取り組みを迅速に進めてきました。詳しい活動内容は、「会務報告」「立候補決意文」にございますので、ご一読ください。

 私、理事長再任の際には、皆様のご意見をこれまで以上に拝聴し、会員の力を集約し、協会の一層の発展に尽力する所存です。ぜひともご承認をお願いいたします。

 続きまして、本日はお忙しい中、ご臨席頂きましたお二人のご来賓をご紹介いたします。

 最初に、全国保険医団体連合会 会長 住江憲勇様です。全国51の医会・協会、医科・歯科合わせて10万人を超える会員を擁する保団連を力強く牽引されておられます。保団連とその会員のため、長きにわたり尽力され続けられていることに、改めて感謝と敬意を表すと共に、兵庫協会は、はなはだ非力ではありますが、力の限り支えさせて頂きたいと思います。

 続きまして、尼崎医療生活協同組合 生協歯科院長 冨澤洪基様です。全日本民医連の理事でもあります。

 生協歯科は1992年に開設され「お口の健康づくりをすすめる歯科」として、小児からお年寄りまで全世代に納得、信頼できる医療の提供を行っておられます。また、冨澤先生には「保険でより良い歯科医療を」兵庫連絡会を立ち上げる際には、大変なご努力をして頂きました。改めて厚くお礼申し上げます。

 ご来賓のお二方には、協会を代表しまして、心よりお礼申し上げます。

 この後、昨年度の「会務」を報告し、新年度の「方針案」「予算案」「次期役員ならびに議長副議長選出結果と総会承認人事」をご提案いたします。忌憚ないご意見、活発なご討議をお願いいたしまして、ご挨拶とさせていただきます。ご清聴ありがとうございました。

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