兵庫県保険医協会

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第54回総会での理事長あいさつ

2022.06.19

 本日は休日にもかかわらず、第54回総会にご列席いただき有難うございます。また、平素より協会の活動にご理解・ご協力を賜り、厚くお礼申し上げます。最近の情勢と協会活動について述べます。

 まずは新型コロナウイルス感染症による医療崩壊と国の責任に関してです。
 新型コロナウイルス感染症を振り返ると、2020年の第1波では4月11日にそのピークを形成し、全国の1日あたりの新規陽性者数は720人でした。この年の3月に志村けんさんが逝去し、また、兵庫県内基幹病院の病院長も亡くなられ、医療関係者、特に私を含めた高齢の診療所院長は、感染と重症化、死亡の不安に陥りました。
 その後も第2派、第3波、第4波と繰り返し、国民への度重なる「緊急事態宣言」や「蔓延防止措置」による自粛要請、正確な情報の不足、一面的な報道などが重なって、患者さんの「受診抑制」が一気に進み、医療機関の経営は存続の危機に陥りました。
 昨年7月の第5波では、デルタ株が、中高年、若年者を中心に急拡大し、重症者、死亡者も増え、都市部を中心に病床が逼迫し、救急医療や予定手術等の通常医療も含め、医療提供体制は深刻な機能不全に陥りました。
 自宅療養中の死亡者も相次いで報告され、「医療崩壊」と騒がれていたにもかかわらず、1年延期されていた東京五輪が、緊急事態宣言のさなかに「異例の開催」となりました。
 本年の年明けには、オミクロン株による第6波が、これまでにないレベルで急激に拡大し、米軍基地のある沖縄、山口、広島県に、いち早く「まん延防止等重点措置」が発出され、2月には全国で1日の感染者数が10万人を突破した。これは第1波のピーク時の130倍以上でした。
 言うまでも無く、医療提供体制の機能不全は、国民の命や健康に直結します。そして医療崩壊の原因は、民間医療機関の協力不足や、かかりつけ医の機能不全ではなく、2類感染症に対する平時の医療・公衆衛生提供体制の準備不足、余力不足であり、その責任は、個々の医療機関にあるのではなく、皆保険制度を通じて、国民の健康と命を守るのは、国の責任です。
 現在、予防接種の普及、治療法の進化、ウイルスの変異に伴い、重症の方、死亡される方の割合は比較的少なくなり、病床逼迫も小康状態となっています。また緊急事態宣言、まん延防止措置も解除されました。
 私たち医療者も「コロナ対応」だけでなく感染の後遺症や、ワクチン接種後の有害事 象にも注意しながら、「平時の医療」を取り戻すと同時に、新たな感染症に対しての体制を構築する、というステージになりつつあります。

 続いてコロナの医療機関へ影響に関してです。
 現在、受診抑制は徐々に回復の兆しを見せていますが、平時の医療機関経営、医療提供体制には、まだ遠いと言わざるを得ません。
 コロナが蔓延した、2020年度の医療費は対前年度比1.4兆円の減少、マイナス3.2%であり、国民皆保険制度創設以来の減少幅となりました。医療費は年率概ね2%程度伸びてきたことから比べると、医療機関の経営状況は傷ついたままです。
 そのような状況の中、本年4月には診療報酬改定がありましたが、全体で0.94%のマイナス改定でした。コロナ感染症と闘う医療機関、医療従事者、そして国民の命と健康に対する政府の冷たい回答と言えます。
 医療は警察や消防と同じ「社会的共通資本」であり、平時の余力が無ければ、大規模災害や感染症蔓延などの有事の際には機能不全に陥ります。国民の命と健康を守る医師・歯科医師として、今こそ、厳しい医療費抑制政策を見直し、医療提供体制を拡充するために、コロナ感染症拡大の中、医療の重要性を知った国民と共に活動しなければなりません。

 執行部としましては、会員の意見を伺いながら、刻々変化する情勢に合わせて、「開業保険医の生活と権利を守」り、「患者・住民とともに、地域医療の充実・向上」を目指して、的確・迅速に対応したいと考えています。ぜひご理解、ご協力をお願いします。

 最後に新自由主義的政策の見直しと参議院選挙に関してです。
 コロナ禍により、これまで医療・社会保障を経済成長の足かせととらえ、その削減を徹底してきた新自由主義に対する批判が世界中で巻き起こっています。
 新自由主義とは、自己責任を基本に小さな政府を推進し、緊縮財政、福祉・公共サービスの縮小、公営事業の民営化、所得再分配の否定、グローバル化などを前提とし、規制緩和による競争促進、労働者保護廃止などを推進する経済政策の体系です。
 新自由主義が世界中で格差を拡大させ、社会不安を増大させたのは明らかであり、この「一時的」な「単なる経済体制」が、長きにわたり「医療」を掌ってきた、私たちの責務と共存するはずがありません。
 7月10日には参議院選挙があります。
 東京大学社会科学研究所 宇野重規教授は、次のように述べています。「コロナ禍において、重要なことはなぜ一連の対策を取るのか、きちんと「説明」し、プロセスや結果を「検証」し、最終的には責任をとるという事です」。また同時に「選挙は行政の対応について、国民として検証する手段の一つ」と述べています。
 今こそ、医療をはじめとした社会保障の充実に舵を切るべきであり、選挙において、私たちの意思を示さなければなりません。
 それでは、この後、昨年度の会務報告ならびに新年度方針案、予算案をお諮りします。先生方には、忌憚ないご意見、活発なご討議をお願いします。

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